第156話 最凶の相手なら、信じて踏ん張るしかないじゃない
「ここで食い止めるぞ!!」
闘志を燃やしながら、レックスは力強い声を響かせる。
眼前に立ちはだかるアンデッド・エンシェントドラゴンは、まさに悪夢そのものの姿をしていた。
黒々とした鱗は不気味な光沢を放ち、まるで生きた闇が蠢いているかのように見える。
その体から立ち昇る瘴気は、以前にも増して濃密になっていた。
王国の聖なる大地に近づくにつれ、まるで呪いそのものが力を増しているかのような禍々しさを放っている。
空気は重く淀み、息をするだけでも胸が苦しくなるほどだった。
「どりゃあああああああっ!!」
武者丸が気合いの咆哮をあげながら、剣を振り上げる。
己の体をコマのように高速回転させながら敵に向かっていった。
刀身が空気を裂く音が連続して響き、とてつもない勢いでドラゴンの巨躯に無数の傷を刻んでいく。
しかし————ドラゴンは瞬時にその全ての傷を治癒してしまった。
傷跡一つ残さずに元通りの状態に戻ってしまう。
「くそがっ! こんなのキリがねえじゃねえか!」
超再生。
たとえ頭部を切り落としたとしても、瞬く間に再生してしまう。
死の概念すら無効化していた。
「こらえろ! レオナあああああっ!!」
「はあああああああっ!!」
勇者達が誇る堅牢な盾が二つ。
ラウムとレオナは迷いなくドラゴンの前に躍り出ると、全身全霊を込めて盾を押し付け、その巨大な体躯の進行を止めようと必死に踏ん張る。
二人の足元の大地が砕け、筋肉が軋む音が聞こえるほどの力を込めていた。
「二人とも! それ以上近くにいるなっ!」
「……っ!」
レックスの警告に、二人は即座に後方へと飛び退いた。
あれ以上アンデッド・エンシェントドラゴンに密接していれば、その身を包む瘴気によって致命的なダメージを受けてしまう。
結局、ドラゴンを止めることはできず、進行を許してしまった。
何者も近づかせない瘴気。
傷をつけてもすぐに再生する超再生。
そして、奴の呪いは周囲に無限に魔物を生み出し続けている。
土の中から這い出る骸骨兵士、空から降り注ぐ邪悪な鴉の群れ————
地獄絵図そのものだった。
まさに災厄。
もはや、人間ではどうすることもできないかのように思えた。
たとえ、勇者の剣であっても————
戦いが続くにつれ、ただただ勇者達の体力と気力が削り取られていく。
万策尽きた————かに思えたその時————
「「来た」」
一番後ろにいたニカとチカが、同時に声を上げた。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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