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魔法少女は少女を目指した  作者: あさままさA
⬛第三章 想いをはかる試験
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第二十四話「重ねた嘘は雪崩のように」

「ねぇ、政宗くん。佐渡山くんが二人になったように見えるのは気のせいかしら……?」


「……ううん、気のせいじゃないと思う。ボクもそんな気がしてた」


 中間テスト、クラブとカルネの襲撃、そして修司の告白を経て六月のある日――学校の屋上で昼休みを過ごす四人の中で、女性陣がヒソヒソと言葉を交わす。


 ちなみに男性陣は――、


「俺としては結局、時止めが最強なのは揺るがないんじゃないかと思う。何をするにしても時を止められたらどうしようもない」


「それはどうだろうか。実際、劇場版で時止めの代表格たる彼女は突破されたよ?」


「あれは設定的に突破が可能だっただけだろ。時止め魔法少女は他にもいる」


「まず前提から話をしよう。時止め魔法少女が攻撃する手段はその子の力としてカウントしていいのかな?」


「それはもしかしてあの子があちらこちらから盗んでくる重火器を言ってるのか?」


 と、魔法少女アニメに登場するキャラクターで最強議論を行っていた。


 そう、発作のように魔法少女アニメの話を繰り出す人間が増えたことを指し、女性陣は「結人が二人」と感じたのだ。


 激論を交わす二人をジト目で見つめる政宗と瑠璃。


「あれだけ魔法少女で盛り上がってるけど、クラブとカルネが現れたことでもテンション上がってたのかしら……?」


「流石にそういう空気じゃなかったから盛り上がってはなかったよ」


「……まぁ、そうよね。私が駆けつけた時には全部終わってたけどクラブとカルネは相当好き勝手したみたいだし」


 途端に表情を暗くする瑠璃。あの日遅れて到着した時、ローズは助力できなかった罪悪感でかなり沈んでいた。リリィに気にしなくてもいいと言われたが、まだ心残りとなっているようだった。


「でもまぁクラブさんは暴力で、カルネさんは連帯責任で数カ月魔法少女としての活動が停止になったらしいから、しばらくは安心だよね」


「……しばらくは、ね。活動再開が近づいたらまた警戒していかないといけないわよね」


 苦労話を嘆息交じりに語る二人。……なのだが、瑠璃は「ん?」と何かに気付く。


「――いやいや、リリィと話してる感じで喋ってるけど相手は政宗くんじゃない! 私、何やってるのかしら。それにどうして政宗くんと会話が噛み合ってるのよ」


「ん!? あ、あぁ! そ、それは結人くんから事情を聞いてたからだよ。……大変だったみたいだね?」


「あら、そうなの? すんなり会話できちゃったのはそういう理由なのね」


 正体を隠して過ごしているはずなのに思わずリリィ視点で話してしまう政宗と、割とあっさり疑いを解く瑠璃。どっちもどっちといった感じの光景だった。


「それにしてもクラブとカルネ、まさか変身後の姿を特定して脅すつもりなんてね。もしかしてリリィが正体を明かさないのはそういう秘密意識があったのかしら」


「ど、どうなんだろうね? もしかしたらそうなのかも知れないね」


「そういえば政宗くんはリリィを知ってるのね。佐渡山くん繋がりでリリィとも友達なのかしら?」


「え? あ、うん……まぁ、友達って感じかなぁ?」


 政宗は頬を掻き、瑠璃から目線を逸らして自信なさげに語った。


 政宗はリリィの正体を瑠璃に隠しているわけだが、嘘の設定を深く詰めていない。なので、アドリブで回答していくしかないのである。


(適当に友達って言っちゃったけど、その設定に苦しめられたりしないよね……?)


 政宗は自分で言っておきながら不安になり始めていた。


「ねぇ、政宗くん。リリィの正体って見たことある? まったく正体を明かそうとしないから一度尾行したんだけど、撒かれたのよね」


「び、尾行してたんだ……。とりあえずボクもリリィの正体は知らないし、最近はそもそもあの子と会ってないんだよね……」


 表情をひきつらせ、苦しそうに語る政宗。


「そうなの? じゃあ、この学校の生徒じゃないのかしら」


「ど、どうなんだろう? ボク、あの子の学校は分からないや……!」


 先ほどからリリィの正体を推理する瑠璃に政宗は冷や汗をかく。瑠璃も政宗からリリィの情報を得られず嘆息し、話題が終わる予感を見せていた。


 ――だが、


「あれ……? 政宗くんってリリィとは最近会ってないのよね?」


「う、うん。もう随分と会ってないかな」


「じゃあ、他に魔法少女の知り合いがいるのかしら?」


「いないよ。その『じゃあ』って聞き方の意味が分からないけど……」


 変に嘘を吐いてややこしくならないよう、事実を語った政宗。安パイを打ったつもりだったが――この返答はよくなかった。


「……ねぇ。なら、どうして政宗くんは――魔法少女のことを覚えているのかしら?」


「え?」


「あのね、魔法少女って一般人は基本的に――覚えていられないはずなのよ。他に知り合いがいて継続的に関われているなら話は別だと思うけど、そうじゃないみたいだし」


 瑠璃の疑問に、政宗は己の悪手を自覚。青ざめた顔中にだらだらと汗をかく。


(そっか! リリィと普段から会ってない設定のボクは魔法少女を覚えている理由がないんだ……! マズい!)


 だとすれば、瑠璃は政宗とリリィをイコールで結ぶかも知れない。政宗は王手を打たれる予感で頭の中が真っ白になるのだが……、


「まぁ、佐渡山くんみたいなイレギュラーもいるものね。そういう感じなのかしら?」


 瑠璃は政宗の思うような追求をせず、心配は杞憂に終わることになった。だから、


「え、あぁ、うん。えーっと……そうなのかなぁ? あれ。でも、それだと……」


 油断し、それが最も良くない結果を招く――。


「そもそも佐渡山くんって、今思えばどうしてリリィを覚えてられたのかしら……?」


 瑠璃はそのように呟き、人差し指を下唇に触れさせながら思案顔。政宗は慌てて回らない頭を総動員して瑠璃が行き着こうとしている場所を目指す。


(……え、ちょっと待って。これってどういうことになるの? もしかして……かなりマズいことになってる!?)


 何か言葉を足して回避しようにも言い訳が思いつかず、両手を落ち着きなく動かすも唇は何も紡げない。そして、瑠璃がやがて導きだした答えは……、



「――――――――っん!?」



 息を飲んで目を見開き、瞳を震わせる。そして、硬直してジーっと――いや、ボーっと政宗を見つめる瑠璃。その視線を受けて政宗はようやく思考が追いつく。


 政宗が()()リリィと会っていないなら、最後に観測した魔法少女はローズになるだろう。そして瑠璃は、消えたと思っている()()()()()()が政宗に今もあるのだと認識を改める。


 つまり、政宗はローズという魔法少女を起点に記憶を保持している。ならば、ローズに対して強い想いを抱いていると言っているようなもの。それこそ、結人のように。


 その事実と、消えたと思ったあの記憶の蘇りを合わせて瑠璃は政宗をどう思うのか?


 思わぬ所で生まれた想い、捻じれを引き連れて――四人の物語は夏へと至る。

 三章完結しました!

 明日からはもちろん四章スタート!

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