第146話 捕まりたくないなら、威厳を示せばいいじゃない
「————怪我をしたくない者は武器を捨てよ!」
兵士を拘束しながら、高らかに声を上げる。
さっきまで捕らえようとしていた弱々しい王女のはずが、突然別人のような威圧感を放っているのだ。
突然の豹変ぶりに、兵士達は動揺し、その姿に釘付けになっていた。
「私はお前達には傷つけられない。それくらい、必死に努力して力を得た————だから、私を捕らえようとしても無駄だ!」
私はもう、弱いだけの私じゃない。
人の顔色を窺って、何かを誤魔化して生きていた時の私とは、違う。
自分のために努力できる————
そして————努力していいと思えるようになったんだ。
私の堂々たる宣言に、兵士達は明らかにたじろぐ。
包囲していたはずの彼らが、逆に私に圧倒されているのが分かった。
その後ろで、ヴィオレッタがさらに顔を歪めていた。
紫の髪が夜風に乱れ、まるで怒り狂った魔女のような禍々しさを放っている。
「何をしているの!? 早く捕えなさい!」
「無駄ですよ————」
私は自信に満ちた表情で、ヴィオレッタの言葉を遮る。
拘束していた兵士の腕を解いてやった。
そして、武装した兵士の前を堂々と突き進み、ヴィオレッタの手前まで進み出る。
「ヴィオレッタ様————私は、強くなりました」
胸に手を当て、私は言葉を紡ぐ。
胸の奥で燃える炎のような熱さが、全身に活力を与えてくれる。
握った拳は、数ヶ月前とは比べ物にならないほど、たくましくなっていた。
強くなった。
クロと一緒に努力して、強くなることができたんだ。
たとえ、私が努力したとしても、世界を変えることはできないのかもしれない。
私という存在は、とてもちっぽけで、この世界にとってどうでもいい存在なのかもしれない。
でも————
「————そんな私を必要としてくれている人がいる」
私は王宮の正面にいる街の人達の方へと目を向けた。
眼下に広がる光の海が、今もなお私を呼び続けている。
一つ一つの光が、私への想いを込めた温かな声援だった。
私の耳に届き、胸を震わせる。
「そんな人達が————そんな民がそこにいる限り、私は努力することをやめません」
ちゃんと、私を見てくれているから。
見続けてくれている限り、私は頑張れる。
私は、ヴィオレッタをまっすぐと見つめて————言い切った。
「私が、この国の王になります」
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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