助けてもらう代わりに…
そうだった。
緊急事態ですっかり頭から抜け落ちていた。フィルは、俺とパーティを解消する! と言い出したのだった。
つまり俺とフィルはもう、仲間でもなんでもない。
だから助けを求められても、助ける義理はない……。
「いやちょっと待て! こんな状況になってるのを見て見ぬふりをするなんて、いくらなんでもおかしいだろ! 仲間だとか仲間じゃないとか関係ないって!」
俺の必死の主張も無視して、フィルはぷい、と顔をそむけた。
「おかしくてもなんでも、私はサカタさんを助けたくありません!」
だ、駄目だ……。話にならない。
俺はがっくり項垂れる。しかし、それでも必死になって頭を働かせた。そして、フィルがパーティの解消を言い出したときのことを思い出していた。
フィルは俺に文句があって、パーティを解消したのだ。それは間違いない。だってあのときフィルは怒っていた。
それだけじゃない! フィルはシイナがついてくるようになってから、ずっと不機嫌だった。
どう考えてもフィルは、シイナを仲間にするのを嫌がっている。その上で、やきもちを妬いている。
そう、そこまではわかる。
だけど!
だからといって俺は、どうすればいいのか。
女子(男)にやきもちをやかれる経験なんか、元・引きこもりの俺には一切、ない。すなわちその対処方法など知る由もない。
君が一番だよ! などと歯の浮く台詞を吐いてみるか? 馬鹿な! 俺はフィルと恋人でもなんでもないのだから、そんなことを言うのはおかしい。それを言い出すと! 恋人でもなんでもないのに、やきもちをやくフィルは、お門違いのことをやってるってことになる。でも! それを言い出してフィルを責めたってなんの意味もない。
大事なのは、フィルは今、俺に不満を抱いている。
それは、俺がフィルを仲間として大事にしてあげられてない、ってことだ。
「フィル……俺が悪かった」
俺は項垂れながら独り言のように呟いた。フィルは何も言わないが、俺は続ける。
「お前の意見も聞かないで、勝手にシイナを仲間にしちまって。でも! こいつの戦力は、俺たちが冒険を続ける上ですげー貴重なものだと思うんだ。だから別に、俺の中にやましい気持ちとかはなくって……それで、なんていうかさ……」
俺の言葉は要領を得ない。しどろもどろもいいとこだ。しかし、フィルは俺の言葉を遮って言った。
「はあ……もういいですよサカタさん。サカタさんがそんな気の利く人じゃないって私はわかってますから」
「お、おお! わかってくれたか! じゃあさっそくこのロープを」
「わかりました仕方がないなぁもう。その代わり、あとでサカタさんはコーヒーゼリーと牛乳を口の中に含んでくださいね。そのサカタさんの口の中に私がストローを入れて、全部飲み干しますから。サカタさんの口の中をコップ代わりにしたデザートってことです。それで許してあげます」
「シイナ! どうにかこのロープを引きちぎれないか! 今すぐエリをとめないと大変なことになっちまう!」
フィルは勝手にロープを解きだした。
「行きましょうサカタさん! エリと言う巨悪を打ち倒すのは今ですよ!」
「やめろおおおお! そんな変態プレイはしたくないいいいいい!」
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