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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第一章】えーっ! 男が一番偉いんじゃないんですか?〜スキル【男様】の秘密〜
14/48

山奥にある危険

 ☆


 夜の帳が下りるエルド。日中は騒がしいこの街も、郊外は夜になると閑散とする。

 しかしそんな中で、一店のレストランはまだ客を迎え入れて賑やかにしている。

 そこの店主は、シイナの次の獲物だった。

 シイナは物陰から舌なめずりして、店の中を窺っていた。男石を掲げ、店主のポイントを計る。


「噂通りの腕前らしい。男ポイントが10を超えている」


 冒険者以外でこの男ポイントの高さは希少だ。

「シイナ様、このような役は私どもにお任せくださればよいのに。城主自らが偵察など……」

 隣にいる従者が、うろたえたような声を出す。ローブを深く被った、異様に背の低い老人だ。

 シイナは、城主の身でありながら夜間、人目を忍んで外出し、こうして直接獲物を見定めるのが好きだった。獰猛で狡猾な獣が絶対に油断しないのと同じだ。シイナは絶対に妥協しない。


 シイナは冷たい目を従者に向けた。

「私のやり方に口を出すな」

 従者はびっくりと肩を震わせて、その場に跪いた。

「も、申し訳ございません……!」

 シイナは舌打ちし、また獲物の観察に戻った。

 店主の男、ラールといったか。いい男だ。四十手前ぐらいだろう。色香が漂っている。さぞかし上質な生気を持っているに違いない。


 シイナは日中、雑踏が賑わう時間帯には外にでない。シイナが街を歩けば、下民どもは皆、シイナの美貌を食い入るように見つめてくる。それ自体は気分がいい。だがその後、必ず自身の年齢の話題になる。

 あれだけお美しいが、実際の年齢は……。


 シイナは三十を過ぎていた。

「くそっ……忌々しい下等な連中どもめ」

 男ポイントを奪うスキル【ドレイン】は、他人から微量の生気も一緒に奪う。

 若さを保つためにも獲物の見定めは必要なことだった。


「手筈はうまく言っているんだろうな」

 シイナの高圧的な物言いに従者は慌てて立ち上がる。

「ええ、もちろんです。希少な野草を使った料理を食べたいと希望したら、その日のうちに娘はギルドで冒険者登録をしました。危険地帯への採取クエストを行うつもりのようです。危険地帯へ向かったら、半日は街には戻ってこれない。その間にラールをさらうのは簡単なことです」

 下卑た笑みがシイナを見上げた。全く醜い老人め。シイナはそれ以上、従者の顔を見なかった。

「そうか、うまくやれよ」

「けひひ……お任せあれ」

 この従者の頭の中には、さぞ残酷な景色が浮かんでいるのだろう、とシイナは思った。


 ☆


 翌日。

「お~い、どこまで行くんだよぉ」

「もうちょっとだから、頑張って。もう、私より年上の癖にへばらないでよ」

「んなこと言われても、もう三時間は山を登ってるぞ……」

 俺とフィル、リルの三人は、採取クエストにやってきていた。

 クエストの内容自体は、簡単な野草をゲットするだけのもので、既にクリアしている。あとはギルドに成果物を納品すればいいだけだ。

 しかし本題はここからで、俺たちはリルが探す、希少な野草を手に入れようとして、山を登り続けていた。

 この山はエルドの城壁を出て南に向かったところにある。ここらへんで最も険しいといわれている山で、そんなところに俺とフィルは軽装備で立ち入っているのだった。


「サカタさん、私もそろそろ限界です……」

 フィルは服を汗でびっしょりにして、ぜいぜいと肩で息をしている。村娘の恰好をしているせいで暑そうだ。絶対にこんな山深くにいる人間の服装ではない。俺もジャージのまんまだし。


「いくら危険地帯だからって、クエストのついででこんなところまで来る必要あるのか?」

 文句交じりの俺の問いには、フィルが答えた。

「クエストでなければ、危険地帯に立ち入ることができないんですよ。クエストを受注できるのは冒険者だけ。だからリルさんもギルドで冒険者登録をしたんです」

 先頭をいくリルが、明るい声で言う。

「そうその通り。ていうかサカタあんたさぁ、昨日から思ってたけどなんでそんなに常識的なことを知らないのよ」

「ああ俺は異世界から来たからな」

「えーすごい! 異世界人のことは本で読んだことあるわよ。じゃああんた、なんかすっごい特別な能力を持ってるわけ?」

「うむ一応、スキル【男様】を持ってる」

「きんも! スキルの名前きもすぎ! 絶対ろくでもないでしょそんなスキル。あんたひょっとして私より役立たずなんじゃないの?」

「おい殴っていいかこのガキ」


 そんなこんなでしばらく歩き続けて、ついに。

「あったわ!」

 リルが突然、声をあげた。足元にしゃがみこみ、必死に野草を採取する。

 振り返ったリルの手には、なんてことはない草が握られていた。

「希少植物のフォーミよ。首都では高級レストランに使われてる、超貴重食材よ!」

「ふーん、普通の草に見えるけどな」

 俺はそう肩を竦めて見せるが、フィルは感心したように言った。

「さすがですねリルさん。ブリスター人は様々な分野で一般の学者以上の知識を持っていると言われています。この植物の判別だって、私たちにはわからないけど、あなたにはちゃんとできている」

「えへへ、まあね。これでもブリスター人の端くれなんだから。でも……」

 リルは不安そうに周囲を見渡した。


「こんな山奥まで来ちゃった。早く戻らないと」

 俺は登山で疲れた凝り固まった体をほぐすべく、うーんと思い切り伸びをした。ぱきぱきと背骨が音を立てる。

「焦らなくても大丈夫だリル。さっきもフィルが雑魚モンスターを一発で仕留めてくれたろう」

 それはつい数十分前ぐらいのこと。突然、イノシシに似たモンスターが現れて、俺たちに襲い掛かってきたのだ。あわやパニックに陥りかけた俺たちだったが、フィルがスキルを発動し、一撃でモンスターを倒してくれた。


「ここら辺にいるモンスターならフィルが楽勝で倒しちまうって」

 褒められたフィルは嬉しそうに俺の腕に抱き着いた。

「えへへ、サカタさんは私が守ってあげますからね♡」

「う、うん、ありがとう。君、汗でびしょびしょだからあんまりくっつかないでくれるかな。まあだから、帰りはのんびり行こうや」

「うん……普通に考えれば、そうなんだけど……」

 リルは歯切れが悪かった。俺とフィルはへとへとだったから、そんなリルを急かして山道を下り始めた。子供は元気があっていいが、元引きこもりの俺の体力は限界に近い。


 そうして山を下り始めた俺たちを待ち構えていたかのように、そのモンスターは現れた。

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