第4話 『魔法の基礎』
ついに、簡単な文なら読めるようになりました。
さすが専門書のような難しい本は何書いてあるのかさっぱりだけど…
これでやっと絵本とはおさらばできる!
そしてやっぱり異世界と言ったら魔法だよね。
本棚を物色して見つけましたよ、タイトル『魔法の基礎』。
これで魔法が使えるようになるのかな?
ぼくが上機嫌そうに本をみてるのをお母さんが優しい眼差しで見つめている。
「ミナ、魔法を使うのはいいけれど、気をつけるのよ。」
「はーい。」
そうぼくは適当に返事をする。
もう待てないといったふうにページを捲る…
著者紹介?いらないいらない。
ぼくのこの興奮を邪魔しないでくれ。
お、ここからだ。なになに?
『まず、魔法とは何か。結論から申しますと、魔力を用いイメージを現実に変換する方法です。例えば、指から火を出すイメージをして魔法を発動すれば、指から火が現れ、雨が降るイメージをして魔法を発動すれば、雨が降ります。獣になるイメージをして魔法を発動すれば、獣になることすら可能でしょう。しかし、大きな力には大きな危険が伴います。不意に人の命を奪うこともあるでしょう。この危険を理解した者のみ、この先のページを捲るようにしてほしい。』
たしかに。部屋の中で火の魔法なんて発動すれば一酸化炭素中毒になる可能性があるし、火傷だってする可能性がある。
その危険はちゃんと認識しないと。
そして練習するならまずは安全な魔法からだな。
『魔法の発現に最も必要なものとは一言で表現するならば、イメージです。』
お、よくあるやつやん。
『イメージが弱ければ魔法は発現せず、強ければ強いほどよりイメージ通りの魔法がでるのです。魔法を発現する他の方法や成功率を高める方法はありますが、なによりイメージが大切なのです。』
と。
まま、ここまではわかるね。
次は?
『では、まず注意事項から。
1.最初のうちは、沢山の魔力を一点に集中させてはなりません。制御を間違えると圧縮された魔力が元に戻ろうとして魔力爆発が起きます。
2.自らの生命の危機以外で、人に魔法を向けて発現してはいけません。
3.人の魔力量には限度があります。限界を超えての魔法の使用はやめましょう。
4.この著書に書かれてる魔法による怪我等の責任は一切著者は負いません。 』
気になるのは魔力爆発だね。
一体どのくらいの規模なんだろう。
でも気軽に試せないよね…残念。
『さて、次は魔力についての説明をします。魔力とはすべての生物の体内に存在するもので、これを消費することで魔法を発現できます。しかし、人の魔力の量は決まっており、限界まで魔法を使い続けると、出血、気絶、最悪の場合、死亡する可能性があります。倦怠感を感じたらそれが魔力の限界の合図です。ただちに魔法の使用をやめ、安静にして魔力を回復させましょう。魔力を回復させるには、リラックスすることが大切だと言われています。大気中に存在する魔力の源、魔素を生物が吸収することによって魔力に変換され体内の魔力が回復するためです。その他にも魔素を液体化したポーションを飲むことによっても体内の魔力は回復しますが、こういったポーションは高価なものが多く、贋作も多いため、あまりおすすめしません。』
ポーションか…縁がなさそうだね…
そもそもお金あったらお母さんと一緒にこんな家からおさらばしたいもん…
ところで魔法の使い方は!?早く知りたい!
『前置きが長くなりましたが、それでは魔法を発現してみましょう。と言っても、まずは体内の魔力を認識するところからです。魔力は心臓に蓄積されます。これを自分の体内を血液のように魔力が循環するイメージでもって、実際に循環させてみましょう。体がなんだか温かくなったらそれで成功です。これには個人差があり、1年経っても成功しない人もいれば、1日で成功させてしまう人もいます。1日で成功しなかったからって諦めないでください。そして、成功した方へ。これだけでは高難易度の魔法は使えません。より具体的に魔力の流れを意識できるようになりましょう。手の指先から足の指先まで循環するイメージを持てるようになるのです。これは中々できる人はいません。日々の鍛錬の結果でできるようになるのです。頑張って下さい。』
体内の魔力を循環させるのはできたけど、指先までは意識できないな…これから暇な時は練習しよう。
毎日の日課リストに追加ね。
『それでは実際に魔法を発現してみましょう。最初は水の魔法からです。手のひらから拳大の水球を発現させるだけですが、侮れません。例えば喉が渇いた時の飲み水になりますし、体が汚れれば洗うための水になってくれます。日々の生活で大きく役に立つことでしょう。まずは手のひらに魔力を集めてください。あまり大量の魔力を集めてはいけませんよ。魔力爆発を引き起こしてしまいます。魔力爆発とは、主にイメージ不足や魔力の過剰供給によって集めた魔力が元に戻ろうとし引き起こされる衝撃波のことです。相手に被害を与えるだけでなく、自分にも被害が及ぶことがあるので決して意図的に引き起こしてはなりません。話を戻し、次に集めた魔力が水へと変換するイメージをするのです。これで成功する人は少ないでしょう。失敗した方はイメージの仕方を変えてください。水の量、水の温度、水の感触、それらをより具体的にイメージするのです。そうすれば成功率は上がりますよ。』
よし!早速実践だ!
「お母さんみてて!水を魔法で出してみる。失敗したらどこが悪かったか教えて!」
「いいわよ。頑張ってね。」
まずは手のひらに魔力を集める…
魔力爆発が起きないように少しず…つ…
し、しまった…魔力が暴れて…!!
ポンと音がなり、頭と体の中身が揺さぶられる感触がした。
あまりの衝撃に嘔吐してしまう。
「ミナ!大丈夫!?」
「だ、大丈夫。怪我はないよ。」
「良かった…」
口元の吐瀉物を拭きながら目の焦点を合わせようと心を落ち着かせる。
こ、これが魔力爆発?
爆発とあるけど熱はなく、衝撃波を発生させるだけで終わった。
お、おえ…
我慢しきれず2回目の嘔吐。
少し休み、お母さんと共に床に散らばった吐瀉物を拭きながら失敗の原因を探る。
「お母さん、どうして今爆発したかわかる?」
「ミナ、それはね。魔力爆発よ。沢山の魔力を一度に注ぎ込んだでしょ?」
「いや、ぼくはちょっとしか魔力を注ぎ込んでないけど…」
「なら、もしかしてミナの魔力量が多いからちょっとのつもりでも魔力爆発したんじゃないかしら!?うそ!私の娘って天才!?きゃー!」
爆発したってのにお母さんははしゃいでる。
吐瀉物を拭いた雑巾を端っこにやり、再度試してみる。
「じゃあ今度はもっと魔力を少なくしてみるね。」
魔力を手のひらに集めて、目をつぶって集中して水のイメージをする…
これでどうだ?おそるおそる目を開けるとそこには小指の爪ほど大きさの水球が!
「お母さんみて!なんだか小さいけど、成功した!!」
お母さんの方を見て喜んだ瞬間、水球は破裂して顔に飛び散った…
「ふふふ…私も最初はそうなったわ。こんなにはやく成功しなかったけど。やっぱり私の娘は天才ね。さ、顔を拭きましょう。」
「はーい…」
成功したけどその後の制御が失敗したの悔しいな…
――――――――――
さて、本の続きを読もうか!
『水球の発現に成功した皆さん。おめでとうございます。これであなたも魔法使いの一員です。これからも研鑽を忘れずに積んでいってください。さて、次は魔法の種類を確認していきましょう。基本的には3種類、無詠唱魔法、詠唱魔法、陣魔法です。それぞれの特徴を説明しますと、無詠唱魔法は相手に悟られずに瞬時に魔法を発現することができます。ただし、イメージが難しく魔法が失敗、あるいはイメージ通りにいかないことがあります。詠唱魔法は呪文を詠唱することで魔法が発現されます。メリットは、イメージがしやすく魔法が成功しやすいという点です。逆にデメリットは相手に次何の魔法を出すか悟られてしまうことと発現までに時間がかかることです。陣魔法は設置型の魔法で任意のタイミングで起動することができます。しかし、設置に時間がかかるので1対1ではおすすめできません。ここでは省きますが、この代表的な3種類の魔法意外にも沢山の種類があります。例えば、呪言、呪い、魔眼などです。』
ほーほー。3種類の魔法でも最も使われそうなのは無詠唱魔法だね。やっぱりすぐにでるってのがデカい。
これ一択だね。でも練習するだけしてみよう。
『それでは詠唱魔法を今回も水球を出して試してみましょう。詠唱魔法は簡単です。自分が最もイメージしやすくなるような語を選んで口にするだけです。自由度が高いのも特徴の1つですね。それではこう言葉に出して水球を実際に出してみましょう。「水球よ、発現せよ。」』
「水球よ、発現せよ。」
お、おお?水球は発現したけど、無詠唱魔法との違いがあまりわからないぞ…?
『簡単な魔法だと無詠唱魔法との違いがわからないかもしれませんが、いずれ高難易度の魔法を使う時、詠唱してみてください。成功率が格段と上がるはずですよ。』
ま、まぁ簡単な魔法だったから、仕方ない仕方ない。
お次は陣魔法だね。
『最後に、陣魔法についてですが、他の2つと比べてやや難易度が高いです。と、いうのも魔力操作の精度が高くないとできないからです。まず、指先に魔力を集中させます。そして、こう空中に書いて下さい。「魔法陣に触れた後、水球よ、発現せよ」と。重要なのは3つ。魔法の発動条件を書くこと、何の魔法の発現するかを書くこと、書いている間の指先に集める魔力量は一定にすることです。これらのうちどれか一つでも疎かにすると、想像と違う魔法がでたり、暴発する危険性がありますので気をつけてください。』
文字で良いんだな。
こういう魔法陣って幾何学模様で構成されてると思ってたから少々意外かも。
では試してみるか。
魔法陣に触れた後、水球よ、発現せよ…っと。
これで触れれば良いのかな?
そっと魔法陣に触れてみる。
すると水球が発現した。
成功したはいいけど、うーん。使い道が思い浮かばん。
ひとまずほっとくか!
『次に、魔法の属性について話していきましょう。魔法の属性は大まかに7属性に分かれており、風、土、火、水、光、闇、無です。もちろん、この他にも属性はあります。有名なのだと、孤軍の勇者様の複製魔法です。これらは適正属性と大きく関わってきます。それでは適正属性とは何か?例えば1の魔力でも人によって魔法の規模が変わってきます。ある人では爪程度の大きさの水球しかだせなくても、他の人だと同じ魔力量で拳大ほどの水球をだすなどです。この適正属性はその人の歩んできた人生に大きく影響されるということがわかっています。例えば人に優しく生きてきた人ならば光属性の適正が高い、のように。あなたの最も合う属性を見つけてみてください。最後に注意していただきたいのが、あくまで7属性に分けているのは便宜上であって、例えば火と風の複合で温風をだすなどといったことも可能です。これにて、魔法の基礎を終わりとさせていただきます。残りのページは簡単な魔法とその概要、消費魔力量などを記しておきます。それではまたどこかで。』
これで残りは具体的な魔法について記されている。
それにしても、魔法はおもしろいな。
今もまだ心臓ドキドキしてるもん。
でも先ほどの水球は小指の爪ほどの大きさしかなかったから、水属性の適正は低いのかな…?
それだと僕の適正属性はなんだろう?
また今度検証してみたいね。