第2話 この大陸
「ミナ!ご飯よ〜!」
そう言いお母さんは寝てるぼくを起こす。
うん、やっぱり美人だな。
キラキラと輝く銀色の美しい髪に整った顔立ち。
引き締まるところは引き締まっており、経産婦と言われても信じられない。
まさしく、全人類の理想そのものと言えるほどの美人。
そんな美人なお母さんが起こしてくれる世界。
うぇへへ…
「ミナ、何変な顔してニヤけてるの。はやくご飯食べなさい。」
苦笑まじりにそう言う。
「ごめんなさい、いただきます!」
今日もカチカチのパンに冷めたスープか…
栄養バランスどうなの?って思うし。
まだそこまで顎が強くないのにこのカチカチのパンはダメでしょって思う。
文句言っても仕方ないからパンをスープにつけてふやかして食べるけど…
それでもまだ若干硬いんだよなぁ。
なんとかご飯を食べ終え、以前から気になっていたことを聞く。
「お母さん、時間について教えて?」
「時間?どういうこと?」
「1日が何時間なのかだったり、1週間が何日なのかとか。」
「そういうことね。1日は36時間で1週間は6日。1ヶ月は5週間で30日ね。1年は12ヶ月で360日よ。これでいいかしら?」
なるほど、1年の日数は前世と大体同じだけれど、1日36時間で1週間が6日で1ヶ月が5週間は少しややこしいな。
ちなみに四季はあるっぽい。
まだ生を受けて8ヶ月だけど明らかに気温の変化を感じる。
「ちなみにぼくの誕生日はいつ?」
「2000年の11月11日よ。1が揃って綺麗じゃない?他には聞きたいことない?」
「お金について教えて。」
「お金…ごめんなさいね。実物は持っていないの。ミナも知っての通り、基本的にこの部屋から出ることはなくてね使う機会がないのよね。でも、大まかになら説明できるわ。」
やっぱりおかしいよな。
屋根裏部屋に閉じ込められてるんだよ?
お金も取り上げられてて何もできないじゃないか。
なんでなんだ。
そう不思議がるぼくをよそにお母さんは話を続ける。
「通貨の単位はベルンって言ってね、円形の穴の空いた銅貨が1ベルン。穴のない銅貨が10ベルン。円形の穴の空いた銀貨が100ベルン。穴のない銀貨が1000ベルン。穴の空いた金貨が10000ベルン。穴のない金貨が100000ベルンよ。銅貨は茶色のお金で、銀貨はお母さんの髪の毛の色のお金で、金貨は…うーん…金色のお金よ。」
なるほど、つまり前世で言うとこの5円玉のように穴が空いてる硬貨と空いてない硬貨があるのね。
「他にはないかしら?」
「じゃあ色んな国のこと教えて?」
「いいわよ。それじゃちょっと待っててね。」
よいしょと言い立ち上がり、本棚から一冊の本を取り出した。
そしてパラパラとページを捲ると世界地図が。
「まず、私たちが住んでいるこの大陸をウォーデオ大陸といって人はみんなここと右下の小さな島に住んでるの。左下の大陸は夜の大陸っていってね、怖い怖い魔物がいっぱいで人が住めないのよ。………」
その後も話は続いた。
要約すると、まずこの世界の北半球には前世で言うとこのロシアみたいな形のバカでかい大陸があって、その南西に今度はオーストラリアのような大陸が、南東には小規模な島が何十とある。
現在、ウォーデオ大陸の西半分以上はグリム帝国が支配しており、帝国に隣接している東の国家が力を合わせて帝国の侵攻をなんとか防いでる状態だそうな。
ちなみに、僕の住んでいる国はヴァロン王国と言い、この大陸で2番目に大きい国だそうで、対帝国連合国、通称三国同盟というのに加盟しているらしい。
大陸の真ん中には一度入ったら絶対に出られないほど強い魔物がたくさんいる森があって、そこと隣接する黄金の王国と呼ばれる、ハルファード王国を境に東西に分かれている。
黄金の王国は永世中立国で帝国と一番隣接してるのに最も安全な国だと言われている。
現存している中で最古の国で、この国が興ってからの年数を数えた黄金歴という暦が世界中で使用されている。
西は先ほどの帝国が支配しており、東は騎士国家ハインを宗主とする、ボルムンド教国、ヴァロン王国の三国同盟を組んで帝国と日夜戦争しているらしい。
この三国同盟の東には数十もの国々があり、これらをまとめて東方諸国といい、各国が天下統一を目論もうとここでもまた日夜戦争を行っているらしい。
大陸の北は東方諸国と同様に十数の国が存在し、こちらはまとめて北方諸国というらしい。
ここは年中吹雪が激しい豪雪地帯で、帝国もおいそれと侵攻できないみたい。
大陸南東の島国はまとめて海上国家群といい、海上にあるため自然の要塞と化してるらしい。
そんなこんなでこの大陸には100を超える国家があるようだ。
この中でも特に気になったのが黄金の王国かな。
なんとそこには世界一の魔法学園があるみたい。
入学は5歳からで多額の入学金が必要らしいからぼくには無理そうだけど…
それでもひとまずの目標は魔法学園に入学することかな。
目標も決まったし、勉強頑張るぞ。