シイナ登場
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俺の勢いはもう止まらなかった。これは、殴り込みだ。
俺はエレナが許せなかった。やつはただ、男を腑抜けにしただけじゃない。この世界からいろいろなものを奪ったのだ。フィルや、その村の人たちの苦しみは、エレナのせいで起きたのだ!
その妹が、この街にいる? これは好都合だ。
そいつをぶっ倒せば、姉も黙っていないだろう。
そんな確信をもって、俺は城に向かったのだが……。
「本当に、ごめんなさい」
俺が殴り込みに来た張本人、エンナの妹、シイナは今、俺に向かって深々と頭を下げていた。
「私の姉があんなことをしてしまったせいで、今現在も、たくさんの人が苦しんでいます。その状況は、私にとっても心苦しいものです……」
顔を上げた彼女の相貌を目の当たりにし、俺はまたも息をのむ。シイナはとんでもない美人だった。
透き通った肌に、よく化粧された大きな瞳。そして過度な装飾のないドレス。シイナは俺がこの世界でであった盗賊たちのような、がさつな女とは全く違う。女性らしい女性だった。
俺はしどろもどろになってしまう。
「あ、ああ。そんなに素直に謝られたら、なんも言えないけどよ」
俺たちの城主への謁見はいとも簡単に実現した。
まず俺たちは、城門の門番に、シイナに会いたい旨を告げた。門番は嫌な顔ひとつせず、かしこまりました。と恭しく頭を下げて、俺たちを城内に案内した。
そして絢爛豪華な一室に通され、間もなくシイナなが直接、部屋に入ってきたのだった。
そしてシイナは、俺たちに何の躊躇もなく、頭を下げた。
シイナは自身も怒りを滲ませた、熱のこもった眼で俺のエンナに対する非難を肯定した。
「サカタさんの抱く怒りは最もなものです。彼女の行っていることは、まさしく征服です。この世界のことわりをそっくり作り替える、神をも恐れぬ蛮行なのです」
「お、おうおう。そっかそっか。わかってくれてるなら、じゃあもういいか。フィル、帰るぞ」
すっかり調子の狂った俺はフィルの肩を抱いて、部屋を出ようとする。
しかしフィルは動かなかった。
シイナに厳しい意見をぶつける。
「そう思っているのなら、どうにかしてください。エンナに意見する立場にあるあなたには、その責任があるはずです!」
シイナは無念そうに、きゅっと唇を結んだ。
「全く持って、その通りです。しかし今や妹の私でさえ、エンナを止めることは難しい。彼女はあまりにも強くなりすぎた……。しかし、私だってただ黙っているわけではありません。そのために、この街にきたのです。あなたたちは、この街にきて、男性の姿が多いことに気が付きませんでしたか?」
俺はこくこくと頷いた。
「ああ、確かにそうだ。それもみんな、色んな仕事についているようだった」
「そう! 私はこの世界に蔓延る、女が強くて偉い、男はその下だ、という考えをなくしたいのです。そのために、この街では男性でも、職業の制限がなく、自己実現を成し遂げられるよう取り組んでいるのです」
俺は隣にいたフィルにこっそり問う。
「すまん、どういうことだ?」
「男はギルド以外の場で普通職につくことができないんですよ。別にそういう決まりがあるわけじゃなくて、単純に男ポイントの高い女性の方が、仕事を得やすいからなんです」
「ギルドではそういう制限がないのか?」
「ギルドで請け負うクエストは命を懸けることもありますから。単純に人手の問題ですね。安全で確実に金を稼げる普通職は、女様が独占しているのが世間の現状です」
シイナは両手をぱん、と合わせて、本当にうれしそうに笑顔を浮かべる。
「そのおかげで今やこの街では、地方からも男性の方が集まってくれるようになりました。エンナに対抗する、世界平和への道は、このエルドから始まるのですよ!」
「お、おお~」
俺とフィルは自然と、シイナに対して拍手をしていた。全く、非の打ち所がない、素晴らしい考えをもち、かつそれを実行している。
俺はフィルと顔を見合わせた。
「どうやら、俺たちは場違いだな、こりゃ」
「え、ええ。じゃあ、帰りましょうか。ここで私たちがやるべきことはないですよ」
俺はシイナに向かって頭をさげた。
「時間をとらせてしまってすまなかった。まさかエンナの妹が、こんなに立派な考えを持っているなんて思わなかったよ」
シイナはにっこり微笑む。
「いいえ、とんでもございません。またなにかありましたら是非、訪ねてきてくださいませ」
毒気を抜かれたような気分で、俺たちは城を後にした。
フィルが恨み言を言う。
「もう、びっくりしましたよ急に。サカタさんって意外と、直情型なんですね」
「たはは……悪い悪い。絶対悪い奴だって思ってたからさ」
「それじゃあ予定通り、まずは宿に行って温かいご飯を食べましょう!」
「そんな予定だったっけ? まあ、まずは生活を立て直さないと、ギルドで職業登録もできないもんな」
シイナがいい奴だとわかった今、しばらくこのエルドで生活することになりそうだ。
ギルドで職業登録をし、クエストをこなして資金を調達したのち、首都に向かう計画だった。
この街ではエンナのいる首都のことなど、情報収集もやっていく必要があるだろう。
それともう一つ、俺たちには重要な目的があった。
「それにしても、私たちみたいなパーティーが仲間を募集して、誰か集まってきてくれますかねぇ」
フィルはそうぼやいた。俺はうむと頷く。
「なんでもまずはやってみるしかないさ。わからないことだらけなんだから、考えたって無駄だ。行動あるのみ!」
ギルドでは、職業登録や、クエストの受注の他、一緒にパーティーを組む仲間を募集できるらしい。
エンナ打倒を目的とする俺たちだったが、正直このままでは、勝ち目はない。
だからこの街で心強い仲間を見つけようと考えていた。
「背の高い人がいいな。サカタさんは短足だから」
「あのフィルさん? なんか生意気になってきたね?」
とにもかくにも長期滞在できる宿を探さなければ。
そうして、街を歩いていた俺たちだったが。
突然、背後から声をかけられた。
「ねえ、あんたたち。仲間を探しているの?」
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