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第124話 心優しいあの人が、悪魔憑きなわけない

「お願いします! 一緒に王女マリナスを助けてください!」



 全身全霊を込めた叫びが、広場の隅々まで響き渡った。

 言うべきことは全て言い切った。


 聴衆たちの表情を見る限り、確かな手応えを感じる。

 決して少なくない数の人々が僕の言葉に頷き、あちこちから賛同の声が上がり始めている。


 歓声すら聞こえそうな勢いだ。


 これなら————



「王女には、悪魔が憑いていると言っていたぞ! そんなやつを信じられるのか!?」



 突然、広場の奥の方から男の怒声が響いた。

 先ほどから度々野次を飛ばしていた男だ。



「それは……」



 僕は思わず言葉に詰まってしまった。


 悪魔なんかじゃない。

 本当は今すぐにでも否定したい。


 だが、ここでそんな感情論を展開しても、疑心暗鬼に陥っている人々を説得することはできない。

 聴衆の疑念を煽るだけだった。



「おい! やっぱり悪魔なんだろう! そんなやつを野放しにできるか!」



 そうだそうだ、という同調の声が何人かの口から漏れ始めた。

 先ほどまでの好意的な雰囲気が徐々に変わり始める。


 悪い流れになってきた。

 先ほどまでマリーを助けようとしてくれる流れになっていたのに————


 僕の胸に焦りが押し寄せてくる。



「————違うんです……!」



 僕は必死に声を振り絞った。

 一度、疑念の方に傾いてしまうと、それを払拭するのは容易ではない。


 それでも、僕は声を出した。



「悪魔とか、そういうんじゃない! もっと、マリーの————マリナス王女そのものに目を向けてください!」



 マリーは、次の女王として、この国をどう導くかを、もう既に考えていた。

 僕と変わらない歳でありながら、僕には考えられない大きなことを考えていた。


 権力に溺れるのではなく、誰よりも、皆が幸せになることを考えていた————



「そんな心優しいあの人が、皆さんを裏切るわけないでしょう!」



 僕は再度、訴える。

 分かってもらえないという事実に、心がすり減っていくのを感じた。


 心血を注いで、感情を捧げて、僕は彼女のために叫ぶのだ。



「だから、マリーを、一緒に助けてください!!」



 最後の力を振り絞った叫びと共に、僕は演説台の上で深々と頭を下げた。

 額が地面につくほど深い礼をしながら、心の中で祈り続けていた。



 頼む————


 お願いします————



 どうにか、マリーを助けたい。


 マリーの願いを、叶えたい。



 どうか————



「————いたぞ! あそこだ!」



 だが————その時、王国の騎士達が甲冑の音を響かせて、こちらに走り寄ってきた。

 通報されたのだろうか。


 明らかに僕を拘束しようとしていた。



「くそっ!」



 僕は逃げざるを得なかった。

 壇上を飛び降りて、観衆の間を潜り抜けて、走り抜ける。



「国民の皆さん。今、あの男が言っていたことは全て出鱈目です。妙な言葉に惑わされないようにしてください」



 背後で騎士の一人がそう宣言しているのが聞こえた。

 僕の必死の演説が、一瞬にして「出鱈目」として片付けられてしまった。



 ちくしょう————


 どうして僕は、こんなにも————



読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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