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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第二章】馬鹿野郎!男が一番偉いに決まってんだから、わざわざ女に偉そうにするんじゃない!
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決裂

 遠くの夜道で人影が見えた。その背の高い、細身のシルエットは、エリのように見える。だが、はっきりと顔を確認できないまま、その人物は目の届かないところまで進んでしまった。


 エリの家に戻ると、鍵が開いていた。ノックをするが返事はない。

「すまん、入るぞ。忘れ物をしちゃって」

 そう声をかけながらドアを開く。俺は何故か異様な気配を感じた。警戒しながらゆっくりと、家の中を覗いていった。

 そうして、俺は硬直する。

 家の中にはフィルがいた。いくらか体調が回復したのだろう、ベッドから起き上がって、着替えをしていた。

 タイミングが悪かった。フィルは殆ど裸の状態だったのだ。

 びっくりした顔のフィルと、ぱちっと目が合う。

「うおっ……!」

 俺は小さく驚きの声を上げて、すぐさま扉を閉めた。心臓がバクバクいってる。悪いもんを見ちまった……。

 直後、ばん! と勢いよく扉が開いた。

 胸元だけを脱いだ服で隠したフィルが、怒りで顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。

「さ・か・た・さ~ん。なんですか? うお! って……まるでお化けでもみたような反応ですねぇ。乙女に対してそれは失礼じゃないですか?」

「いやすまんすまん……びっくりしちゃってな」

 俺は平謝りするしかない。フィルの言わんとすることはわかる。心が女の子のフィルは、やはり年頃なのだから自分の体を見られるのは嫌なのだろう。一緒に旅をしていても、フィルは断固として俺の目の前で着替えなかった。

 俺は励ますつもりでこう言った。

「大丈夫、大したもん見てないから気にすんな!」

「サカタさああああああああん!」

 フィルはどん、と俺を突き飛ばした。俺はその場で尻もちをつき、後ろに立っていたシイナにもたれる。

 俺はびっくりしてフィルを見上げた。今まで、どんなにフィルが怒っても、俺に手を出すようなことは一度もなかった。それが今はっきりと、俺に対して攻撃してきた。

「フィル、どうしたんだよ」

 呆然とする俺をフィルは見下ろして、怒号した。

「もう私はサカタさんとのパーティを解消します! さようなら!」

 ばたん! と勢いよく扉が閉まられた。

 のちには静寂が満ちる。耳に痛いほどの余韻だった。

「ふられたようだな」

 背後のシイナが、何でもないことのようにぽつりと言った。

「……は?」

 俺はわけがわからなくて、呆然とするしかないのだった。


 ☆


 朝。

 結局俺とシイナは、夜道を引き返して町の宿に泊まった。

 あのあと、扉に向かって何度呼びかけても、フィルは出てこなかった。その様子から、やはりエリは外出しているようだったが……そんなこと、今はどうでもいい。

 フィルが俺とのパーティを解消した。

 もう俺たちは、仲間ではない、ということだ。

 経験したことのない喪失感に、俺は包まれていた。


「はあ……」

 宿のベッドの上で寝ころびながら、俺はため息をついた。何もやる気が起きない。一体全体、どうしてフィルを怒らせてしまったのか、ずっと考え続けている。だが答えはでない。

 思えばシイナが俺たちにくっついてくるようになってからずっと、フィルは変だった。俺とシイナのキスの件をすごく気にしてたようだし……。

「やっぱりあいつ、やきもち妬いてんのかな」

 今のところその可能性が高い。だが、そうだとして俺は、どうすればいい?

 フィルは大事な仲間だ。だけど、それ以上の仲になることは、今の俺には考えられない。そもそもフィルは男だし……。

 それでもフィルが俺と一緒にいてやきもちを妬いたり、苦しくなってしまうなら……。

「もう一緒にいない方がいいのかもな……」


 そのとき、こんこん、とドアがノックされた。返事も待たずにシイナがずかずか入ってくる。

「朝マラを静める手伝いをしてやろう」

「この作品でマラとか絶対に言うんじゃねーよてめー! 必要ないから出ていけ!」

「昨日のことを気にしているんだろう」

 シイナは俺の眠るベッドに腰かけた。俺は危険を感じて慌てて体を起こす。だが、シイナにそのつもりはないようで、じっと俺を見つめるだけだった。

 その瞳にはどこか俺を労わるような色があった。

「気にすることじゃない。冒険をしていたらたくさんの出会いがあり、別れもあるものだ。私も十代のころはあちこち冒険し、その旅に色々なことがあった」

 シイナはどうやら純粋に、俺を励まそうとしてくれているらしい。俺はちょっぴり、シイナを警戒した自分を恥じた。

「うむ……そうだよな」

 頷いたところで、今度は慌ただしい足音が階下から駆けあがってきた。

 宿の主人が顔を出す。俺たちを見つけるなり、血相を変えて叫んだ。

「お客さんたち! 悪いけど一緒に外にでてくれないかな!」

「な、なんだよどうしたんだ」

「クミ様のお通りだ!」

「は?」


 俺たちは半ば強引に、主人に外に連れ出されてしまった。通りでは既に町の人たちが、大名行列に道を譲るように脇に寄って跪いている。

「ほらお客さんたちも一緒に! そろそろクミ様がお通りになるから!」

 主人に促されるまま俺たちも彼らに倣って膝をつく。

 俺は呆れてため息をついた。

「どうして無関係な俺たちまでこんなことしなきゃいけないんだ」

「悪いね、そういう決まりなんだよ。だから最近じゃ、この町にはお客さんはよりつかなくなってしまったよ。ほら、来たよ!」

お読みいただき誠にありがとうございます!


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こんな私ですが応援してくださったら励みになります涙

何卒よろしくお願いいたします!

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