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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第一章】えーっ! 男が一番偉いんじゃないんですか?〜スキル【男様】の秘密〜
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ビビるやつ

 俺の体は自分の意思とは無関係に浮遊している。手足は動かせるが、無重力状態なのでどうすることもできない。体の自由が全くきかない状態だ。


 ベルルが俺に向かって両手を突き出している。どうやらこれは、ベルルの魔法らしい。


「好き放題暴れてくれおったな! ただですむと思うなよ!」

 俺は空中で肩を竦めた。

「おいおい、まるで自分たちが被害者みたいな口ぶりだな。俺たちはお前らが誘拐したラールを連れ戻しにきたんだぜ」

 動きを封じられているにも関わらず、全く余裕の俺に、ベルルは歯ぎしりをした。

「生意気言ってられるのも今のうちだ。どんなスキルを使ったのか知らないが、空中ではどうすることもできんだろう。このまま空高くまで浮かび上がらせて、地面に叩きつけてやる!」


「――やれやれ。空気たちよ、俺を”おろせ”」

 俺の呟きと共に、俺を空中に縛り付けていた不可思議な力は消失した。俺はすとん、と重力に従って着地する。

 信じられない、という顔でベルルは俺を見た。

「き、貴様、何をした」

「これが俺のスキルだ。万物が俺の命令に従う。これが【男様】だ!」

「万物が命令に従う……? あり得んそんなことは、そんなスキルは存在しない!」

 ベルルは後ずさりをした。俺はそんなベルルを追い詰めるように、じりじりと歩を進める。


「信じなくても結構。さあベルル。”ラールを返せ”」

 俺が発言した途端、ベルルの表情がうつろになる。このスキルがどういう理屈で人に拒否不可能の命令を下せるのか、なにもわからない。だがベルルの様子を見るに、一種の催眠なのかもしれない。

「はい、かしこまりました男様……」

 ベルルは恭しく頭を下げると、踵を返し城に戻っていった。

 俺は振り返り、リルに向かってガッツポーズをした。

「これで帰れるぜ」

「信じられない……あんたってすっごく強いんだ。ただの鈴カステラの変態だと思ってたわ」

「うん……鈴カステラって言うのはやめてね」


 万事解決かと思われた、そのとき。


 上空が何かが降ってきた。例えるならそれはミサイルだ。強烈な勢いで地面に突き刺さる鉄の塊だ。

 耳を劈くような破壊音と共に、土煙が一瞬で周囲を埋め尽くす。

 俺たちは何が起こったのかわからず、ただ突然降ってきたそれに対して、距離を取るしかできない。


「何を騒いでいるのかと思ったら……」


 鈴のなるような綺麗な声。この声は知っている。だが、最初に聞いたときよりもすごく冷たい。

 やがて、土煙の中からシイナが現れた。

 彼女はもう、初対面の善人面をした女じゃなかった。

 氷のような鋭い視線が、俺たちを射貫いていた。


「ベルル、お前には失望したよ」


 呟きとともに、シイナの姿は消えた。次に俺たちがシイナの姿を見つけた時、彼女はベルルの前に立っていた。

 ベルルは俺のスキルにより、城の中に戻り、ラールをここに連れてこようとしている。シイナのことさえも無視をして、うつろな表情のまま通り過ぎようとしている。

 シイナはそんなベルルを突然、思い切りビンタした。

 耳を塞ぎたくなるような破裂音。それとともにベルルは吹っ飛び、俺の目の前まで転がった。

「うわっちゃ~痛そう」

 その一撃でベルルはすっかり、正気を取り戻したらしかった。

 慌てて立ち上がって、周囲をきょろきょろ確認している。

「はっ、私は一体」

 そんなベルルにシイナは冷たく言い放つ。

「ベルル、お前は後ろの小娘どもを相手していろ。次に失敗したら……わかっているな?」

 その一言でベルルは、自分の置かれた状況をすぐに理解したらしかった。

「か、かしこまりました」

 ベルルは俺を通り過ぎて、背後にいるリルたちに向かっていく……。

「待てよ。まずは俺を倒してもらおうか……」


 ベルルを止めようとした俺の目の前に。

 瞬きののち、シイナがあらわれる。

 俺は、猛獣の檻に閉じ込められたような恐怖を感じ、全身から汗が噴き出したのがわかった。

 今、対峙してすべてわかる。これほど実力に差があるのか。


「お前の相手は私だよ」

 シイナは全く、平然としている。俺になど、なんの脅威も感じていない。美しい顔立ちが、かえって彫刻のような無機質さで、俺の恐怖をあおった。

 俺は精一杯、強がる。

「へっ……瞬間移動のスキルか、それとも魔法か……?」

「違う。私は魔法ポイントを持っていないし、スキルも【ドレイン】という相手の男ポイントを奪うだけのものだ」

「つまらん嘘をつくな! 高い城の上から無傷で着地したり、一瞬で移動したり……そんな芸当ができるのは人間業じゃねぇ。絶対になにか、からくりがあるはずだ」

 シイナはにやりと口角を吊り上げた。

「からくりは何もない。それらは全て、単なる私の身体能力で行っただけのこと」

「……馬鹿な!」

「お喋りをしにきたのか? ならお前、死ぬぞ」

 シイナの不気味な笑み。俺はぞっと、背筋が凍るのを感じた。

 本能が叫んだ。今、この瞬間に勝負を決めなければ、こいつには絶対に勝てない!

 俺はスキルを発動した。シイナに向かって叫ぶ。

「――”そこで寝てろ”」


 ……だが。

 スキル【男様】は発動しなかった。


「なに……」

 逆立っていた俺の髪の毛は、いつもの髪に戻っている。全身に駆け巡っていた全能感も消え失せている。

 頭の中で声がした。


 ――ビビりやがったな? ビビるやつは【男様】じゃねぇ。恐怖を感じた瞬間、このスキルは発動しなくなるぜ。

 俺は呆然とする。

「まじか」

 シイナが笑った。

「死ぬがいい」

 次の瞬間、シイナの拳が俺の胸に突き刺さった。

お読みいただき誠にありがとうございます!


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