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第147話 王になりたいなら、宣言すればいいじゃない

「私が、この国の王になります」



 私は胸を張って、ヴィオレッタにそう宣言した。


 本心————私の心からの願いだった。

 奥底から湧き上がった想いが、ついに言葉となって溢れ出した瞬間だった。


 私は、本当に私のやりたいことを、初めて口にした。



 辺りは静寂に包まれる。


 空気が重くのしかかり、時間が止まったかのような錯覚に陥る。

 兵士達の剣先も、まるで石像のように静止していた。


 心臓の音だけが、聞こえるかのようだった。



「————もうよい……」



 やがて、ヴィオレッタは俯きながら呟く。

 私に何かしようとするのを、諦めたかに思えた。


 だがしかし————



「お前達————この女を殺しなさい!」


「……!」



 目を見開いて、私を指差す。


 地獄から這い出てきた悪鬼のような、凄まじい憎悪に歪んだ表情になっていた。

 感情のままに私に悪感情をぶつけてくる。



「褒美ならいくらでもくれてやる! だから、今すぐ、この女を亡き者にしなさい!」



 その迫力に、兵士達が身を震わせながら再び武器を構える。

 殺気が空気を震わせ、死の匂いが立ち込めた。


 クロがそれに反応して、私の前に踊り出る。



 冷や汗が背中を伝い落ちる。

 やはり最後は武力による解決しか残されていないのか。


 拳を握りしめながら、私は覚悟を決めた。



 一触即発————


 剣戟の音が響く寸前、緊張が頂点に達した。



 その時だった————




「そこまでだ」




 低く、威厳に満ちた声がその場にこだまする。

 石畳に反響するその響きに、全ての者が動きを止めた。


 現れたのはアンドレアス王国————その国王。



 そして————



「クセルお母様!」



 王妃————クセルがそこにいた。


 月光を受けて輝く美しい赤髪が、まるで炎のように揺れている。

 絶世の美女と言われてもおかしくないその面立ちは、気品と慈愛に満ちていた。


 豪勢な深紅のドレスが風になびいていた。



 どうして、ここにお母様が……?


 別邸からこんなところまで————お体の具合は大丈夫なのだろうか……?



 私の心配を他所に、お母様は、国王————お父様と共にこちらに歩み寄ってくる。



「国王と王妃、揃って何用ですか? 今、この場所はとても危険でございますわ」



 ヴィオレッタは先ほどまでの鬼の形相を瞬時に隠していた。

 しかし、その巧妙な仮面の下から、抑えきれない不機嫌が言葉の端々に滲み出ている。



「————まあ、そのようだな」



 お父様は、憤るヴィオレッタとは対照的に、冷静に彼女の言葉を受け流した。


 その眼差しは鋭く、屋上の状況を見渡している。

 ヴィオレッタの兵士に囲まれた、脱走した王女マリナスと冒険者クロ————


 何かを見極めたお父様は、右手を空高く掲げる。



「まずは、危険を排除することにしよう」



 お父様は、手を振り下ろして合図をした。


 その動作と共に、後ろから王国騎士団がぞろぞろと現れる。

 統制の取れた足音が屋上に響き渡り、甲冑の金属音が不気味に鳴った。



 騎士達は私達の方に向かってくる。


 そして————私の脇を通り過ぎていった。



「は?」



 騎士が剣を向けた先は、ヴィオレッタだった。



「ヴィオレッタ・レーヴェンシュタイン、お前に王女殺害未遂の容疑がかけられている」





読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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