ショートストーリー 恐い話
西暦八三四三年 文明は発達し地球はひとつの国として存在していた
月や火星にも人間は行き来していた
いつの間にか黒人も白人も黄色人種もいなくなり
みんな同じ肌の色をし 同じ言葉を使い 同じ文字を使っていた
幸せということも知らなかったし 不幸ということも知らなかった
ところがある日 一人の子供が風邪を引いた
その風邪はたちまちのうちに地球に広がり
子供が次々に死に始めた たかが風邪と思っていたが
どんな最新の薬を使っても治らなかった
あげくのはてに大人まで襲ってきた
地球は恐怖の星と化した 医者たちは途方にくれた
製薬会社と医師 それに科学者たちは必死になって新薬の研究を続けたが
ワクチンは発見できなかった
その間にも次々と人は死んでいった
しかし ついに新薬が発見された
ソ連邦の原子力発電所が事故を起こし
二十世紀後半に多くの人が被爆した
そのチェリノブィ地方の人だけが不思議とこの風邪にかからなかった
不思議に思った科学者はチェリノブィ地方の土を容器に入れ
水をそそぎ 少し温めて飲んだだけで風邪は二、三日で治った
どうやら放射能というこの世に存在しない物質が
風邪を治す力を持っていることをつきとめた
さらにチェリノブィの厚いコンクリートで覆われた巨大な建物の中には
放射能がいっぱい詰まっていることを発見した
人間達は放射能を求めて古典を取り出し
もはや神話となってしまった原子力発電所を探し始め
その場所を確保する為に争いが起きた
人類はひとつであったはずなのに
放射能が風邪に効き
人々を救う薬とわかった為戦争が起きた
そして それから二三〇〇年後
世界は又黒人と白人と黄色人種にわかれ
たくさんの国ができた
人間も幸せの人もいれば
不幸な人もいる世の中になったとさ