第152話 誰であろうと、子供は守るべきじゃない
「リゼッタぁ!!」
ヴィオレッタは、我が娘を見つけた。
しかし、リゼッタは————
モンスターの鋭い爪に、腕を切り裂かれているところだった。
「ああっ!!」
異形の怪物の鋭利な爪が、白い肌を容赦なく切り裂いた。
鮮血が空中に舞い散り、石畳に赤い飛沫となって散らばる。
激痛に顔を歪めたリゼッタは、負傷した腕を必死に押さえながらよろめく。
それを見て、ヴィオレッタは反射的にリゼッタの元に駆け寄った。
「リゼッタ!? 大丈夫!?」
「お……母様……?」
頬から血の気が完全に失われ、蒼白になっている。
震える手のひらには生々しい赤い液体がべったりと付着していた。
「早く逃げるわよ!」
「……いけません……わ」
そう言いながら、リゼッタは後ろに視線を送る。
リゼッタの視線が示す方向を辿ると、そこには年端もいかない幼い子供がいた。
恐怖で全身を震わせ、立ち上がることすらできずに座り込んでいる。
この子供を庇って……?
『グルルル……』
禍々しい唸り声を上げながら、異形の化け物がゆっくりと接近してくる。
その動きは決して素早くはないが、負傷した娘を抱えての逃走など到底不可能な距離まで迫っていた。
動きの鈍い個体だが、負傷したリゼッタを連れては逃げられないところまで接近していた。
涎を垂らして、鋭い爪と牙を光らせて————
『ガウウウウッ!!』
凄まじい咆哮と共に、怪物が牙を剥き出しにして襲いかかってくる。
ヴィオレッタはリゼッタに覆い被さった。
この瞬間だけは、もはや権力も地位も復讐も、何もかもがどうでもよくなっていた。
せめて————
せめてリゼッタだけでも————
お願い————
この子だけは————
その時だった。
「はあああああっ!!」
空気を切り裂く鋭い金属音と共に、戦場に響く力強い声が闇夜を貫いた。
モンスターの身体が真っ二つに裂け、重い肉塊が地面に崩れ落ちる。
顔を上げるとそこには————
鋭い剣を持ち、白銀の甲冑を身に纏った、王女マリナスの姿だった。
「な……!」
輝く純白の甲冑。
体の半分はあろうかという長さの剣を片手に携えている。
夜空に浮かぶ満月が、救世主となった剣士の姿を神々しく照らし出していた。
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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