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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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19話 異世界アステリアにて

 久々に異世界(アステリア)を訪ねたわたし。


 ルリさまが通う魔女予備校の入校手続きに付き添い、その足でアステリア領府に赴いた。

 領主スピアさんに面会を求めるために。

 

 しばらく会ってなかったんで、会えると分かったらメチャクチャ緊張した。


 襟や袖口にアンティーク調のレースをあしらった壮麗なシルクのドレスを着こなした彼女。

 謁見の間にカオを出すなり、


「ど、どうかしましたかっ? そのような……まるで物乞いのような恰好(なり)は?!」


 と目を見開き、憐れむような悲鳴を上げた。

 なあっ。久方ぶりの再会で、それ?


「……あ、いや。……そんなにヒドイですか?」


 過去、彼女と会う時にはいつも魔女学校の制服かもしくはパーティドレスやったんで、今日のわたしのカジュアル普段着と、無造作にゴムで束ねた髪型に相当な違和感を覚えたんやろね。


「何があなたをそこまでさせたのですか」


 とまでゆわれた。


 でもね、お嬢さん。

 令和の日本と言う国では、これがフツーの庶民の出で立ちなんですよ?

 ご免なさいですが。


「スピアさん。……実はリボルトのことなんですが」


 詳細は語れないし語ったところで理解できないだろうから、かいつまんで現在の彼の苦境を訴えた。その上で彼女にお願いする。


「願わくば、もう一度彼をこのアステリアの騎士として迎えてあげてもらえませんか?」

「それは……願ってもない話です。彼はアステリア内でもトップクラスの技量を持つ剣士でしたし。それに、人にものを教えるのもとてもお上手で、もう一度復帰してもらえたら本当に有難いです」

「それじゃあ」

「でも……。それは彼の意志なのですか?」

「え? そ、それはもちろん……」


「それだったらなおさら。そういう話は本来、彼自身が自分で頼みに来ることではないかしら? 彼のいないところで勝手に話を進めるべきでは無いとわたくしは思いますわ」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「どうだった?」


 領府から中央馬車道を渡った先の小さなカフェで、待っていたルリさまが聞いてくる。

 わたしのサイフの中身を気にしてか、お冷のみで粘ってた様子。

 楚々とホットケーキセットをひとつ注文してから応える。


「恥ずかしい。良かれと思って自分勝手に動いちゃったのが裏目に出た」


 テーブルに置かれたホットケーキに手を付けようとしないルリさま。

 目の前で二等分してあげ、彼女に差し出す。


「ありがとう! いただきます!」


 やっとルリさまが目をキラキラ輝かせた。


 ……えっと。

 ルリさまの学費はわたしの貯金で何とかするとして。

 家の修繕費は……(日本円に替えるのが大変だけど)スピアさまに借りれることになった。


 あとは日々の生活費。

 リボルトの収入はアテに出来ひんしなぁ。


「家、売るかなぁ」

「え? あの家? 売るの? どーして?」

「ああ! ごめん、ひとり言。忘れて!」

「……やっぱ、お金に困ってるの? でもあの家、35年だっけ? 長期のローン組んでるんだったでしょう?」


 アハハ……。こんな公共の場でなんて話をしてんや。


「ううん。リボルトにしかゆってなかったけど、あの家は一括支払いの購入なんや。……って、お金の心配は子供はせんでいいよ」

「えーっ子供って。そういうあなたも子供でしょうが。で、売ってどうするの? アステリアにでも住み直すの?」


 それは……。


「スピア姫にもゆわれた。いっそアステリアに全員移住すればどうかって」

「そうしなよ。その方がずっと良い暮らしができるんじゃない? わたしもシンクハーフもそうしてくれる方が通いやすいし」


 ルリさまとシェア中のレモンティを一口すすった。

 ホットケーキ一切れをフォークで持ち上げる。


「例えば……さ、もしもわたしが魔女っ子から元のオジサンに戻ったら、ルリさま、どーする?」

「ハナヲが? 元の状態に? いったいナニ言い出すのよ?」

「オジサンになって会社勤めしたら、毎日ちゃんと暮らしていけるやん。中学生じゃ働きたくても働けへんし、将来もどうなるか分からんでしょ?」

「つまりハナヲは異世界(アステリア)で暮らすのはイヤなんだ?」


 そーなんかな? でも、違うような気もするし。

 うまく説明できない。


「……よく分かんない」


 縮こまっていたら、わたしの横にドッカと、バカでかい図体が腰を下ろした。


「ば、バズス!」

「おっひさー。ペロペロキャワイイちゃん、メンタル沈んでる? なんだか深刻ぶってる? でも世の中、そうそう重大な悩みなんて無いんだよぉ?」


 ハーフゴブリンのハイテンションヤロー。黒姫(ひまり)の片腕を自称してる男。

 相変わらず真っ黒なローブに全身を包み、周囲を威嚇するようにフードから目だけをギョロギョロのぞかせてる。


「なんか用なの? わたしたちは今とっても大事な話をしてるんだからジャマしないでよね」

「ウルサイ金髪ロリっ子だことねー。そんな邪険にしていーんかなぁ、せっかくスピア姫の伝言持って来てやったってのにな―」


「伝言?」

「ある頼みを引き受けてくれたらアステリア領内に邸宅を用意するってよ」

「頼み?」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アステリアの領府からほど近い距離にあるスピア姫の私邸に呼ばれたわたしは、ルリさまとふたりで彼女と落ち合い頼みごとを聞いた。


「それって。シンクハーフが狙われてるってコト?」

「ええ。とても心配なのです。冥界人に捕まる前に彼女を保護したいんです」


 どういうコトや?!

 シータンが冥界から指名手配されてるらしい?!


「ゼンゼン見えてこーへん! なんの冗談かも把握でけへん!」

「でわ。オイラが分かりやすく説明してアゲマショウ!」

「バズスはいま、わたくしの秘書官をしているのです。そしてシンクハーフは」

「黒姫さまの命令で、スピア姫の秘書官をしてるんだにー。そして、ドテラの魔女っ子はアステリアの政務補佐官なのジャ」


 なっ。


 ルリさまも同時に「なっ」と声を出した。

 声出した分、彼女の方が驚きが大きかったってゆえようか?


 くっそー。シータンめっ。いつの間にそんなエライさんになってたんや?

 ま、それはともかくとして、なんで冥界(キョウちゃん?)に追われる身になってんや?


 ちっとも理解できひんやんっ!



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