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3話「村娘、無茶させる」

 場所は変わって霊峰にある林。


「まずやってもらうのは自然力を感知するところからです」


「自然力とは?」


「自然力とは万物に宿る力。例えば……この地面に生い茂る雑草からも自然力は放出されていますよ」


「え、俺にはただの雑草にしか見えないですけど」


「最初は誰でもそんなものですよ。これから徐々に感覚を掴んでいきましょう。と言いたいところですが悠長にはしていられませんよね」


「はい。俺には魔王と再戦するという目的があります。そのために一刻も早く強くなりたいのです」


「本当はこういう方法はあまり良くないのですが仕方ありませんね」


 すっ、と手を差し出す。


「あの」


「手を握ってください」


「それはどういう」


「早くなさい」


「はい!」


 凄みのある笑顔で催促されたグリームは背筋を伸ばし、恐る恐る手を握る。

 すると突然得体の知れない力が流れ込んでくる。


「最初は気持ち悪くなるかもしれませんが我慢してくださいね」


「し、ししょう、言うのが遅い、です……うぷっ」


「吐いたら掌底叩き込みますから」


「は、はいぃ」


 グリームはひたすら耐えた。「あ、手柔らかい」などという思考は一瞬にして吐き気というなかなかに耐え難いものに塗り替えられた。

 こんな状態で掌底を叩き込まれようものなら女性にみっともないところを見られてしまうというプライドすら粉々になってしまうだろう。ここは耐えるしかないのである。


「ふう、こんなものでいいでしょう。あら?」


「うっぷ、うぷ……ぜぇ……ぜぇ……はー」


「ちょっとやりすぎました。ゆっくり深呼吸してください」


 背中をさすりながらグリームの体内に流し込まれた自然力を調整する。

 少しずつ顔色が良くなってきたようだと一安心。


 ちなみに吐いたら掌底は嘘である。別に吐いたところで怒りはしない。脅した理由は自然力を身体で感じるときに変な癖がつかないようにするためだ。

 自然力を扱う度に吐くのでは使い物にならない無駄な力となってしまわないように成功体験を作るのも目的の一つである。


「で、今はどうです?」


「どうとは……これは! 感じます! さっきまで全然感じられなかったのにそこら中の木々や草から……これが自然力」


「普通は徐々に感じられるようになるので吐き気などの顕著な体調の変化は無いのですが今回は無理やり自然力を通しましたからね。とりあえず感知はできるようにしましたが精度はまだまだのはずです」


「精度というのは具体的にどれくらいまで師匠には見えているのですか?」


「粒ですね」


「へ?」


「砂粒にも満たない極小の粒まで見えていますよ」


「そんな、俺にはぼんやり見えているだけでそこまでは全く見えないです」


「だから精度を上げる必要があります。精度が低いと自然力の扱いも大雑把になって非効率ですし」


 自然力の緻密な操作はそのまま戦いにも直結するほどに影響が大きい。緻密な操作ができなければ力は分散し、パフォーマンスも著しく下がる。逆に緻密な操作ができれば何倍ものパフォーマンスを発揮できる。


「最終的には自然力をある程度のところまで扱えるようになって脱力を無意識下で行えるようになることです」


「それは前の測定の時に師匠が俺を地面に倒れさせたことにも繋がっているのですか?」


「もちろん。あれも脱力による技の一つです」


「よし! 燃えてきましたよ! 俺も師匠のように自然力、脱力を習得して強くなります!」


「げ、元気なのは良いことですね」


 グリームの瞳は熱血男と言わんばかりに燃えている。さっきまで吐き気でダウンしそうになっていた人と同一人物とは思えない。


 熱血化していたグリームだがこの後も美心による血反吐を吐くような自然力の流し込みは定期的に行われ、その度に吐きそうになるのはまた別の話である。

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