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虚腕の魔女  作者: アホ(アルティメットホクロ)
第1章 どうして君は生きるのか
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第7話 勇者教について

お母さんに前世の話をした次の日。


「おはよう、お母さん。」

「あら、おはよう、ミナ。今日は朝早いのね。」


ぼくは無言でお母さんに近づきお母さんのお腹に顔を埋める。

こんなふうにぼくから甘えることがなかったからか、お母さんはびっくりしたように目を丸くすると、


「今日は甘えたさんなのね。」


そう目を細めぼくの髪の毛を撫でる。


「お母さん、ぼくはこれからお母さんのために生きる。」

「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。ありがとう。でも私の願いは一つだけよ。幸せに生きて。」

「うん…がんばる…」


そう答え、最後に強く頭を埋めてから離れる。

今日から新生エルミナ!頑張るぞ!


今までは日課リストにあることをやるか昼寝か魔法の練習かお母さんと雑談しかしてなかったけど、これからは積極的に歴史や地理などの勉強をして、お母さんの手伝いもやるぞ!


「じゃあお母さん!なにか手伝えることない!?」

「ミナ気持ちは嬉しいけどまだ安静にしてなさい。あなたまだ怪我治ってないのよ?」


部屋の掃除をしながらくすりと笑いそう言う。

でも何かしたい気分なんだ!


「じゃあ勉強教えて!この世界のことについて色々と知りたい!…お願い?」


そう両手を合わせて上目遣いをする。

へへへっ、これに逆らえるもんなら逆らってみな!

するとお母さんは眩しいものを見るように目を細め、


「し、仕方ないわね!ちょっとだけよ!ちょっとだけね!」


ツンデレのセリフみたいなものを吐きながら了承してくれた。


お母さんの掃除が終わると、本棚から本を取り出し、


「それじゃ今日はボルムンド教国について教えてあげるわ。」

「そういえば教国ってどんな宗教を信仰してるの?」

「そうね、まずはそれからね。ミナ、前に読んだ『黄金の勇者伝説』を覚えてるかしら?」

「うん、大海の神様を黄金の勇者が倒す話してだよね?」

「そう、その話の中で新しい勇者が現れるのを祈ってた、みたいな内容があったでしょ?」

「うん、あったね。……ってことは勇者を信仰してるってこと?」

「概ねその通りなんだけど、正確には勇者の支援や情報提供、支援にかかるお金の募金活動、新しい勇者の発見、黄金の勇者の教えを広める…例えば孤児院を建てて孤児を保護するといったような活動内容よ。」

「一見清廉潔白そうな組織だけど、裏で後ろめたいこといっぱいやってそうだな〜。」

「そんなことはないらしいわ。この宗教…勇者教って言うんだけどね、新聞で不祥事がでた、みたいなニュースは一切流れてこないのよ?」

「うっそだ〜。実際は不祥事あるけどそれをお金の力で隠してるとかじゃないの〜?」

「まったく、疑り深いわね…一度勇者教が公開してるお金の流れを調べたことがあるけど、変なところはなかったはずよ。」

「よく調べたね…じゃあ次はどのくらいの人が信仰してるの?」

「世界の人口の約半分が信仰していると言われてるわ。今の世界人口はたしか…50億くらいだから25億人くらいかしらね。」

「ものすごい数だね。」

「そう、だから勇者教は敵に回せないのよ。この25億という人数こそが西方帝国が世界を支配できず、黄金の王国が最も安全って言われる理由なのよ。」

「ん?どういうこと?」

「黄金の王国は勇者教の聖地だから侵攻しようものなら世界中の信者を敵に回すことになるの。自国の民すら敵になりうるってこと。内乱を収めてる間に外から攻撃されるし、外からの攻撃を防いでる間に内乱で国が崩壊…なんことがあった実例があるくらいよ。西方帝国が三国同盟相手に手こずっているのもこれと似た状態だからよ。西方帝国内部にも勇者教の信者がたくさんいるから教国を相手にしている以上、自国の民にも目を向けているないといけないの。もし、西方帝国の全軍が侵攻に全力を注いでいたら今時この大陸は完全に西方帝国のものだったでしょうね。」


なるほど…この世界の勇者教はすごい力を持っているんだな。

敵対しないように気をつけないと…くわばらくわばら。


「じゃあ、勇者教の教えってどんな感じなの?」

「それはね、知らない相手に優しくしましょう。困っている人は助けてあげましょう。善い行いをしましょう。懸命に働きましょう。頂く命には感謝を捧げましょう。などよ。ね、結構簡単なことでしょ?だからこそ世界中に普及したのよ。」

「ふーん、でも世界中の半数の人が教えを守れてるようには思えないなぁ。」

「それは仕方ないのよ。信仰の深度は人それぞれだもの。この教えだけは守りたい!っていう人もいれば、全ての教えを守らなければ意味がない!っていう人もいて。でもね、それでもみんな共通して言えるのは、勇者様の味方であるってことよ。この共通認識があるから勇者教の人々は団結力が高いのよ。」

「なるほどね、人それぞれなんだね。次は勇者について教えて?どんなふうに選ばれるのか、勇者教の立ち位置とか、どんな人がいたのかとか気になる!」

「勇者教にはね、教皇様をトップに5人の枢機卿が続いて偉くて、司教、大司祭、司祭、助祭の順に地位は低くなっていくわ。勇者様はね、無理矢理当てはめるなら枢機卿と司教の間かしら?勇者教の意思決定権は主に枢機卿達にあって、枢機卿からの依頼で勇者様は魔物の討伐や各国の訪問、被災地の弔問を行なっているらしいからおそらくそうだと思うわ。ちなみに、聖女様も勇者様と同じの地位よ。」

「聖女様?」


初めて聞く単語だ。


「あら、聖女様のことは知らないのね。聖女様はね、その優しさでもって民衆を導く女性のことよ。勇者様と似てるけど、決定的に違うのは次の質問にもあった選定方法よ。聖女様は世界中から募って集まった女性の中から1人だけ選ぶのよ。それに対して勇者様の選定方法は一般には公にはされておらず、勇者教の中でも偉い人しか知らない内容で、一説では予言の書があってそこに今後現れる勇者様の出身地、名前、使命について書き記されているとされてるし、他の説では魔力量が多い子どもを集めて、その子ども達を教育して一番理想の勇者様に近い人が選ばれるとか。真相は謎なのよね…」

「実は孤児院を開いてるのは魔力量の多い子どもをみつけるためだったり?」

「それはありえるわね。でも確証がないわ。」


そっかー…でも孤児院を開いてる理由としてはぼくのやつ当たってそうだけどな。


「それと、聞きたいのは勇者様についてね?3人の勇者様以外では、噴炎の勇者様が有名ね。噴炎の勇者様は土人で…って土人はわかるかしら?」

「ううん」


土人…初めて聞くな。


「土人っていうのはね、背がちっちゃくて力持ちで人間よりちょっと長生きで長い髭の蓄えた鍛治が得意な種族よ。」


つまりドワーフか!

ドワーフでいいんだよな!?

ドワーフであってくれ!


「ほ、他には人間に近い種族でどんな種族がいるの?」

「森人…人間よりもはるか長生きで、耳が長く、目と耳がいいから弓矢の名手が多い美男美女揃いだけど、ちょっぴり人間との交流が少ない種族に、獣人…さまざまな動物の特徴を持った人間に近しい種族くらいかな?」


森人はエルフか!

獣人は獣人だね!


「話を戻すわね。噴炎の勇者様は土人で、それはそれは有名な鍛治職人だったそうよ。噴炎の勇者様が造った武器は溶岩に落としても溶けず、何年手入れをしていなくても大木をするりと切れ倒せるほどなんだって。特に、亡くなる瞬前に造られた13本の武具は神器とも呼ばれ、価格をつけることができず、国宝として扱われてるらしいわ。次に栄華の勇者様ね。国を興した森人の勇者様で、その国は歴史上最も栄えた国と言われてるわ。でも栄華の勇者様が亡くなられた後この国は、稀に見る暴君が王様になったそうでたった十数年で崩壊したそうよ。他には…孤軍の勇者様ね。聞いたことあるかしら?」


孤軍の勇者…どこかで聞いた気がする…

うーん…うーん…あっ!


「『魔法の基礎』に載ってた!たしか、複製魔法だっけ?」

「そうよ、よく覚えてたわね。複製魔法は文字通り、何でも数も関係なく複製できたそうよ。パンを1つから2つに、2つから100個に!そんな孤軍の勇者様なんだけどすごいのは魔法じゃなくてね、もちろん魔法もすごいけど、西方帝国の大軍を1人で撃退したというところなのよ!当時、西方帝国の勢いは凄まじく、大陸の8割を支配していたの。残された国々はもはや降伏以外の道がなかったと言われてるわ。その窮地を救ったのが孤軍の勇者様よ。他にも勇者様はたくさんいたけど、有名なのはこの辺りかしらね。どう?満足した?……聞くまでもないわね。」


そう、その通り。

もう、鼻血出そう。

おつちけ、おちつけ、落ち着け。

深呼吸。す〜〜は〜〜


「めっちゃ憧れる!勇者かっこいい!」


語彙が小学生になってる…

お母さんは口に手を当て笑っている。


今日は勇者について調べるぞ!

そうして本棚を漁って今日は終わった。

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