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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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27話 止めて!


 例によって【ねん()ろ暗闇姫ハナヲ】が出現した。

 二頭身のデフォルメ人形。

 でもちっともカワイクはない。だって、オジサンの容姿(まんま)だもの。


「ほほお。これが例の個体魔法、【内視鏡(ディヴゲ)】ですか?」


 背広着の、でっぷりした()()()の化身を食い入るように眺める弁護士先生。

 係官らも初めて見る魔女の妙技に、嫌悪しながらも興味深そうに遠巻きにしている。


 巫リン(田中)が、ゆっくりした口調で言葉を投げかける。

 それは予想していなかった内容だった。


「まず、一つ目の質問です。あなたは本当に【シンクハーフ・バレーヌ】ですか?」

「……」


 ――あ!


 そーゆーコトか!

 なんて察しの悪いわたし、今の今まで思いもよらんかった!


 ちっとも口を割らんから、そーゆー手に出たわけか!


 とっさに人形に手を伸ばしたが、田中に引っ込められてしまった。

 格子の中に居るわたしは必死に奪い取ろうとしたがもはや届くはずもなく。


 無慈悲に、無頓着にねんでろ人形が答える。


「オレはそんな名前じゃない。シンクハーフは別人だ」


 係官の表情が険しくなった。

 かたや弁護士先生はふむふむと、すべての事情を知っている風にうなづいた。


「つまりはあなたは、シンクハーフの代わりに捕まったということですね?」

「その通り。オレは彼女の身代わりだ」

「やめて!」

「本当は何もしてないと?」

「していない」

「やめろっ!」


 わたしの意志を無視し、田中が粛々と質問を続ける。


「オレは彼女を助けたかった。そもそも原因を生んだのはオレだ。彼女はオレを助けようと思って、冥界に乗り込んで来たんだから」


 脱力したわたしはその場にへたり込んだ。

 シータン。ごめん。わたしのせいで。


 突如人形が消えた。


「あ、アレ? 消えちゃった」


 田中が狼狽した声を上げた。焦ったのか、もう一度呪文を唱え始めた。

 わたしはノドにこみ上げた異物をこらえ、ゴクリと飲み込む。例えようのない怖気と嘔吐感がした。


「せ、センパイ、どうして!」


「はぁ……はぁ……。もうやめて、田中。充分、証言は取れたやろ」

「何言ってんですかっ、まだまだ不十分です。センパイのためなんですよ? 協力してください!」


 格子越しの田中は一生懸命わたしを説得しようとした。


「これ以上、他に何が聞きたいんや」

「暗闇姫ハナヲさん。どうか冷静に。冥界の法律では、あなたの国のように、偽証や犯罪隠匿の罪で罰せられることはありません。なぜなら冥界にはグレーという概念はなく、【疑わしきは即地獄行き】と決まっているからです。地獄でたましいを浄化させ、その人を救済しようと考えるのです」


「……だから?」


 そう諭す弁護士先生は物知りかも知れない。大人かも知れない。

 けれどもシータンはグレーやない。ましてやクロでは決してない。不条理な罪を認めよってのは、どー考えても合点がいかへんのや。


 係官がアタマを掻き掻き。


「……いいか、娘? これはオレらが言うこっちゃないが、上は犯人が誰だって構やしねーんだ。ヒラ長官を退任に追い込めりゃ、それでいいのよ。オレら【公安局】にとって、オマエがシンクハーフだろうと誰だろうと、どうでもいい話なのさ」


「……なんやと?」


「センパイ、聞いてください。ヒラ氏の反対勢力は、つまり【魔女(ラマージ)を使って混乱を起こし、市民の同意も得ずに蜘蛛の糸事業を終了させたヒラ氏を、糾弾したい】んですよ」


 あらためて公安局係官のカオをながめた。

 わたしから目を逸らせているあたり、その話は真実のようだ。彼らも有り体に指摘されてバツが悪いらしい。


「公安局の中にもヒラ氏に従う者と反逆を企てる者がいます。この人たちが()()()()()()なのかは存じ上げませんが」


 舌打ちをして係官のひとりが部屋から出ていった。もうひとりはタバコを取り出して人前で吸い始めた。眉間のしわがイライラを物語っている。


「でも、わたし、……まだ魔女(ラマージ)とちがう……」

「問題はそこです。わたしが証拠を取りたいのは、センパイが魔女でない事」

「わたしが魔女でないこと……?」

魔女(ラマージ)魔能者(マージ)は違います。後者はまだ人間扱いされます。ですから冥界ではただの死人、そのへんにいる一般市民となんら変わりません。それを逮捕しちゃったってなると、公安局は誤認逮捕となるわけです」


 田中のしたり顔に弁護士先生が苦笑した。係官はゲホゲホと咳き込んだ。


「うーん。なるほど……」

「ですから、センパイ。協力してください。ここからさっさと出ましょう。()()()のところに帰りましょう」


 みんなのところ、か。

 ウインクする田中に、ドキドキとビクビクを覚えながら、わたしはそれでも、


「ち、ちょっと待って」

「どうしたんですか! まだ疑問でも?」


「じ、じゃあさ、わたし、魔女になれないの?」


「冥界から戻ればカンケーないですよ。ここにいたらずっと魔女にはなれません」


 そうか。

 じゃ、魔能者証明(魔女じゃない証拠)を突き付けて、とっとと帰るか。

 しかしそこで弁護士先生が首を振る。


「しかし。良いのですか? ……その、……ゴホン」


 口ごもったのは予告なしにサラさんが姿を見せたからだ。


「――ハナヲ。あなた、まだ魔女になりたいの?」

「サラさん……?」


「魔女になれば、もう二度と冥界には来れないわよ?」

「な、なんで?!」


 魔女になれば、二度と冥界には来れない……?



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