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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第一章】えーっ! 男が一番偉いんじゃないんですか?〜スキル【男様】の秘密〜
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不穏な旅路

 ☆


 もしも神がいれば今頃俺のことを笑っているだろう。一瞬でも、女の子にもてていると勘違いしていた自分をぶん殴りたい。

 エレナが世界中の男から男ポイントを奪ってから、生まれてくる男はみんな、男ポイントが0のままこの世に生を受けるという。それまでは男ポイントというものは普通、個人差があるものの少なくとも1はあるものだった。

 そのせいなのか、生まれてくる男の子たちはみな何故か、生まれつき女の子っぽい恰好を好むのだという。

 そして反対に、女は男ポイントがある程度高い状態で生まれてくるようになった。

 彼女たちは女々しい男とはそりが合わず、さっさと首都に移住してしまうらしい。

 だから、フィルの住む村に女は一人もいないのだった……。


 翌朝。

 俺とフィルは村の人たちに惜しまれながらも、村を出る準備を進めていた。

 行く先はここから一番近く、一番規模の大きい街、エルドだ。

 その街ではギルドが活発で、冒険者たちが仕事を求めて大勢、集まるらしい。


「へ~そんでそのエルドってのには、どれぐらいでつくんだ?」

 フィルはてきぱきと荷物をまとめながら答えた。

「十日間ぐらいでしょうか?」

「げっ! まじかよ……東京から青森に徒歩で向かうようなもんだぜ」

「でも大丈夫、村の人たちが馬車に乗るための費用を出してくれましたから。馬車なら三日も揺られたらエルドに到着します」


 と、フィルはじゃらりと音を立てて小袋を俺に見せた。


「へえ。案外、便利なんだな」

 無感動な俺に、フィルはびっくりしてみせた。

「便利だなんて! 馬車を使ってエルドに行くのはすごくお金がかかることなんですよ。今回、村の人たちがどうしてもサカタさんにお礼をしたいと、費用を捻出してくれたんです。そんなに簡単なことじゃないんですよ」


 言って、フィルは小袋を胸に当てて、大切そうに両手で抱えた。

 そういえばエルドは、もともとフィルが目指していた街だったと言っていた。

 そのエルドに行くため、こつこつお金を貯めていたが、全てルミールに奪われてしまったと。

 ということはその袋の中にあるのは、一人の人間が、こつこつ、日々お金を貯めなければいけない金額、ということだ。


「……悪かった。そんなに大切なお金を、簡単に受け取っちゃ駄目だな。よしっ、あとでまたお礼に行くかな」

「ふふ、みんな喜ぶと思いますよ」


 俺たちは昼前には村を出発した。たくさんの村の人たちが、俺とフィルを見送ってくれた。


 歩き出してすぐ。

 俺はフィルの方を見た。

 フィルは何事か決意した表情でいる。意気込みすぎているのか、歩き方がちょっとぎこちない。

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です!」

 俺はフィルの肩をぽんぽん、と叩いて見せた。

「大丈夫、俺が付いてるからさ」

「は、はい」


 エルドに続く道には、エルドを目指す冒険者目当てに馬車がよく通るという。だからその街を目指して歩いていたら、自然と馬車に巡り合える。


 そう聞いていた通り。


 数時間も歩いたころ、一台の馬車が俺たちの後ろからやってきた。

 馬を引いているのは白髪頭のじいさんだった。

 じいさんはふがふがと俺たちに声をかけた。

「あんた方、エルドに行くなら乗せてやろうか」

「ああ、頼むよ」

 俺たちはじいさんに硬貨を前払いし、荷車に乗り込んだ。


 荷車を開けた途端、俺はぎょっとする。

 中には先客がいたのだ。

 それも結構な人数いる。五人か、六人か。荷車の中にぎゅうぎゅうになっているのだ。

 全員、女だった。


「さ、サカタさん」


 フィルが俺の袖をぎゅっと掴む。彼女たちは全員、腰や背中に刀を下げていた。それだけじゃない。戦いを生業にしているのであろう、独特な雰囲気を携えている。直感的に、素人じゃない、と思った。


 彼女たちは突然入り込んだ俺たちを、じろりと睨みつけたあと、へらへらと馬鹿にしたように笑い出した。

「へっ、お熱いお二人かい。おい親爺さん、これ以上は荷車に乗れねえよ。もう新規の客はこいつらで最後にしろよ」

「あいよ」

 返事とともに馬は速度を上げて走り出した。


「……邪魔する」

 揺れ始めた荷車の中、俺とフィルはどうにか隙間を見つけて、そこに座った。どうにも肩身の狭い思いだった。


「俺はガンザだ。お前らは?」

 一番大柄な女が、突然大きな声をあげた。隣のフィルが、びくりと肩を震わせる。

「俺はサカタ。こっちはフィル」

 俺は平静を装った。こういう奴らにすきを見せたら、ろくなことにならない。

「恋人かい?」

「いいや。パーティを組んでる、仲間だよ」

 俺の言葉に、何がおかしいのかガンザは仲間たちと顔を見合わせて、くつくつと笑った。

「やっぱりね。隣にいるお嬢ちゃんは、男だろ?」

 俺は答えず、フィルと顔を見合わせた。フィルは気にしない、というように、こくりと頷いてガンザに直接返事をした。

「はい、そうですけど」


 すると、ガンザたちはどっと笑いだした。


「そりゃそうだろうね。お前みたいな女々しい玉なしが、女様な訳がない」


 その下品な言葉に、フィルは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 俺はガンザに食って掛かる。


「おい、言っている意味はわからないが、俺の仲間を馬鹿にしないでくれ」

 するとガンザは今度は俺をからかうのだった。

「お前さんも恥ずかしくないのか、ええ? まともな女に相手にされないから、こんな女の腐ったような男を相手にしてるんだろう。もてない野郎は苦労するな」

「おい、いい加減に……」

 立ち上がろうとした俺の腕を、フィルは掴んだ。そうしてフィルは、俺に向かって何度も、首を横にふるのだった。


「駄目ですサカタさん。この人たちと揉めてしまったら、馬車に乗れなくなってしまいます」

「うぐ……」


 ガンザは下品な声で大きく笑うと、懐から酒瓶を取り出し、それを大きく煽った。


「そうカリカリすんな。ま、仲良くしようや。長旅じゃねぇか」

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