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魔法少女は少女を目指した  作者: あさままさA
⬛第五章 嵐の予感
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第十一話「パーティーの招待状」

「そういえば昨日、体調がよくないって政宗が途中で帰ったんだよな……。休みほどに悪かったのかな」


 ハロウィンの翌日、十一月一日――結人は政宗から体調不良で休むと連絡を受け、一人で登校。ホームルーム前の時間、瑠璃や修司と政宗の欠席について話をしていたところだった。


 着席した結人と瑠璃、二人を前にして佇む修司という構図。


「私のところにも連絡が来たわ。体調が悪いから休むって。どう悪いのか聞いたんだけど返信はないわね。寝てるのかしら?」


「政宗くんが学校を休むのは初めてだね。まぁ、誰しもあり得ることだし回復を祈るばかりだよ」


「昨日はハロウィンのイベントに行ってたのよね? ……佐渡山くんがはしゃいで無理させたんじゃないでしょうね?」


「確かにはしゃぐ気持ちはあったけど、無理はさせてない。……というか、無理をさせるほど長い時間一緒にいなかったんだよ」


「イベントを楽しみにしていた政宗くんが体調不良を隠しきれなくなった。そんな感じだったのかも知れないね」


 修司が総括するように言った言葉に結人と瑠璃は納得して頷いた。


「……で、佐渡山くんと政宗はハロウィンでどんな仮装をしてたのよ? まさか普段着で行ったわけじゃないでしょ?」


「もちろん。俺は吸血鬼の恰好をしたんだ」


「そう。それで政宗は?」


「おい! もっと俺の吸血鬼に関して掘り下げろよ!」


「うるさいわねぇ。どうせマント羽織って口に牙つけたくらいのもんでしょ」


「お前エスパーかよ……」


「あ、当たってるんだね。まぁ、大抵はそんなクオリティになるとは思うけど」


 ぞんざいな扱いを受ける結人に同情しているのか、可哀想な目で嘆息する修司。


「というか、写真とかないわけ? ハロウィンってよく分かんないけど仮装の写真とか撮ったりするんじゃないの?」


「見せられるならそうしたいんだけど、政宗はリリィの恰好で参加してたんだよ。だから写真には残ってないんだ」


「あ、なるほどね。仮装の中なら魔法少女も紛れるってわけ。賢いわ。……あんたが考えたの?」


「まぁ、一応は」


「リリィのためとなると知恵が回るわね。政宗はきっと仮装にも制限があるんだろうし」


 素直に関心したようで感嘆の声を上げながら「ほぉ」という顔をした――が、しかしそんな会話についていけない者が一人いる。


「ん、何だったっけ? そのリリィっていうのは」


 顎に手を当て首を傾げる修司に、結人は小さく体をビクつかせ「あっ」と呟く。


「え、あ、いや……あれだよ。魔法少女アニメのキャラクターだ。結構マイナーだから修司も押さえてないんじゃないか?」


「そうなのかな? 僕が押さえてないなんて……本当に?」


「そ、そうよ。あんまり深く考えなくていいんじゃない? ハロウィンで何の仮装をしたかってだけの話なんだし」


 修司は消化不良の表情を浮かべていたが、それ以上の追求はしてこず結人と瑠璃は顔を見合わせてホッと息を吐く。


 今日までに修司は何度もリリィというワードに引っかかりを見せ、そして時にはリリィに会わせたりもした。


 しかし、修司は本物の魔法少女に驚きはしたが今までの出来事を思い出すことはなく、そして――記憶を維持できなかった。


 学業優秀で記憶力も良い修司だが、やはり魔法少女に関する記憶は強い想いがなければ維持できない。なので、いつしか結人達は修司に魔法少女の事実を明かさなくなっていた。


 さて、そんな会話もそこそこにホームルームが始まる時間となりつつあった。修司は教室の時計を確認して自分のクラスにそろそろ戻らなければと呟き、政宗抜きの少し違った日常が回り始める――はずだった。


 しかし、このタイミングで結人のスマホにメッセージが届く。


 差出人は政宗で、おそらくは学校を休む件に関して結人が送ったメッセージへの返事。そう思いながらメッセージを開くのだが――結人はそこから瞬きも忘れて表示された文字を何度も読むことになる。


 瞳を震わせ、額には汗を滲ませて。

 脳が理解を拒む突拍子もない話に少しずつ現実味が忍び寄る。


 そして――結人は手の力が抜け、スマホをパタンと机の上に落とす。


 そんな物音に瑠璃と修司の視線は吸い寄せられ、露わとなった結人のスマホ、その画面を見つめる。


 ――そこからの表情は三人とも同じ、戦慄一色だった。

 まず目を引いたのは添付された一枚の写真。


 それは肩から胸にかけて服を引き裂かれ、後ろで手を縛られ身動きを封じられて。恐怖と絶望に怯えた表情を見せ、後ろから覆い被さるガラの悪い男の触手みたいな長い舌で頬を舐められた――政宗の姿だった。


「え、ちょっと待ちなさいよ……! そ、それ――何なのよ?」


「政宗くん……だよね? 彼は体調不良で休んでるはずじゃあ?」


 二人が写真に困惑しながらそれぞれコメントする中、結人は思考もままならないまま過呼吸となり、心臓が破裂するのではと思うほどの鼓動を聞きながら硬直していた。


 そして、瑠璃と修司は添えられたメッセージを読み――結人の異常ともいえる状態に対する理解を得る。




『政宗くんの彼氏さん、佐渡山結人くんですね?


 お久しぶりです、マジカル☆カルネです。


 現在政宗くんの身柄を預かってまして、まずはそのご報告で連絡しました。


 最初に言っておきますが、警察には連絡なさらないようお願いします。


 彼の身の安全が保証できなくなりますので。


 さて、今から結人くんには私達がいる場所を探し、政宗くんを助けにきてもらいます。


 ただ探せといっても難しいですから、三十分ごとにヒントをあげましょう。


 大事な恋人を救うため、どうぞ頑張って下さい。


 ちなみに、こちらには少々趣味の悪い男達がいます。可愛い男の子は大歓迎だそうですから、早めの行動をオススメしますよ?


 それでは、現場で会いましょう――』



 

 机の上に転がったスマホが表示する画像と文章に言葉を失う三人。


 その写真の中――恐怖で潤ませた政宗の瞳に、撮影を行ったガラの悪い男が下品な笑みを浮かべてピースサインをする姿が映り込んでいた。

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