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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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30話 帰宅


「ここは……?」


 低い天井の木材に目を奪われてから首を横に曲げると、シータンと目が合った。

 ずっと()()にいたようだった。


 クリクリとした目を寄せた彼女、


「オッズが最も低い、一.一倍の『ここは』が正解でした。全員外れです」

「ぜったい『せまっ』だと思ったのに」

「わたしは『知らない天井』一点オシだったのに。つまらない結果だったわね」

「感性が昭和ですよ、サラさま。『か、かつ丼が喰いたい』でしょう、やはり」


 シータンにルリさま。サラさんとカエさんも。

 つーか、ナンナンデスカ、コヤツら?

 好き勝手に盛り上がってんの、いったいぜんたい誰得なんっ?


 これはぜひにキレたろー! と大声出しかけたとこで。


 シータンが、わたしのオデコに手を当てた。

 一気に腹立ちがおさまった。てゆーか、目をパチクリ!


「ハナヲ。ようやくお目覚めですか? ここは冥府庁敷地内の官舎です。丸一日眠ってましたよ? 具合はどうなんですか」

「ふわあぁ!」


 なんと天変地異でも起こったんすかぁ?

 シータンが皆に代表して問診してくれてる!

 いやーありえん、ありえん。


 ここはプンスカと演技して。


「……ちょっと頭痛がするかな。それにオナカが減った。コロッケが食べたい。いっぱい食べたい。すっごく食べたい」

「……承知。肉の成田屋のでいいですか?」

「うん。ついでに水谷園の梅茶漬けも」

「承知」


 うえええっ?

 要望、通ったっ。


「シンクハーフさま。差し出がましいのですが、ここは冥界。東大阪じゃありません。肉の成田屋は無いと思われます」


 カエさんがゆったが、


「でも、行ってくる。ハナヲが食べたいのなら」


 う。

 うううぅ。

 ……待って。

 本当に行こうとしたんでビックリして、シータンのドテラのすそを引っ張った。

 ゴチッと天井の角で頭をぶつけた。


「てっ! ……二段ベット……?」

「三段ベットです。アタマぶつけますよ。気を付けてください」

「ゆーの遅いよ……家に帰ってからでいいよ。家で食べたい」


 振り返ったシータンはコクリ、まっすぐわたしを見詰めて。小さくうなづいた。




  ◇    ◇ ― ◆◆ ―  ◇     ◇



 我が家。

 我が家やー。

 

「何日ぶりなんや? このドア開けたら玄関無くなってんのとちゃうかな。もーそんなんカンベンしてな?」


 わざと明るく口に出すのは、半ば御祓いのつもり。

 ドキドキ気分でドアを開けると。


「わあぁ……」


 ――なんてこったい、ブルーシートが無くなっていた。

 ばかりでなく、家の内部らしい体裁がちゃんと整えられてる。

 そして。


「お帰り、ハナヲちゃん」

「ハナヲー! オレをほっぽってどこ行ってたんだよ! 心配したじゃないかっ」


 惟人とリボルトセンセ。

 なかなかのイケメンなオトコふたりに出迎えられる。

 ……幸せやーって思うべきなんかしら?


「……DIYとかゆーヤツ? ふたりで?」

「そうだよ。……正確にはもうひとり、ね?」

「ああそーだ! 巫リンも手伝ってくれたぞ。いまいちの出来だが、オレら精一杯やったさ」


 いまいちの出来か。

 ゆわれてみりゃ、ところどころ壁板の継ぎ目が歪んでいたり、壁紙が寸足らずだったりしてる。

 床は一歩踏み出すごとに「ギシッギシッ」とブキミな音を立ててるし。

 更にはスースー外気が吹き込む箇所もあるし。


 でも。


「……メチャ嬉しい。アリガトね」


 なにより、張り合ってたふたりが「ヤッタ!」と叫んで、がっちりと握手してくれたのがとてつもなく嬉しい。


「で、肝心の巫リン(田中)は?」

「彼女ならハナヲの部屋に缶詰で、ココロクルリと受験勉強の真っ最中だよ」

「なんですと」


 勉強はかまわんっ。

 けども、なんでわたしの部屋つかってわざわざ。イヤな予感しかせんのやが。


 案の定。

 ドアの向こうは大狂乱。お祭りの園、やった。


「ルリさまと田中がいるってのは聞いてた。けどもナニユエ、シータンとカエさんまで! いやいや、それよりもなによりも、オマエや! バズス! うすら大っきいオマエが居たら最大の不幸を招くんや!」

「イヤーン、ペロペロキャワイイちゃーん! いきなしハイテンションでおもてなし宣言?? 感謝痛み入りィ!」

「ちょっと大声で喚かないでよ! さっきやっと課題の召喚魔法、成功しかけたんだから!」


 ほ、ほんとお?!

 ルリさまの興奮具合から大法螺でないと理解。


「それは大袈裟です。センパイの前だからって、エエカッコする必要など皆無です。そんな余裕があるなら確実に成功させなさい」

「は、はい。すみません」


 田中ぴしゃり。

 ルリさまが見る間にショボン。


「そんなキツイ言い方せんでもええやん。ルリさまも一生懸命なんやで?」


「……ふ。センパイはわたし以外、誰にでも優しいんですね」


「な、なんやの? そのイヤミくさいの?」


 バズスがバンバンわたしの肩を叩く。

 イタイイタイ! マジで砕けるって!


「聞いたよーん? 魔女っ子たち(親友)よりもオトコを取ったんだってねぇ? ククク、じぇらしーすとーむ、吹き荒れるぅ、イェイエ!」


 田中が、バズスの胸をボカスカ殴りまくる。


「このクサレ! ゴブマージヤロウ! わたしなんて、親友にも入れてもらってないですよっ!」

「ウホホホ! だってさー、ペロペロキャワイイちゃん? この試験官、落ち込みすぎて死んぢゃうかもぉ。あーショックショックう」

「こんのォ!」


 また家壊す気かっ!

 しかも今度はわたしの部屋っ?!


「ヒートアップ禁止やーっ! 落ち着けっ!」


 大騒ぎの中。


 ボンッ!

 と、手品の仕掛けが飛び出したのかと思えるような大仰な音がして、皆がいっせいにそちらを見た。

 ハアハアと肩で息をしているルリさまの腕の中に子猫がいた。


「で、出来ましたぁ! 先生!」

「え? ええぇ? で、出来ました、か?」


 たじろいだ田中だが、気を取り直し、試験官らしくピンと背筋をのばした。


「ここまでは完璧です。でもすぐに消えたり、手足が動かなかったりしたらダメなんですよ?」


 かすれた声で「はい」と答えたルリさまは、そっと子猫をカーペットの上に置いた。

 子猫はしばらく四肢を丸めてジッと固まっていたが、ルリさまが「歩いて」と命じると、彼女の方を向いてうなづき、――なんと上体を起こし、後ろ足だけで歩き出した!


 ポカン状態のわたしたちを置いて、子猫は次に、前足二本で逆立ちして歩き始めた。


「さ、逆立ち歩き……」

「ご、合格です。……と言いたいところですが、使い魔に一番必要な能力が――」


『そんなんしゃべれるに決まってんやんニャア。ルリさま合格ニャから』


 し、しゃべった!

 か、かわいいっ!


「……でもなんで関西弁?」



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