表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

政権の誕生

 時は近代。停滞の中世・夜明けの近世を越え、技術革新、国家の所有者は王から大衆へと移った。

 第一次フェーニング大陸大戦から百年。

 フェーニング大陸史は大変革の荒波に飲み込まれようとしていた。


 一年前のその日のことを私は決して忘れないのだろう、大きな声とそしてブーイング。

 歓迎と非難という両極端の騒音の中、私の指導者としての人生が始まった。

 冷めぬ熱気と衝突が議場を覆っていた、それは国家の活力と若々しさを表していた。


"俺こそが国家・我が国だ。我が国はこうあるべきだ。"


 その時皆、国家に対して当事者意識を持っていた。まさしくナショナリズムだった。

 国民一人一人…とくにこの場にいる議員たちの場合言うまでもない。

 そういった国民がいる中で、誰か一人を自国の指導者に立てなければならない。

 当然、意見は左から右まである。誰を立てても国民は揉めるだけだ。

 そして、私のような…二十五才という若すぎる男が指導者になろうとしているのだから、こうなるのは仕方ない。


 議場の雑音のボリュームが一段階と下がってきたとき私は話し始めた。

「私、ウォール・グリーンはユマイル民族戦線議長に就任することになりました。この国の最高指導者になった私は、祖国の永遠の発展を達成することを国民とお約束いたします」


「何が約束だ。戦争の危機を煽る戦争屋が、国民の生活が一番だ!!」

 突然左側からヤジが飛んできた、見ると野党に転落した労働党の議員の一人だった。


「戦争の危機?我々が住んでいるこの大陸、フェーニング大陸にはユマイル民族戦線、フェーム帝国、ネルシイ商業諸国連合の三国が群雄割拠しているのが現状です。

我が国、ユマイル民族戦線は間違いなく最弱!!人口も領土も経済力もすべてが劣っています。

国力増強がなければ、そもそもわがユマイルが併合・侵略され消滅します、国民の生活の話など消えてなくなってしまうでしょう」


 私の一言で下火になっていたように見えていた議場がまたボッと燃え始めた。

 一度燃え始めた勢いはなかなか止まらず、与党ユマイル保守党、野党ユマイル労働党のそれぞれの議員たちが罵り合い、あるいは睨みあっていた。


「第一次フェーニング大陸大戦の惨劇から百年近く。勢力均衡によって保たれてきた平和は、超大国フェーム帝国の落日とネルシイ商業諸国連合の台頭で激変しています!!国力で劣る我が国はいち早く工業化を推し進め、民需を犠牲にしてでも軍拡・鉄道網の確立を推し進めてまいりました。

しかし、軽武装のネルシイ商業諸国連合が軍拡路線に傾けば均衡が完全に崩れるでしょう。今、戦いの準備をしなければ、我が国など一瞬で植民地です!!」


 私が喋れば喋るほど、騒音は大きくなった。

 私の話が彼らに伝わり彼らはヤジを飛ばしヤジはこの議場いっぱいに共鳴して増幅されている。


「軍拡と工業化の強化が急務です。そして、進まない政治からの脱却を進めるべく中央集権化を推し進めなければならない。議会でのくだらないパフォーマンスよりも、素早い行動です。高度に統治された、迅速な意思決定が必要なのです」


「最後にこの言葉を示させていただきます。大陸統一なくして発展なし!!」


 与党保守党の議員はみな立ち上がり、私に拍手と笑顔を送る。

 労働党の議員は激しいブーイングを浴びせ、顔はみな変顔大会にでも出るのか、というくらい酷い有り様だった。

 彼らにとって私は"害悪"でしかなかったのだろう。

 中には立ち上がり私に近づこうとしてくる議員もいた。


 これが私の指導者としての始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ