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スキル【男様】で無双!生意気な女盗賊たちをわからせてやる!~やっぱり男様には適わないんだ~  作者: みちまるぎちすけ
【第一章】えーっ! 男が一番偉いんじゃないんですか?〜スキル【男様】の秘密〜
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このメスガキ!

 同時に振り返った俺とフィル。そこには一人の少女が立っていた。

 それも、随分幼い。後頭部の高いところで結ばれたポニーテールが、かえって彼女の幼さを強調するようだった。

 俺は腰をかがめて、至極優しくその子供に声をかけた。

「お嬢ちゃん、何の用?」


 すると、ぐるりと目を剥いて、少女は俺に食って掛かってきた。


「おいお前! 私を子供扱いするな。私はこう見えて十二歳なんだからな!」

 顔を真っ赤にして怒っている。初対面でこのムーブ。なかなかのキャラのあるやつだな。

 若干のやばい匂いを察知した俺は、この少女を刺激しないよう努めることにする。適当に話をきいて、さっさと立ち去ろう。しかし人が多い街には変人が多いようだ。

「へ、へぇ~そうなんだ。めっちゃ妥当な年齢だと思うけど……それで、何か用かい?」

「ああそうそう、怒ってる場合じゃないわ。おじさんたち、仲間を探してるって話してなかった?」

「うん、話してたよ。あと俺はまだ十七歳だから全然おじさんじゃないよ」


「それなら、私が仲間になってあげる!」


 少女は俺のおじさんじゃない主張は盛大に無視し、えっへんと胸を張った。

 さっき初めて会ったばかりで、どうしてこんなに偉そうに仲間になってあげるなどと言えるのか……。俺はこの異様な少女の行動に寒気すら覚えた。

「うんありがとねーでも大丈夫だよ間に合ってるからさーじゃあねばいばーい」

 俺はフィルの肩を抱いてそそくさとその場から立ち去ろうとした。こういう奴と深く関わっちゃいけない。さっさと距離を置くのが吉だ。


 しかし、そんな俺をフィルが慌てて俺を止めた。

「ちょっと待ってくださいサカタさん。あの特徴的な金色の髪の毛……あの子ひょっとしたら、ブリスター人かもしれませんよ」

「え? ぶりぶりすたんじん? なんだよそれ」

「ふざけんなじじい。ブリスター人ですよ。彼らはとても高い知能を持っていることで有名な希少種族なんです。彼らはこの世界の成り立ちに深く関わっている伝説的な種族でもあります。まだ子供だけど、便利なスキルを持っているかも」

「うーむということは、仲間にした方がいいのか? まだ子供だぞ」

「まだ子供でも! 仲間にできるならした方がいいです。それほどブリスター人は優秀なんですよ!」

 と、熱っぽく語るフィル。何がいいんだか俺にはさっぱりわからないが、フィルがそう言うならよほど優秀な奴らなんだろう。


 俺たちはくるっとUターンして、少女の元に戻った。

「君、なんて名前?」

「ねえ一瞬帰ろうとしてなかった? 私はリル」

「ちなみに、なんかスキルは持ってるの? 例えばたくさんの敵を一網打尽にできるような、すごく強いスキルとか」

「スキルはまだ習得中だからなにも使えないわ。ちなみに私とパーティーを組むなら仕事は十五時までにして。門限が十六時だから、パパが心配しちゃうの。あと、私は採取クエストしかしないからそのつもりでいてね。もちろん戦えないし、危険地帯ではあんたたちは私の護衛をしてね。でも私は希少植物には詳しいからそこらへんはまかせて。報酬は私とあんたたちで、半分半分ね」

 俺とフィルは、リルの傲慢な要求に、思わず顔を見合わせた。

 この希少種族であるブリスター人の娘が、何故突然、仲間になってやるなどと言ってきたのか、その理由がわかった。

 要するにこの子は、どのパーティにも入れなかったのだろう。どんなに優秀な奴でも、スキルを持ってないし、こんなに利己的では、誰も仲間にしたいとは思わない。


 フィルは無表情で俺の肩にぽん、と手をのせた。


「行きましょうかサカタさん。この子の相手をしているのは時間の無駄です」

「うん……さっきとは真逆のこと言ってるね」

「冒険者は子守りをやってる暇はありませんから! じゃあねお嬢ちゃん、もっといいパーティーが見つかるよ」

 と、フィルはリルに告げる。なんと冷たい目をしているのだろう。この見切りの速さはすごく男っぽい。フィルは一応、笑顔を顔に張り付けているが、その胸中で舌打ちを連打しているのがよく伝わってきた。

 そうして俺たちはリルに背を向けて、そそくさとその場を立ち去っ……。

 りたいのだが、俺の足にリルが巻き付いて離れなかった。

 そして、大泣きするのだ。


「やだやだやだやだ~! お願い仲間にしてよぉ。誰も私を仲間にいれてくれないのよぉ~。このままじゃパパのレストランが潰れちゃうよぉ~」

 往来の白い目が俺たちに集まる。俺は必死になってリルを宥めた。

「泣くなよ迷惑だろ! 俺たちはお前みたいなわがままそうで、なのに使えないガキの相手をしてる暇はないんだよわかってくれ!」

「びええええええええ! 普通慰めるようなこと言うフェーズなのにあまりにも辛辣なことを言ってくるよこの人~~~~!」


 ぶんぶん足を振ってみるが、リルは軟体動物のように俺に絡みついて、離れそうもない。

 そのうち、人だかりができた。白い目がひそひそと話しながら俺とフィルに集まる。

 このままじゃ良くない噂がたちそうだ。

「わかったよリル! とりあえずお前の話を聞くから、大騒ぎするのはやめてくれ」

「びえ? 本当?」

「あ、ああ。お前がそんなにパーティを組みたいのは、なにか事情があるからなんだろう。その話だけでも、聞いてやる。仲間になる約束はできないが……」

「うん……わかった」


 そうして、ようやくリルは俺から離れてくれたのだった。

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