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第133話 正面で騒いでるなら、裏から入ればいいじゃない

「やはり、王宮はマリーを解放する気はないか……」



 灰色の雲が重く垂れ込める空の下、数百人もの民衆が王宮前の石畳に集結している。

 これほど多くの人が、抗議運動を行なっているにもかかわらず、王宮は沈黙したままだ。


 あの貴族————ヴィオレッタがこれくらいではマリーを解放しないことは予想していた。

 プライドが高そうな人だったし、想定内の展開だった。


 だからと言って、王宮の兵士が暴走してあの人達に危害が及ぶなどということはなさそうだ。


 これで、作戦を次に進められる。



「————待ってて、マリー!」



 皆が、危険を顧みず、抗議をしてくれている。


 僕も頑張らなきゃ————



 僕は身を隠していた茂みの陰からそっと顔を覗かせ、周囲に人影がないことを確認すると、猫のように音もなく地面を蹴った。

 足音一つ立てることなく、影から影へと移動していく。


 目指すは王宮の裏手。

 正面の騒ぎに気を取られている今なら、警備が手薄になっているはずだった。


 見張りの兵士たちの視線が民衆の方に向いている隙を突いて、一気に侵入する。



 作戦は単純だ。


 皆が抗議活動で王宮の注意を引きつけている間に、僕が単身で城内に潜入する。

 そして、マリーの安全を確保するのだ。


 マリーを奪還し、たとえそれが脱獄だと言われようと、支持してくれる人がいれば状況が変わる。

 民の心がマリーと共にあることを、権力者たちに思い知らせてやる。



 大丈夫だ。

 きっとうまくいく。


 そのためにも、何を置いてもマリーの安全確保が最優先事項。

 彼女が生きていなければ意味がない。



 見張りの兵士の一瞬の隙を狙って、僕は深く息を吸い込んだ。

 そして————三メートルはあろうかという高い石壁を、まるで地面を歩くかのように軽々と飛び越える。

 音一つ立てることなく、猫科の獣のような優雅さで石畳に着地した。


 着地と同時に壁沿いを疾風のように駆け抜ける。



(王宮の裏口まで、もう少しか……おっと————)



 その時、巡回中の衛兵二人組が角の向こうから現れた。

 僕は反射的に身を翻し、垂直の壁面を蜘蛛のように這い上がった。


 彼らが通り過ぎるまでの十数秒間、僕は重力を無視したかのように壁に張り付き続ける。

 足音が遠ざかると、今度は壁から軽やかに飛び降り、再び地面を駆け始めた。



 以前なら、このような芸当は絶対にできなかった。


 マリーと一緒に訓練して、ダンジョンを乗り越えて、グランドクエストをクリアして————

 この数ヶ月間で、僕は自分の力の使い方を知ることができたんだ。



 この力で、君が気づかせてくれたこの力で、今度は君を助けるよ。



 やがて前方に、王宮の裏口が姿を現した。

 厳重に守られていた王宮への入り口に辿り着くことができた。



 この先にマリーがいる————


 早く————



 だが、その時だった。



「そこで何をしてますの?」



 澄み切った鈴のような声が、背後から僕の鼓膜を打った。


読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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