えっ?
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☆
結局、ルミールは直接戦うまでもなく、俺にひれ伏して降参してしまった。頭を垂れて、なにか恐ろしいものに生命を掌握されているかのような怯え方……。それは、檻から脱出した時と同じ光景だった。
ルミールは仲間たちと共に、荷物も置いたまま森の奥へ逃げ去ってしまった……。
俺が持っている【男様】というスキル。俺は結局、このスキルのことが何もわからなかった。ルミールが逃げ去ったあと、逆立っていた髪の毛も自然と下りて、全能感も消失した。
そして、頭の中で聞こえてきたあの声。あれは…あいつこそが、【男様】というスキルそのものなんじゃなかろうか、と思う。
スキルが発動しているとき、俺はまるで違う人間になったかのようだった。
無意識に呟いていた「男は偉い」という言動も、普段の俺なら絶対にしない。男女平等が当たり前の時代に生まれ育った俺は、そもそもそんなこと考えたこともないのだ。
俺は、自分では制御できないこのスキルを少し……怖いと思った。
☆
「サカタ様にかんぱーい!」
フィルは初対面の印象とはまるで違う、明るい調子でそう声をあげた。それと共に、村から集まってきた人たちが、乾杯! と樽ジョッキを高々と上げる。
宴会が始まった。
ここは、フィルの村の酒場だ。俺はルミールが支配していた村の人たちに感謝されて、現在このような接待を受けているのだった。
テーブルに腰を下ろした俺の周りには、村の娘たちが集まって、口々に俺をたたえる言葉を告げていく。
「サカタ様、男ポイントが1あるって本当ですか? 素敵……この村の人たちはみんな0ですよ。こんなに男らしい方、初めて見た」
「あんた、さっきからサカタ様にくっつきすぎなのよ。サカタ様困ってるじゃない」
「うるさい! あんたこそさっきからサカタ様を引っ張るんじゃないわよ」
「そんなことより、今度は私と話をしてください。サカタ様は異世界から来たって本当ですか?」
俺は彼女たちの勢いに気圧されて、苦笑することしかできない。
「あはは……みんな仲良くね」
娯楽に飢えていたのだろうか。村を救った救世主、という点を考慮しても、村の娘たちは俺のことをかなりの好意をもって迎えてくれていた。
俺は彼女たちにわあわあとじゃれつかれながら、酒場を見渡す。
この村の男性はみな、お年寄りだった。いや、そう見えるだけで、実際はもう少し若いらしい。男ポイントを奪われた彼らは、その日から抜け殻のようになって、見た目も更けてしまったのだという。
だから村娘たちにとって、俺は久しぶりに……あるいは生まれて初めて接する、若い男、ということなのだろう。
嬉しいような気もするが……俺は、そんなこの村の現状に薄暗い気持ちになってしまった。
普通、年頃の女子は同年代の少年たちと共に、青春時代を過ごす。
その相手が、彼女たちにはいないのだ。
引きこもりだった俺には、そのさみしさが何となくわかる。
俺はあらためて、エンナという征服者が、この世界から奪ったものの大きさを知った。
「もうあなたたち! サカタさんが迷惑しているでしょう。離れなさい!」
フィルが顔を真っ赤にして、テーブルまでやってきた。フィルは俺の周りに集まっていた娘たちを追い払うと、しれっと俺の隣に座った。
わざとかなんなのか、ぴとっと肩の触れ合う距離。
「あのサカタさん……本当にありがとうございました。村の人たちがこんなに楽しそうなの、久しぶりです」
「いや俺は別に大したことはしてないよ。フィルの方こそ、俺の命の恩人だよ」
「そんな! 私なんて」
フィルはどうも、酔っぱらっているようだった。どんどん、俺にくっついてきて、しまいには胸に顔を埋めてきた。
酔いのせいか、それとも他の作用か。頬を赤く染めたフィルの顔が、俺の顔のすぐ下にある。この子、よく見たら本当に可愛い顔をしているな。
引きこもりには刺激が強い距離。
フィルはぼそぼそと寝言みたいに言う。
「私もサカタさんみたいな立派な男になりたい」
俺は照れ隠しで、わははと笑って見せた。
「ははは、そんな大した男じゃない俺は」
「大した男です。ルミールと戦っているときのサカタさん、本当に格好良かった。私もあんな男にならなきゃって思いました。そうでなければ、これからサカタさんと冒険するのに、足を引っ張ってしまう」
「いやいや俺だって冒険の経験なんかないし……っていうかさっきからフィル? 君、男になりたいとかなんとか言ってない?」
「はい、言ってますよ。おかしいですか? 私みたいなへなちょこな男が、サカタさんみたいな勇敢な男になりたいだなんて」
「待て待て待て待て待て待て待て待て」
ん?
俺はフィルの両肩を掴んで、ぐっと引き離した。まじまじと、その顔を見る。
フィルはふへへ、と気の抜けた笑顔を俺に向けた。
「なんですかサカタさん、ちうですか? それ、ちょっと早いかもです」
「いやいやいやいやいやいやいやいや。フィル。確認していいか? 君の性別は、女だよな?」
フィルはきょとん、とした顔で小首をかしげた。
「え? 私は男ですよ。ていうか、この村に女の人はいません。男ポイントの高い女性はみんな、能力を生かして稼ぐため首都に行くんです。こんなへき地には男しかいませんよ」
まじか。
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