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第137話 元に戻したければ、努力し続ければいいじゃない

 それからの私の日々は、とても単純なものになった。



 学校が終わったらすぐに家に帰って、お母さんのお世話をする。

 車椅子に座ったまま動かない母の手を握り、一方的に今日あったことを話しかける。


 返事はない。

 それでも話し続ける。



 そして、勉強をする。


 五教科だけでなく、医学の勉強もすぐに始めた。

 机に向かい、参考書のページをめくる音だけが、静寂な家に響く。



 お母さんの世話をして。


 勉強をする。



 その繰り返しだった。



 それ以外のことはやっていない。


 普通の学生が経験するはずのことは、全て私の人生から消えていた。



 中学1年、2年、3年————


 高校1年、2年、3年————



 季節が変わっても、桜が咲いても散っても、雪が降っても溶けても、私の生活に変化はなかった。



 ずっとそれを繰り返した。



 ただ、失った時間を取り戻そうと、必死に努力した。


 やめたいと思ったことはなかった。

 つらいと思ったこともなかった。


 努力すること自体は、何の苦もなかった。

 努力することで、自分がここにいていいんだと思えるから、むしろ好きだったのだ。



 自分が頑張ることで、全てがいい方向に進むと————


 世界は、きっとそうなってると、信じていた。



 だから、寂しくなんかない。


 いつかお母さんが戻ってくると信じているから、寂しくない。



 誰かにこの気持ちを打ち明けたりはしなかったし、誰かに頼ったりすることもなかった。


 この世界で頼れるのは、自分とお母さんだけだと、思い込んでしまったから。



 私は常に一人だった。


 教室の中でも、外にいても、どこにいても孤独だった。



 それでも、そんな私でも————


 クラスメイトに声をかけられることもあった。



 孤独だと思い込んでいた私に、手を差し伸べる人もいたわけだ。



「上島さん、今日の放課後遊びに行かない?」


「ごめんなさい、今日は勉強があるから」



 だが、私はいつもと同じ理由で断った。



「次の週末、クラス会を予定しているんだけど————」


「ごめんなさい、勉強があるから」



 いつもと同じ理由で断った。



「明日から文化祭期間だから、この後買い出しを手伝ってくれない?」


「ごめんなさい、勉強があるから」


「あの……このプリントを先生の元まで届けて欲しいんだけど」


「ごめんなさい、勉強があるから」


「ごめん〜〜上島さん。この後バイトがあるから、掃除当番変わってくんない?」


「ごめんなさい、勉強があるから」



 ずっと————同じ理由で断り続けた。


 その結果————




「上島さん、なんか調子に乗ってな〜い?」





読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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