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第121話 マリーの幸せを願うなら、考え続けるしかないじゃない

 僕は石畳の道を早歩きで進んでいく。


 普段なら心地よい活気に包まれているの夕刻の街並みが、今日は異様な雰囲気に包まれていた。

 街角のあちこちで人だかりができ、ざわめきと不安に満ちた囁き声が風に乗って漂ってくる。


 王女処刑の件もあるが、先程の冒険者組合での大騒ぎで街の人達も異常事態をなんとなく察したのであろう。


 商人は店先で眉をひそめ、市民の人達は足早に家路を急いでいる。

 誰の顔にも見て取れるのは、言いようのない不安の色だった。


 パニックを起こすほどではないものの、街全体を覆う重苦しい空気で圧迫される。

 まるで嵐の前の静けさのような、張り詰めた緊張感が街のあらゆる場所に染み付いていた。


 そんな人々の間を縫うように歩きながら、僕は頭の中で必死に思考を巡らせていた。



 考えろ……!

 考えろ……!


 マリーを救うためには、どうしたらいい……?



 無意識のうちに拳を強く握りしめていた。

 指先が痛くなるほど力を込めながら、胸の奥深くに燃え上がる決意を確かめるように。


 僕の心臓は激しく脈打ち、血管を駆け巡る血液が全身に熱を運んでいく。



 僕は託されたんだ。


 皆に————最も尊敬している勇者達に。


 僕がマリーを救出できなかったら、マリーは死に、アンデッドエンシェントドラゴンも倒せない。

 考える限り、最悪の結末だ。


 だから————僕にかかってるんだ。



 覚悟はある。

 この胸に宿る使命感も、偽りではない。


 けれど、心の底に沈殿する重いモヤモヤは一向に晴れることがなく、僕は苦悶の表情を浮かべずにはいられなかった。



 解決策が分からないからだ。

 頭の中で何度も何度も同じ思考の迷路を歩き回っているような感覚に陥っていた。


 どうすればいい。


 今の所、動ける人間は僕一人だけ。


 マリーを救うには、正面から奪還するにも、忍び込むにも、戦力が必要なのではないか。



 勇者の皆は討伐に出かけた。

 一番頼りになる彼らに頼むことはできない。


 他の冒険者に依頼するか。

 いや、誰か当てがあるわけでもないし、信頼できない。


 残る候補としては、マリーの専属メイドのテレシーさん。

 彼女も腕は立つが、今は王妃クセルの護衛をしている。



 誰にも頼れない。


 僕一人で、マリーを助けなきゃいけないのか……?

 いや、それで成功する確率はかなり低い事は、もう分かってる。

 僕自身にできることは、この数ヶ月間で思い知った。



 そして————そもそも、力尽くで奪還するというやり方に、どうしても拭えない疑念を抱いていた。


 力づくで、マリーを取り返してしまえば、彼女は罪人となる。

 そうなれば、マリーの地位は地に落ちてしまう。


 女王への道は完全に絶たれることになり、この国を出ていくしかなくなる。


 そしたら、また一緒に旅を続ければいいだけじゃないか————なんて、そんな自分本位じゃいられない。


 彼女の思いに触れたから。

 彼女を尊敬しているから。


 誰よりもマリーの事を思っているからこそ、彼女の目標を潰したくない。



 では————どうする。


 彼女の信頼を落とさずに、王宮から奪還する方法。

 そんな都合のいい方法が————



「あるかも……!」



 突然、脳天を稲妻が貫くような鮮烈な閃きが駆け抜けた。

 間違いなく、人生最大の閃きだった。


 僕は、街の大広場の方へと、全力で駆け出した。

読んでくださりありがとうございます。



主人公がこの先どうなっていくのか、ぜひこれからも見守ってあげてください。

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