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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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21話 ハナヲら、冥界に乗り込む?

 

 ――さてさて。


 バズスのヤツをどうシバいてやろうかと思案してたら、とうの昔にルリさまがボカスカ殴りつけてた。


 そりゃあさ、路面電車で冥界に行けたら世話無いって。ねぇ?

 3駅目にしてようやく気付いた、ルリさまとわたし。


 そう。よくよく考えりゃ、わたしらもかなーり愚鈍やんな。

 そーゆーイミで同罪っぽいねんけども。

 でもま、そーゆー理屈はそっちのけで、バズスに「おちょくられた」って感じたんやな。

 特にルリさま。


「いたいーいたいっすぅ! 金髪ロリっ子、止めるっすう」

「バカッ、アホッ。だいたい電車なんかで冥界行けたら世の中の電車通勤の人たちは、全員懐かしの死者と会いまくれるでしょうがっ!」

「はうあっ。電車通学の人もね?」

「うっるさいわ! で、ココはいったいドコなのよ!」


 ドコだとゆうルリさまにつられ、キョロキョロ。

 ……なんて確認するまでもなく、わたしにはしっかりと見覚えがあった。


 林の中にデンと建つ、中世風の古い建物。

 玄関の、灰色(グレー)のぶっとい円柱が印象的な。


「ルリさま、よく見てよ。ここは寄宿舎やん。魔女学校の」


「え? そーなの? こんなに汚かったっけ? 人の住める場所(トコ)じゃないよ?」

「ハ、ハハハ……」


 何人か寄宿生らが通り過ぎてるそばで、そんなに大声で。

 バズスが縮こまっていた身体をスックと伸ばし、


「闇雲に彷徨ってたんじゃないっすよー。異世界同士をつなぐ【ゲート】に行こうとしてたんだしぃ」

「なにが『だしぃ』よ! いい加減そのヘンな言い方止めて。ホンットに心底イライラするんだよね!」

「きゃあ、やーだ。イライラってさぁ、更年期じゃなーい?」


 言葉より先にパンチとキックが出るルリさま。

 なんだかすっかり仲良しやん? ふたりとも。


「なにニコニコしてんのよ? キモチわるい」

「まー、仲間同士、本音で話し合えるっていいよね」

「ハナヲまでとち狂いだしたの? もーしっかりしてよ」


 とにかくわたしらは建物内に入った。

 以前に現世との間の行き来に利用した【時空の裂け目】。

 そこはわたしが元過ごしてた部屋の、クローゼットの中。


 とりあえずそこを目指すことに。


 ところで驚いたのは、まだわたしが魔女学校を除籍されてなかったこと。

 家庭の事情とやらで休学中になってるらしい。だからあっさりと侵入できたわけ。スピアさんの厚意のおかげ。


「――にしてもさぁ。現世(あっち)異世界(アストリア)の往来ならわたしの能力で他の場所でも設定出来るんですけど。わざわざここに来なきゃいけない理由ってあったのかなぁ? ねぇ、バズス?」

「ひゃっはー。これはこれは失敬すわー。なんせペロペロキャワイイちゃんの部屋にオジャマしたかったのだけなのさん」

「うわキッモ! バッカじゃないの?!」


 ゲシゲシ蹴られてるのに、カオをほころばせるバズス。

 あぁ……コイツ、わざとやな。

 って、ペロペロなんとかちゃんってわたしのコトか。うーっ、ゾゾ()が走った。


 けどもルリさまもルリさまやで。

 別の場所に設定できるんならもっと早くゆってくれって()いたい。……このタイミングではゆえんけど。


「あのさぁ」

「なによ!」

「教えて欲しいんやけど」

「だから、なによ!」


 イラついてんなぁ。どうどう、どうどう。


「以前、ルリさまたち、監禁されたわたしを助けるために冥界に乗り込んで来てくれたでしょ? あのときはどーやって侵入したの?」

「マコトイトーって男が、冥界の入口まで案内してくれたのよ」


 そう、やったんや。

 マコトイトー。元冥界庁の課長。なんて部署だったっけ。

 サラさんも同僚やったよな……。

 そうか、彼が案内を……。


「――って、あ!」

「わあっ。唐突に叫ばないでよ、びっくらしたじゃないっ」


 冥界へなら、わたし頻繁に行ってんやん!

 アホやー、わたし。なして思い出せへんかったんよっ、もおっ。


「わたし知ってた。冥界への行き方!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「あのさぁ。ホントーにバカの集まりだよね。まったくウッカリしすぎ。わたしも含めて全員」


 駅前のドーナツ屋さんでテーブルを囲み、ルリさまが眉間にしわを作ったまま、もぐもぐタイムに興じている。

 バズスは素性を隠すために暑苦しいナリで、同じくモゴモゴとドーナツをほおばり。


「だから入口はドーナツ屋さんじゃなくって、駅の改札に上がるエレベータ……」

「ペロペロキャワイイちゃん。しっかり食べとかんと肝心な場面で力が出せないっすよォ?」


 あのさぁ。もうすぐいつもアルバイトに行く時間やねんから。


「聞いて? 特定の時間にしか冥界への入り口は繋がらへんねん。あと10分くらいで遅刻、すなわちトビラが開かんくなってまうねん!」

「……ハナヲさ?」

「ん?」


 口のまわり砂糖だらけのルリさまが、ズイッとカオを寄せる。


「気付かんくてゴメン」


 拭いてあげようと思って、テーブル隅の紙ナプキンを取り。


「……何してるの?」

「え? あ、口拭いてあげようって思って。砂糖まみれやから……」


「バッカ! 時間(タイムリミット)のコト、先に言えって言いたかったの!」

「あ! すっ、すいません、すいませんっ」


「――で、何時から何時なの?」

「なにが?」

「……あのねぇ、わたしの話、聞く気なかったの? 冥界への開錠時間よっ!」

「わあっ、えーと、20時45分から21時ちょうどまでですっ」


 ふたりと一匹は店を飛び出して駅へ。

 ――そして、改札口の階に上がるエレベータ前に。

 

「で。間違いなくここなの?」

「うん。このエレベータ、21時に止まっちゃうねん」


 説明しつつ【上へ】のボタンをポチと押す。

 降り切り開いたドアももどかしく、殺到するわたしら。


「いたいっ。ちょっとォ! バカなのっ? ムリヤリ押し入らないでよ! 順番ってモンがあるでしょ!」


 怒らんとって。そーゆールリさまも同罪でしょうがっ。

 ――と、駆け込みで乗り込もうとした部外者の兄ちゃんがひとり。


「おどれ。ホンキでこれに乗らはる気ィか? あぁ?」


 バズスが通せんぼする。彼の異相に兄ちゃんが腰を抜かす。


「わあぁぁ! 怪物?!」


 無常に閉まるドア。


「可哀想じゃない」

「でも連れて行かれへんやん、ゼンゼンカンケーない人を」


 チラッとスマホを見る。ただいま、20時57分。

 どうにか間に合った。


「二階に着く前に【上】のボタンを長押しして」

「こう?」


 上昇していたエレベータが静かに停止した。


「それから【下】のボタンを3回」

「3回押したよ? これで着くの?」


 今度は降り始めたエレベータ。地下に潜った感覚。

 数階分下がったところで停止した。


「着いたよ。冥界に」


 そこは建物の中、わたしには見慣れた廊下。


 降りたところでポーくんとかち合った。


「アー、はなをサーン! オハヨゴザイマース!」


「ウン。おはよー」



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