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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第二章】馬鹿野郎!男が一番偉いに決まってんだから、わざわざ女に偉そうにするんじゃない!
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はったり

 通りの向こうから、ふんぞり返ったクミの姿が見えてきた。クミは、昨晩と同じ玉座に座っていた。なのにどうして動いているのか? 答えは、その玉座を数人の男たちがロープで必死こいて引っ張っているからだ。彼らはこの町の人たちなのだろう。クミの巨体を、苦悶の表情を浮かべながら懸命に運んでいる。

 クミ本人は一歩も歩くことなく、玉座の上で周囲を睥睨していた……。

 俺は無意識のうちに呟いた。

「酷すぎるぜ。まるで奴隷のような扱いじゃないか」

 俺の言葉に怒りが滲んだのが、店主に伝わったのだろう。店主は俺の膝の上に手をおいて、強い力で抑えつけた。

「ありがとうお客さん。あんたは優しい人だね。でも昨夜みたいに、余計なことはもうしないでくれ」

「こんなの見せられて黙ってろっていうのかよ」

「そうさ。クミ様を怒らせたら大変なことになる。町を守るためには我慢するしかないんだ!」

 俺は文句を続けようと、店主の顔を見た。しかし、何も言えなくなる。店主の表情は悲痛に歪んで、今にも泣きだしそうだったからだ。

「あの玉座を引いているうちの一人は私の息子なんだよ」

 その一言に、彼の悔しさが全て、凝縮されていた。


 確かに、店主の言う通りだ。余計なことをしてクミを怒らせるぐらいなら、我慢をしてあいつの言うことを聞いていた方がいい。その方が、ずっと安全なのだろう。

 だが……。

 俺にはクミが、そこまでの力を持っているとは思えなかった。


「そこでこそこそ喋っているのは誰だい!」

 クミの怒声が轟いた。顔を上げると、玉座からクミが真っすぐに俺を睨みつけている。クミはおやという顔をした。

「お前、昨夜の失礼なガキかい」

 店主が無言で俺の手を握った。何もするな、という意味だろう。

 だけど……。

「けっ……ガキとは随分な言いぐさだな」

 俺はもう、我慢できなかった。立ち上がって、往来に躍り出る。昨夜と同じく、玉座の前に立ちふさがった。

 俺はクミに向かって、ありったけの殺意を向けた。

「俺はお前がやってることを許せねぇ」

 今の俺には戦う力はない。だが、こうして殺意を向けることはできる。そして俺の見立て通りなら、クミにはそれで充分なはずだった。

 案の定、クミは一瞬、怯えた様子を見せた。

 だがすぐに、目をむいて大きく怒鳴り始めた。

「お前また! 私に向かってそんな態度をとりやがって! どんなことになるかわかっているのかい」

「やってみろよ」

「はあ?」

「魔法を使って俺を倒してみろ」

 俺は真っすぐクミを睨みつけて、そう凄んだ。クミは、歯ぎしりをしながら俺を睨みつけながらも、その瞳の奥には明らかに、恐怖があった。

 俺は、クミには大した力はない、と予想していた。これは単なる直感に近いが、経験に裏打ちされた感覚でもある。

 俺はエルドで、ベルルの魔法を食らった。あのとき、何が起こったかわからなくとも、例えようのない嫌な感じがしたのだ。自分の生命を自由にされる不快感とでも言おうか。それが、魔法攻撃に感じたものだった。

 だがクミにはそれを感じない。昨夜、俺はクミに手のひらを向けられた。あれは確かに、魔法を使って俺を攻撃しようとしていたはずだ。

 だが、俺は何の脅威も感じなかった。

 クミは魔法を使えない。全てははったりだ! それが俺の見立てだ。


「さあ、魔法を使って俺を攻撃してみろ!」

 俺は町の人たちに聞こえるように、声を上げた。

「こ、こいつ……!」

 クミは悔しそうな顔をしながら、俺に手のひらを向ける。だがやはり、何の脅威も感じられない。確信した。クミの魔法なんてただのはったりだ。こいつは何もできない!


 しかし、そのとき。

 恐ろしいほどの殺意が俺の背筋を撫でた。

 まるで、巨大なナイフに胸の真ん中を貫かれたような、恐ろしい殺意だった。

「よけろサカタ!」

 叫び声。同時に、俺の体は横から来た衝撃にふっとばされた。

 その勢いのまま地面に倒れる。どがん! と恐ろしい鈍い音が響いた。

 俺は体を起こし、今まで自分が立っていたところに視線をなげる。

 そこには、シイナが倒れていた。

 何が起こったのかわからない。混乱が俺を襲う。

 だが、致命的な攻撃がシイナを襲ったのだということが、わかった。

お読みいただき誠にありがとうございます!


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