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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第一章】えーっ! 男が一番偉いんじゃないんですか?〜スキル【男様】の秘密〜
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根拠

「そんな無根拠な……」

 そう言いかけて、フィルは口を閉じた。リルの体が震えていることに気づく。

 はっとした。

 リルは動揺しているフィルを励まそうとしてくれているのだ。だから気丈に振舞っている。本当は自分も怖くてたまらないのに。

 フィルはそのことに気づいた瞬間、やっと自分を取り戻した。

 リルの細い肩を優しく撫でた。


「そうですね、リル。慌てたって仕方がない。今は目の前の敵に集中しないと」

「そうよ。それに運がいいことに、親玉は城に戻ってくれるみたい」

 言って、リルは背後を振り向いた。


 丁度、シイナが城内に戻っていくところだった。その背中は、もうここには何の用もない、とでも言わんばかりだ。

 もともと、エルドの街の人たちには、偽りの姿を演じていた彼女だ。こんなところで派手に戦闘をするわけにはいかないのだろう。


 ふとフィルは夜空を見上げた。

 大きな月が地上を見下ろしている。その眩しさにぞっとした。この月はまるで、死を象徴しているようだった。


「戦闘中にまた、よそ見をしよるか!」


 ベルルの怒声。フィルは咄嗟に、怪我をしていないほうの手で、リルを抱えてその場から飛び上がった。

 瞬間、フィルたちがいたところに、閃光弾が炸裂する。その光の玉は、爆風と共に、石畳を深く抉った。

 周囲に砂ぼこりが立ち込める。それに紛れて、フィルは着地した。恐ろしい閃光弾の威力に、ごくりと唾を下す。

「あんなのが直撃したら即死です」

 しかしリルは平然と言った。

「大丈夫、当たらないから」

「え?」

「丁度いい。このまま私を抱えててね。そして、私の指示する通りに動いて。おっと、その前に骨折したところを固定しなきゃ」


 独り言のように呟くと、リルはフィルに抱えられたまま、フィルの腕を手当し始めた。

 まず、どこからか取り出した分厚い本をフィルの腕に当てる。その上から、布で強く腕を縛り付けた。

 結び終えた後、骨折した右手首がずっしりと重くなったのを感じる。しかし、その重さの分、頑強に補強されたようで、動くのが少し楽になった。

 手早い応急処置だが必要十分だ。フィルはリルの手際に感心した。

「この本は添え木の代わり。固定できればなんでもいいの」

「ありがとうリルさん」

「そんなことより、走って!」


 またも、閃光弾が目の前に迫っていた。リルはスキルを発動し、その攻撃をすんでのところでよける。

「そのまま、ベルルを中心にするように動き続けててね」

 ベルルの猛攻撃が始まった。異様な数の閃光弾が、幾度もフィルたちに迫る。


 リルの指示の通り、フィルは動き続けて、閃光弾をよけ続けた。

 しかし攻撃の勢いが衰える様子はない。

 防戦一方だった。

「リル! このままじゃ追い詰められちまうぜ。俺たちも攻撃しよう!」

「ううん、そんな必要はない。追い詰めてるのは私たちだもん」

「あ?」

「ベルルをよく見て」

 フィルは言われた通り、閃光弾をかわしながらベルルに視線を投げた。

 そして驚く。

 あれほど猛烈な勢いの攻撃を繰り出していた張本人は、目深に被ったローブの向こうで、一目でわかるほど疲弊していた。

 対してこちらは、閃光弾をかわしているだけだから、少しも疲れていない。

「なんで攻撃してるだけなのに、あんな疲れてんだ」

 フィルの疑問に、リルは勝ち誇ったように言った。

「攻撃魔法はすごい体力を使うのよ。それこそ戦士が前線で剣をふるうのと同じぐらい。あんなよぼよぼのジジイにいつまでも使いこなせる代物じゃない」

「攻撃が当たらないと言ったのは?」

「年寄りのパンチなんかいくらでもよけられるのと同じ理屈よ。あいつの低レベルの攻撃魔法なんか、身体能力を強化したフィルには絶対に当たらない。それに、あいつの攻撃の手数が増えたのは焦っているから。戦いが長引けばまずいってことは、自分がよく知っているのよ」


「なるほどね、じゃあ……追い詰めているのは俺たちってことか!」

「その通り。そろそろ行こう!」

「おう!」


 閃光弾を打ち尽くしたベルルは、あろうことかその場で尻もちをついて動かなくなってしまった。顎を上げてぜいぜいと息をついているその姿は、戦士の姿とは程遠い。


 そうだ、冷静に考えたら私たちが、あんな奴に負けるわけがないんだ。


「――サカタさん、今助けますからね」


 フィルはリルを抱えたまま、猛然とベルルに向かって駆け出した。

 スキルによって身体能力を強化したフィルが全力疾走したら、その勢いはドラゴンに匹敵するだろう。

 その勢いのままフィルは、ベルルの顔面を思い切り、蹴とばした。


「へぐっ!」


 小柄なベルルは奇妙な悲鳴を上げて、いともたやすく上空に打ちあがった。夜空に涙とも血とも知れない液体の飛沫が舞い上がる。

 その一撃が致命傷になったことは、蹴りを繰り出したフィルにはすぐわかった。背後で、べちゃり、と潰れたような音が響く。ベルルが地面に打ち付けられた音だろう。振り返る必要もなくその気の抜けた音は、ベルルの戦闘不能をありありと教えてくれた。


「フィル、このままサカタの方へ!」

「わかってる!」


 フィルはリルを抱えたまま、サカタの方へ急いだ……。

お読みいただき誠にありがとうございます!


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こんな私ですが応援してくださったら励みになります涙

何卒よろしくお願いいたします!

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