エリの企て
☆
拘束を解き、俺たちは小屋を飛び出した。ここは町の外れの場所のようで、周囲に人気はない。
早くエリのもとへ! 急ごうと駆け出した俺を、シイナは止めた。
「待て待て、気づかないのか」
「え? 何がだ」
「こんなにも都合よく逃げられる、この状況は妙だと思わないか?」
そう問われて、俺ははたと考える。確かに、都合のいい展開ではある……。エリのところにいたフィルが、ナイスなタイミングで俺たちを助けてくれた。
エリが果たして、そんなことを予想しないでいるだろうか?
シイナは肩を竦めた。
「恐らく、この展開はエリが仕組んだことだ。わざと、フィルに私たちを逃がさせるようにしたのさ」
「ど、どうしてそんなことをするんだよ」
「自分の手を汚さないためだろう。小屋を去る前、エリは私たちを始末すると言っていただろう? 普通の人間の心理では、あんなことを言われたら慌てて逃げようとする。あの発言もわざとだろう。フィルを野放しにしてたのもわざとだ。要するにエリは、私たちにこの町から消えろ、って言ってるんだよ」
あ! とフィルが突然大声をあげた。
「そういえば私は、昨晩からエリさんのところでお世話になってたんですけど……エリさんは昨日の夜からいなくなってたんです。それで妙だと思って、朝からエリさんを探しに出たんです」
「なるほど。不審な姿の消し方をして、探しにこさせたってことか。そうして私たちを発見させた」
俺は話を遮る。
「待てよじゃあ、このまま町を出るのが俺たちの正しい選択ってことか?」
シイナは冷静な顔で頷いた。
「当然そうだろう。エリがこれからやろうとしていることは、クミを殺し、町から姿を消すことだ。はっきり言って、町の人たちにこれ以上実害はない。エリに絡んでいったって、余計な手間でしかない」
シイナにはっきりそう言われて、俺は考えこんでしまった。確かに、シイナの言う通りだ。
だが何故だろうか。もやもやするのは……。
ちょっとしてから気づく。
「いやいや。クミを助けなきゃまずいだろ」
俺の発言に、シイナとフィルは、はい? と揃って首を傾げた。
「何故だ? あいつはエリの手下で、エリと協力してこの町を搾取していた悪党だぞ。どうしてわざわざ助けてやる必要がある?」
「いやそれでもさ。殺されるってわかってる人をほっとくのはなんか違うって言うか……」
「サカタさん……まさかあのクミって女に劣情を催して、また仲間に引き入れようとしているんじゃ」
「んなわけあるか! 俺はただ……どんなやつも見殺しにしたくないだけだ」
俺の言葉に、フィルとシイナは顔を見合わせた。
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