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明日は、アネモネ  作者: 八代
1/2

1日目

二回目の投稿

お手柔らかに。

面白かったら、レビューお願いします。

わかりにくい表現があったら教えてほしいです。


最近特にひどいのが、体のだるさだ。

服が体に張り付いて、額から汗が滴り白いTシャツにシミを作る。

今は8月下旬。

この田舎で雑貨店をやっているばあちゃんちの手伝いをしている。

「アサヒが、店の前に立つとばあさんたちが喜ぶでねぇ」

そういって、奥の居間から座椅子に座ってばあちゃんがこちらを見る。

「かわいがってもらうのはうれしいけど、ばあちゃんたちにもててもうれしくないよ。」

「ははは、まちがいないねぇ」

といっても、この田舎で高校生が働かせてもらえる環境というのは少ない。

そう考えると、ばあちゃんの手伝いで給料がもらえることは、喜ばしいことでもある。

1日5千円。それを月に、6日程度手伝いでさせてもらっている。

「ばあちゃん、今日はあんまり人がこないねぇー」

ばあちゃんに声をかけるが、テレビに夢中なことと、最近少しばかり耳が遠くなったばあちゃんには僕の声は届かなかった。

「アーサーヒ」

店に入ってきたのは、この田舎で少ない同年代の一人である、弥彦。

時代遅れの名前は、じいちゃんが名づけ親らしい。

短髪の肌が健康的に焼けた風貌だ。野球部に入っていそうな外見であり、現に野球部に入っている。

まあ、部員は6名ほどしかいないのだが…。

「よぉ」

「なんだよ、暇そうだな。」

口角をあげて、少しあきれたような笑みを浮かべながら、アイスが入った冷凍庫を開ける。

「そうなんだよ。そして、そこの若者よ。俺の分のアイスもかってくれないかい?」

机に突っ伏しながら差し入れを求める。

「やだよ。自分で買いなよ。」

ちっ、断られちまった。

弥彦の自転車をふいに見ると、自転車に釣り道具がかけてあった。

たぶん、暇だから釣りにでも行ってきたのだろう。いかんせん、海だけは周りにたくさんあるからな。

そして、駄菓子屋に寄ったところを見ると、めぼしい魚は釣れなかったんだろう。

「で、大物はつれたかね?」

にやりと、弥彦を見るとそれを聞くかといった顔をこちらに向ける。

「アサヒ、もうすぐ上がりだろう、一緒に帰ろうぜ。」

「おお。」

時計を見ると、16時50分ごろ。

うちの、雑貨店は17時で閉店だ。

「ばあちゃーん。そろそろ、帰るけど母さんに何かもっていくものある?」

「んにゃ、ないよー」

ないらしい。領収書なんかを整理していると、奥の方からじいちゃんが出てきた。

白髪で短髪の、眉間には深いしわが入っている。

無口でとっつきにくそうに見えるが、こちらから話しかければちゃんと話してくれる。まあ、要はあんまり話しかけない人ってだけだ。

「じいちゃん、お疲れ様」

「ん。おつかれ。どや、お客さんはきたか」

額の汗をぬぐいながら、柱に体を持たれかけさせる。

「まぁまぁ、だね。」

「そか、飯をくっていかんね?」

「いや、真凛がさみしがるから家でたべるよ。」

真凛とは、今年中学3年の妹だ。

「そかぁ。きぃつけてかえれよ。弥彦君も。」

声をかけられた、弥彦は「うす」と小さく声を出して、じいちゃんに軽く会釈をする。

じいちゃんは、俺らが小学生の頃は近くの中学校の武道場で剣道をおしえていた。

弥彦と俺は、それに参加しており今でも、弥彦にとってじいちゃんは先生なのだ。


締め業務を終わらせ、店の玄関をしめて、じいちゃんが裏から鍵を閉める。

ばあちゃんも、悪くなった膝をさすりながら玄関まできて、ガラス越しに手を振る。


弥彦と二人で並びながら、田舎道を歩く。

舗装はされているが、視界には緑が多く、遠くにはビニールハウスが並ぶ。

「なあ、明日。理沙が町の方に出かけないかって言ってるんだけど、どうよ。」

少しきまづそうに、俺に声をかける。

「おー、ばあちゃんに話しとくよ。なんか、買いに行くの?」

「いや、まあたまにはみんなで遊びにいこうかなって。」

弥彦の方を見ると、煮え切らない変な返事しかしないので、いつものごとく鎌をかける。

「真凛だろ。」

「うぉい。ちがう、いうとるだろ。なんで、お前はそんな邪推しかせんのだ。」

…わかりやすい。

「あー、だよなー」

あはは、と愛想笑いをするが、表情から丸わかりだ。

「じゃあ、真凛にも言っとくよ。」

「お、おう…。」

そのまんままっすぐ歩いていると、住宅街に差し掛かる。

夏だと、この時間でも明るいので子供たちが通路でスケートボードをしている。

子供は、何も悩みがなさそうでいいなー。まあ、俺も悩みはないんだけど…。

「子供は、何も悩みがなさそうでいいなー」

お前も、悩みなんかないだろ。という野暮なツッコミはしない。

「悩みなんかないだろ。」

「失礼だな。あるよ、悩み位。知らんけど。」

知らんのかい。


そうこうしているうちに、自分家についた。

インターホンを鳴らす。家族が出てくるのを待っている間、弥彦もその場を動かなかった。

それは、はたして真凛に会いたいのかそれとも、友達が家の中まで入るのを待つタイプなのか。

まあ、前者でしょうけど。

(ガチャ)

ドアを開けて、出てきたのは真凛だった。時間的に言うと母さんたちが帰ってくるのは大体18時頃。

うちの家族は共働きなので、出てくるのは必然的に真凛というわけだ。

まあ、土曜日なのでほかのだれかがいる可能性も無きにしも非ずなのだが。


「はーい、あれ?弥彦さん、とお兄ちゃん。釣りしてきたの?」

「んにゃ、俺はばあちゃんちの手伝い。で、弥彦は釣り。ちなみに、釣れなかった。」

「よけいなこというなよ…。よっ、真凛ちゃん」

顔を少し赤らめながら、真凛に手を振る。平静を装っているが語尾が上ずったのを俺は見逃さない。

「久しぶりだねー。といっても、二週間くらいか。近所なのに、高校と中学別々の方向だから、あんまり合わないよね。」

「だな。でも、今年俺たちと同じ高校受けるんだろ?そしたら、また一緒に通学できるな」

そう、真凛は今年受験生だ。学力的には全く問題ないむしろ、俺より優秀だ。


「真凛、明日町の方に行かないかって誘われたんだけど、なんか予定ある?」

「んー、とくにはないかな。理沙ちゃんも一緒?」

腕組みをして、明日の予定を確かめる。

ちなみに、理沙というのは弥彦の双子の姉で、真凛と仲がいい。

弥彦の実家は、カフェを経営しているので、ごくたまに手伝いに行っている。

「おお、一緒だよ」

弥彦がそう返す。

「やったー。理沙ちゃんに服選び手伝ってほしいんだよねー」

一気にテンションが上がったようでぴょんぴょんと跳ねる。

やひこよ、おそらく明日俺たちの出番は荷物持ちに終わることだろう。

そんなことを考えながらしゃべっていると、だんだんと日が暮れてくる。

「暗くなってきたな。そろそろ家に入るか。弥彦、明日10時に駅でよかったか?」

「おお、じゃあ俺もそれぐらいに行くわ。真凛ちゃん、こいつ寝坊しないように連れてきてな。」

「まかせとけ」

俺の寝起きの悪さに、不安を抱く二人は結束を見せる。

「君たちね…」

「またあしたー」

俺のあきれた声に被せるように(まあ、寝坊に関してはその通りなのだが)

もとい、俺の声を遮るかのように弥彦に挨拶をする。



靴を脱ぐと、スパイスの匂いが鼻孔をくすぐった。今日はカレーだろう。

真凛は、時間があるときは料理をしてくれている。

だから、真凛に関しては両親からのお小遣いは多い。

「父さんたち遅くなるって?」

「うん、さっき電話があった。救急で猫が運び込まれてきたんだって。」

「ふーん。」

俺たちの両親は、獣医師と動物看護師をしている。だから、救急で運び込まれてくると夜遅くなることが多い。

小さいころは、ばあちゃんちに預けられることが多かったが、自分たちで留守番ができるようになると、

いつの間にか、真凛が家事をしていた。

食卓に着くと、カレーを注いだ皿が俺の目の前に出される。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん明日の買い物のときスカート買ってほしいなー」

おいてあった、スプーンでカレーをすくい口に運ぼうとしたときに言われたものだがから、動作が止まってしまう。

さて、この目の前のおいしそうなカレーをおいしく食べれなくなりそうなお願いをされてしまった。

このお嬢さんは、たまにこういった断りにくい頼み方をしてくる。

普段頑張っている妹のお願いは、できる限り聞いてあげたくもなる。それに今年受験だ、勉強のモチベーションになったらうれしい。

「女の服は高いから、なるべく安くしてくれよ。」

「やった。」

ほんとにわかってんのかな。

自分のカレーを準備して食卓に着く。

「いただきます。」

妹は、ちゃんといただきますをいう子だ。

同じ教育を受けているはずなのに、どうして俺は言わないのだろう。これが、多様性というやつか…。



夕食を食べ終えると、真凛は二階に行って受験勉強を始めていた。

俺はというと、使った食器を洗い終えた後にランニングをしに外に出る。

俺は、部活動をやっていない。移動は自転車が多いので激しい運動はしない。

だから、一応ランニングを日課にしている。

近くに、海辺があるので砂浜まであるく。サクサクと砂を踏みしめる。

軽い準備運動をしながら、体の筋を伸ばし体に異常がないかを確認して、ランニングを始める。

家を中心に、5kmを目安に周りを走ると、途中で弥彦の家が見えてくる。

俺は、ここを通るときは歩くようにしている。

なぜなら、この時間帯は姉の理沙が部屋でピアノの練習をしており、その音が漏れ出てくるからだ。

なんだかんだで、ランニングを初めて二年間この音を聞いているが、だんだんとうまくなっていってるのがわかる。

あまり聞いていると、向こうにばれるかもしれないので、長居はしていられないのが残念ではある。

「今日も、いい感じでした。」

ぼそりと告げ、帰路に就く。

あなたの、生活の原動力の一部になれますように。

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