第148話 状況を逆転したいなら、殺害の容疑をかければいいじゃない
「ヴィオレッタ・レーヴェンシュタイン、お前に王女殺害未遂の容疑がかけられている」
冷徹に、お父様はそう告げる。
その声には一切の感情が込められておらず、裁判官のような淡々とした言葉だった。
騎士達の剣の切先が、ヴィオレッタに向けられている。
通告されたヴィオレッタとっては、青天の霹靂だった。
「い、一体そんな証拠がどこにあると言いますの!?」
ヴィオレッタの声は明らかに上ずり、動揺を隠せずにいた。
普段の優雅な仕草も消え失せ、痛々しいほどに首を振っている。
「私は殺そうとなんてしてませんわ! ここにいる悪魔を払おうとしていただけです! 悪魔を野放しにしてしまえば、あなた様にも害をなすかもしれないのです! どうして罰せられましょう!?」
まるで窮地に追い込まれた獣のように、慌ただしく弁明する。
しかし、お父様は特に聞く耳を持った様子はなく、ただ隣にいるお母様へと目配せをした。
「テレシー」
「はっ」
すると、お母様は両手を一つ叩いて、信頼なる従者の名を呼んだ。
テレシーが後ろから現れる。
そして、腕を拘束された冒険者を前に引き摺り出した。
その男は————冒険者フォックスだった。
「この男が全て吐きました。マリナス王女様の殺害を企てたのは、ヴィオレッタ様であると」
顔を腫らしたフォックスが呻き声をあげている。
どうやらテレシーは相当怒っていたようだった。
普段は温厚な彼女でも、主君の娘を狙った相手には容赦がなかったのだろう。
私を二度も殺そうとした冒険者。
この男の存在こそが、何よりも動かぬ証拠だった。
「そんな野良犬のような冒険者が一体何だというのだ! そんな者の戯言を信じると!?」
「それだけじゃありません」
テレシーは感情を露わにするヴィオレッタに一歩も引かずに、話を続ける。
今度はテレシーが主導権を握り、ヴィオレッタが劣勢に追い込まれている。
昨日の状況とは、全く逆の立場になっていた。
「王宮にいる貴族、使用人————そして、王国騎士団長が、あなたの策謀を告白しました」
そう言いながら、テレシーは正面に紙を突きつける。
その羊皮紙は金色に輝き、さながら審判の書のように見えた。
ヴィオレッタ・レーヴェンシュタインこそが、王女マリナス暗殺の首謀者であるという告発書————
その連名の中には、確かに名だたる貴族、そして騎士団長の名前が刻まれていた。
皆、不満を持っていたのだ。
悪逆非道な振る舞いを繰り返す、権力に囚われた貴人に。
「ヴィオレッタ————あなたはやりすぎたのですよ」
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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