第154話 王国に仕える騎士ならば、王国を守ればいいじゃない
ヴィオレッタがリゼッタを抱えて去っていく。
私は、その後ろ姿を見つめていた。
応急処置をして、止血はできたので、おそらく一命は取り留めただろう。
あとは、王宮の医師、そして白魔道士に見てもらえれば大丈夫だ。
それにしても、あの時のヴィオレッタ————
見たことのない表情だった。
普段の仮面が剥がれ落ち、感情がむき出しになる。
あの時ばかりは、権力溺れた貴族などではなく————
娘を心配する————母親の————
「マリー!」
物思いに耽っていたその時、クロに呼びかけられる。
現実へと意識を引き戻された。
「この辺りの魔物は一掃したよ!」
「————うん、ありがとう」
クロ、そして王国騎士団に街に侵入した魔物達の排除をお願いしていた。
気づけば、辺りから悲鳴は聞こえなくなったので、この辺りは安全地帯となったのだろう。
しかし、この静けさが永続的なものではないことを、私達は皆知っていた。
「このままじゃまたすぐに魔物が入ってくる……早く根源を断ち切らないと」
「そうだね————」
王国騎士達も、戦いを終えて集まってきている。
鎧の擦れる音とともに、一人、また一人と————
私の前に来て、跪き、次の指示を待つ。
彼らの瞳には揺るがぬ忠誠心が宿っていた。
気づけば、百人に至るかという規模の騎士達が、私の前に集まっていた。
「全員、聞きなさい!」
私は、奥にいる騎士にまで届くように、声を張る。
風が頬を撫でていき、私の声を運んだ。
「私達はこれから、この魔物達の発生源————『エンシェント・ドラゴン』の討伐に向かいます! その間、騎士達は国民の安全確保、そして行方不明者の捜索————できるだけ多くの命を助けなさい!」
騎士の役目は、王を、そしてその民を守ることだ。
権力者の道具などではなく、国王の剣として皆、王宮に仕えてくれている。
だからこそ、私が騎士達にお願いすることは、シンプルでいい。
「あなた達はこの国を守る立派な騎士です。今こそ、使命を果たしなさい」
「「はっ!!」」
百を超える声が一つになって響いた。
そして、騎士達はすぐさま行動に移る。
私の指示に異論を唱える者は一人としていなかった。
騎士団長がすぐに号令を出し、騎士達に指示を送る。
金属音を響かせながら、騎士達はテキパキと装備を整え、四方に散っていった。
その姿を見て、王国の防衛は彼らに任せれば大丈夫だと、そう思った。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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