ねえ、私になんて呼んで欲しい? (超シンプル版)
九月一日。
今日は太陽が特に眩しかったけど、楽しい一日だった。
今思い返しても、アイツが浮かべた顔が忘れられない。
ふふ。
学校が終わって、私はアイツとの帰り道にゲームを始める。
ーーーー次のテストで点数が低かった方が、少しの間だけ決められた呼び方で相手を呼ぶ。
「なんて呼んで欲しい?」
成績は平均スレスレ、でも優しいアイツを面白楽しくからかってやろう。
これはそんな、ほんの気まぐれで始めた事だった。
まあ、アイツなら変な事は言ってこないだろう。
十月十五日。
今日は暑さが真夏みたいだった。
むう。
遊びに負けて好き勝手に呼ばされ、私はご機嫌斜めだ。
アイツは悪戯に笑う私を見返してやる為に、猛勉強を始めたのだ。
油断してたから、つい負けてしまった。
「ご、ご主人様……」
少し調子に乗ったアイツの命令は、顔から火が出る程に恥ずかしかった。
煽りすぎた……。
十一月一日。
少し寒くなってきた。
ついに夏服と冬服の中間服が終わり、衣替えを果たす。
やった。
でも、気がかりな事が一つ。
アイツは最近、何か思い詰めていた。進路だろうか?
私も頑張って勉強、やっと勝ち始めたのに。
「……ねぇ、どうしたのよ……」
でも、何だか勝負がどうとか言ってられる雰囲気じゃない。
私にも話せない事なのかな。
十二月一日。
今日は私にとって大切な一日になった。
まだ顔が熱い。
あうぅ。
アイツは結局、私と同じ所に進学する為にご両親と話をしたりという準備をしていたらしい。
しかも私はアイツに告白をされてしまい、驚きながらも
「はっ……、はい……」
と返してしまった。
それからと言うもの。
もうあの遊びは終わっていたから呼び方は元通り名前だけになったのに、なんだかとても恥ずかしい。
いつか、「あなた」って呼ぶ日が来た時には。
「私は一体どうなってしまうんだろう」なんて、そんな事を考えていた。