第138話 周りが全員敵になっても、努力し続ければいいじゃない
「上島さん、なんか調子に乗ってな〜い?」
気づけば、私は周りを囲まれていた。
悪意のある視線が、私の心臓を激しく締め付け、息が止まる。
「あんたのせいでバイト遅れることになったんだけど、責任取ってよね〜〜」
「————ちゃんがずっと声かけてんのに全部無視。ほんと何様?」
「頑張ってるアピールまじでムカつくわ。自分だけ特別とか思ってんの?」
言い返す言葉はない。
弁解する方法が分からなかった。
ただ、机に向かって小さくなるしかなかった。
そこから先の学生生活は————地獄だった。
朝に学校に来ると、机や椅子に罵詈雑言が書き殴られている。
黒いマジックで「死ね」「消えろ」「気持ち悪い」————醜い言葉達が、殴り書きされていた。
最初は消していたが、途中から無駄だと気付いた。
物を捨てられることも少なくなかった。
無くしたと思っていた筆箱や教科書を、ゴミ箱で見つけたことは多々あった。
これは数える程度だが、暴力行為に発展することもなくはなかった。
階段で「偶然」押されて転倒したり、体育の時間に「うっかり」ボールをぶつけられたり。
たとえ顔に傷を作って帰ったとしても、心配してくれる人はいない。
相談できる人も、助けてくれる人も、誰一人としていない。
そんな状況でも、私は医者になるという目標だけを目指し続けた。
努力をし続ける。
誰にも認められずとも、努力する。
どれだけ酷い言葉を投げかけられようとも。
心が擦り切れて、なくなろうとも
お母さんを助けるために頑張っている自分は、何よりも正しいと思っていた。
努力すれば、報われると。
いつかいい方向に進むと、信じていた。
そして————高校3年の受験期。
雪がちらつく寒い季節だった。
志望校はもちろん、有名大学の医学部。
毎日図書館にこもり、勉強に打ち込み続け、ただひたすら参考書と向き合って————
その結果、直前の模試は合格判定だった。
A判定の文字を見た時、努力がちゃんと結果に結びついたのが分かり、涙が出そうだった。
残る問題は、お金の問題だったが、お母さんの遠い親戚が資金援助をしてくれるらしかった。
久しぶりに聞いた希望の知らせに、私の心は震えた。
決して多い額ではないが、在学中はバイトでもなんでもすれば、きっとやっていける。
睡眠時間を削ってでも働けばいい。
この受験料も、優しいその人達から、なんとかいただいたものだった。
希望の封筒を握りしめて、私は銀行への道を歩いていた。
やっぱり————努力は報われる。
そう思った。
この受験料を銀行に持って行って振込ができれば、有名大学の医学部を受けられる。
そうすれば、長年待ち望んでいた、医療の勉強に専念できる。
お母さんを、助けられる————
だが、その時だった————————
「————見つけたぞ……双葉ぁ」
読んでくださりありがとうございます。
主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。
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