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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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23話 魔女にしか効かない注射です(マネしないでね)


 キョウちゃんが、わたしを誘惑したって?!

 そんなのありっこない。逆なら考えられなくもないけども。

 ……ってナニゆってんの、わたし。


 (かんなぎ)リンが、カエさんの尋問に淡々と答え続ける。

 さっき打たれた注射のせい? やっぱヤバいヤツじゃ?


「ヒラというのは冥府庁長のヒラ・ノリツネ氏ですね? 彼がハナヲを誘惑したと。そういう話ですね?」

「はい」

「それで、あなたはシンクハーフに何とそそのかしたのですか?」

「不埒なヒラ氏を少し懲らしめましょうよと。都合良いように利用されているハナヲ先輩が可哀想でしょう? と。……ぐえっ」


 (かんなぎ)リンの上体が小刻みに震え出した。

 カエさんが追加の投与(ちゅうしゃ)を行ったのだ。


「か、カエさん。いくら何でもやりすぎや。田中が死んでまうっ!」


 と、制止しようと踏み出した一歩(あし)が止まった。

 赤色の焔をゆらゆらと眼に宿しているカエさんに、おもわずビビっちゃったのだ。


「この子は魔女(ラマージ)ですから、この程度の御仕置きでは死にませんよ。この苦痛が快感に変わっちゃうと元も子もないので、分量の加減もしておりますし。……さぁ、(かんなぎ)嬢、昨夜のように、ここで洗いざらい、真実をぶちまけなさい。尊敬していた、敬慕していた、いえ、好意を抱いていた大好きな【パイセン】の面前で、もう一度。あなたの裏中の裏を全部。全裸になってさらけ出しなさい。さぁ、さぁ!」


 白目をむき、「がごご……」とおよそ人とは思えない呻きを上げた後、巫リンは、


「……シンクハーフさまは、わたしが放った出まかせを端から相手にしませんでしゅた。じかじぃハナヲ先輩が冥界との一件で苦労しているのは知っていたので、「一肌脱ぐ」と申されて、マコトイトーにアポをとられたんでじずずず」

「そ、そこまで知ってて、なんで止めたりわたしにゆってくれんかったんよ?」

「……そりゃ、口止めされたからでしず。だからから、わたずも腹をくくったんでず。ひはは」


 巫リンのおでこに手を当てたカエさんが、


「あらら、壊れるのが少し早すぎです。体が小さいからかしらね」


 と、恐怖におののく発言をした。

 現に、巫リンの普段からほっそりしている身体が見るからに骨筋張って、全体的に萎みだしてるようにも思える。全身から噴き出した汗が、ポトポト音を立てそうな勢いで地面に垂れ落ちている。


「ね、ねぇ、(かんなぎ)試験官、腹をくくったってどういうイミなの?」


 たまりかねたようにルリさまが質問した。田中が今にも失神しそうだからだ。気を失えば何も聞けんくなるっていうのもあるやろうし、早く放免してあげたいという気持ちも生じたからだろう。


「ごめんなさいぃ。……魔法管理局に、シンクハーフさまが冥界で起こした騒ぎを通告しました、……しました。通告した上で、冥界への内定調査を……志願し、彼女の助けになるつもりで後を追いました。ドテラを……着ているのは、彼女の……仲間だと勘違いしてくれた連中に目をつけてもらえて、会える確率が高まると思ったから……ですですですです。そのアイディアはナガエさんから……ぐへっ、頂きました」


 後半は喘ぎ喘ぎの告白だったので、ところどころ不明瞭で聞き取りにくかったものの、だいたいのいきさつは理解できた。話し終えた巫リンはすでに昏倒している。


「まったく。すぐにへたばりやがりまして。事情はどうあれ、我が主を窮地に陥れた罪は、まだまだ償ってもらわければなりません。しかしながらこれでは仕方がありません。――では、そこな労働組合の方とやら、あなた方はこの巫リンに何と言いくるめられて冥府庁(ここ)に乗り込んでこられたんですか?」


 カエさんに矛先を向けられた彼らは、一様におびえた様子で固まった。

 しゃべろうとしてるのにノドから音が出ないカンジ。


「正直、巫リンのここまでの話は昨日の時点でとっくに聞き知っていました。わたしはこの続きが知りたいのです。理由は言わなくても分かるでしょう? 我が主、シンクハーフを一刻も早く見つけてお(うち)に連れ帰り、きびしく、そして念入りにお灸を据えたいからなのです。さぁ、どうぞ。ご発言を。わたしが冷静に、お行儀よくお聞きしている間に。なにとぞ白状なさいませ」


 ゆらりと、注射器を持ち上げるカエさんに、彼らの戦慄はピークに達した。「ギャーッ」と絶叫しその場に縮こまった。 


「ひ、ひいぃぃ。お、お、オレたちは、た、ただその魔女っ子に言われて……」


 あぁ。

 いい大人なのに。でも多分、おっちゃんだったわたしも同じ反応したよ。きっと。


「そこまでにして下さいますか」


 背中越しにたしなめた声の主は、サラさん。

 ふあぁ、ようやくあらわれた!


「あなたは?」

「冥府庁、総合管理本部浄化部死後受付課の課長を務めます、サラと言います。わたしの執務室でなんの騒ぎですか?」


 課長!

 こないだまで係長やったのに! なんてこった! 超スピード出世!


 振り返った、眼光鋭いカエさんの反応は……。


「ここの責任者の一人、ですね? 魔女(ラマージ)……ではないですね、魔能者(マージ)なのですか。……いえ、過去にお会いしたことがありますか……? あなたは確か、アステリア王立の魔女学校で……」

「? えーと? アステリア? アステリア時代のわたしを知っているの?」

「知っている……? ――そう、わたしはあなたを知っている……?」


 ブツクサつぶやいてたカエさんの目がカッ! と見開いた。

 ――と同時に、すばやく立礼の所作をとった。


「ま、誠に失礼をいたしました。お久しゅうございます、サラさま」

「? え?」


「アステリア侯スピア殿下の御親縁の方でございますね? とんだご無礼を。……しかしまさか、このような場所でお会いできようとは思いもよりませんでした」



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