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第144話 自分がここにいていいなら、自分の道を進めばいいじゃない

「みんな、マリーを尊敬しています」



 いつも、誰に対してもリスペクトを持って接するから————

 それが君自身に返ってきている————


 街の人達は、「マリナス様」と敬意を込めて、私の名を口にしてくれていた。

 必死に叫ぶ彼らは、皆、希望をその瞳に宿している。



「みんな、マリーが努力していたのを知っています」



 誰もマリーのことを見ていないって?

 そんなわけがない————


 君の努力は、どれだけ目を背けようと、目に入る————

 頑張っている姿が、応援したいと思う姿が、ちゃんと誰かの目に映っている————



「マリーの努力は、決して無駄なんかじゃない……!」



 君の努力を見て、立ち上がってくれている人がいるのだから————




「みんな————マリーを必要としているんです」




 その瞬間、視界が広がるようだった。


 上空には満点の星空。

 その下には、その星に劣らない数の————私のために集まってくれた皆の光。


 目の前に映る光景は、今まで見たことのないくらい、美しい光景だった。



 かつて、こんなに私の名前を呼ばれたことはあっただろうか。


 こんなにも必要とされたことがあっただろうか。



 こんなにも、私を見てくれている人が————



 私という存在が、世界で強調される。


 この瞬間、私は確かにここに存在している。

 曖昧な存在ではない。


 大勢の人々の声援に包まれた、確固たる存在として。

 世界の中で、私の輪郭がくっきりと浮かび上がったような感覚だった。



 私は、ここにいていいんだと思える。


 いや————ここにいた方がいいんだ。


 私がここにいることで、誰かが幸せになれるのなら————

 誰かの希望になれるのなら————



 私には、ここにいる意味がある。


 私の名前を呼んでくれるあの人達のために、私はここにいなければならないんだ————



「本当は————」



 その時、クロがぽつりと口を開いた。



「一番必要としてる僕に、ついてきて欲しいっていうのもあるんですけど……」



 後頭部を掻き、少し目を逸らしながら、照れくさそうにそう言う。


 夜風が髪を揺らし、星明りが彼の横顔を柔らかく照らしている。

 その表情には、どこか儚い寂しさと、それでも私に伝えようとする真剣さが混在していた。



「でも————マリーがマリーらしくいられる場所が、きっと一番いいです」


「クロ……」



 自分の想いよりも、私の思いを最優先に考えてくれていた。

 風が頬を撫でる優しい感触が、今のクロの言葉と重なって感じられた。



 自分が、自分らしくあっていい。


 仮面など気にせず、運や生まれ持った地位も気にせず。


 ただ、成りたい自分のために、努力すればいい。



 自分のために、やりたいことを、頑張ってもいいのだ————



 人生で初めて、心から納得できる答えに辿り着いた気がする。


 今まで抱えていた迷いや不安が、まるで霧が晴れるように消えていく。



 私には私の道がある。


 そしてその道を歩むことは、決して間違いではないのだ。



 そんな単純なことに、今初めて気づくことができた。



「ありがとね……クロ……」



 心の底から湧き上がる感謝の想いを込めて、彼の名前を呼んだ。


 クロがいてくれたから、この答えに辿り着けたのだ。


 星が瞬き、まるで私の新しい決意を祝福してくれているかのように見えた。



 今やりたいことは、もう決まってる。


 もう、頑張ることを諦めない————




「私は————」



「————ここで何をしているのかしら……!?」




 突然響いた鋭い声に、温かな時間が一瞬で凍りついた。



 背後にいたのは紫髪の令嬢。


 ヴィオレッタが顔を歪めてそこに立っていた。



読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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