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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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13話 憂鬱のリボルト


 近所の公園を通りかかったとき、ボンヤリするリボルトセンセを見かけたらしい。

 陽葵(ひまり)が言うには、暗いオーラに包まれてたそうだ。


「ボクも付いてくよ」


 買って出た惟人(これと)とふたりでその公園に向かった。

 道すがら彼は、自宅を半壊させたことをあらためて詫びてきた。


「……ハナヲちゃん。家壊してホントにごめん」

惟人(これと)も案外『イラチ』やね」

「まぁね、昔からさ。よく村のヤツらにはマイペースって言われてた」


 ふむ。


「最初に惟人(きみ)に会ったときさぁ。なんて堂々とした、落ち着いたヤツなんだろうって思ったんだよね」

「あのときは勇者としての自分に絶対の自信があった」

「自らの意志をまっすぐ貫いてたね」

「ハナヲちゃんはいつも優しい言い方するんだよなぁ。ハッキリ言っちゃえば、鼻持ちならないナマイキなヤツさ。正直な所、他の人たちが一等下の存在に思えてたのかも知れないし」


「そこまでゆっちゃっていーの?」

「今思うと完全に思い上がりだったと思うよ。ホントにボクは勇者って認められてたのかなってね」

「……心のゆとり、無さそう? 最近?」

「……」


 惟人(これと)は転生する前、――異世界で勇者コレットとして活躍してたとき、十代後半の青年やった。でも現在の彼は小学生。返答できずに口をとがらせ、目につく小石を蹴っているばかり。子供そのもの。


「とにかくここは異世界(アステリア)や無いねんから、お手柔らかにな?」

「ああ。……そうだね」



 日々お世話になってるスーパーマーケット前の道を通ってマンション前の公園に到着。そこにリボルトセンセがいた。


 あちゃ。案の定や。赤色灯がチラチラしてる。


 公園の前にミニパトがいて、数人のお巡りさんがリボルトセンセを囲んでる。モメてるわけではなさそうやが、明らかに職質隊形を組まれてるカンジ。


「リボルトさん、『本当はここで何してたの』って聞かれてる。早く行ってあげよう」


 惟人、耳イイねぇ!

 予想通り、ヤバいねぇ。


「いい? 行くよ」

「ああ。了解」


 わたしと惟人、呼吸を合わせて演技スタート。


「お父さん。待たせてごめん。待ち合わせ場所、間違えちゃった!」

「だいぶ待った?」


 わざとらしくお巡りさんたちを眺めまわす。ちょっと不審げに怯えを見せながら。


「……お父さん、どーしたの? 何かあったの?」

「幾らなんでも、ボクらの捜索頼んだんじゃないよね?」


 惟人、お巡りさんに振り返り、


「お父さん、何か悪いコトしたんですか?」


 「いえいえ」とお巡りさんらは即座に否定。


「待ち合わせでしたか。それは失礼」


 リボルトセンセに頭を下げながら、パトカーに戻っていった。

 よ、よし。助かったぁ。


「リボルトさん。カンベンしてくれよ、こっちまで恥ずかしい目に遭うじゃないか」


「いや、スマン。アイツら『ここで何してる』って言うから、ただボンヤリ子供らを眺めているだけだって答えたら『どうしてだ』と。見てて可愛いからなって話したら、とたんに様子がおかしくなった」

「そりゃ……。変質者って思われたんやって! きょーび言動には細心の注意を払わんと足元すくわれんねんで?」


 家路の足を止めるリボルトセンセ。あきらかにムッとした。


「そう言うがな。思ったことを素直に口にして何が悪いんだ? 学校の連中だってそうだ。この世界の人間はまわりを陥れることしか考えてないのか? ハナヲはそういうの、おかしいとは思わないのか?」


 あ、いや。

 そーゆー気持ちは痛く解かるよ。そりゃわたしだってさ。


「元いた世界じゃ、こんな仕打ちは無かった」

「アステリア?」

「あぁ、そーだ。もちろんあくどいヤツらや、腹黒い連中はいた。でも、この世界の様に陰にこもったイジメなんてものは無かったぞ?」

「うーん。そうゆわれると耳がイタイ」

「だろ? もうやってれんぜ」


 何の前触れもなく、リボルトセンセと向かい合わせになった惟人。深々と頭を下げた。

 いきなり立ちふさがれたセンセは「なんだ?」というカオで彼を見た。


「これまでナマイキ言ってたのを謝る」

「ど、どうした?」


暗闇姫(やみき)家で、アンタが唯一収入を得てたよな。アンタ独りに金稼ぎして貰ってたなと思って」

「……気持ち悪いな。いったい何が言いたい?」

「ボクがお願い出来る筋合いじゃないが、なんとか仕事見つけて、これからも暗闇姫家の家計を支えて欲しい。……頼みます」


 惟人はこれが言いたくて、ついて来たんか?

 小学生になってしまった彼は働くことが出来ん。そんで家を壊してしまった責任を感じてるに違いない。やから、こうして稼ぎ頭に詫びてお願いしてんのか。プライド高いクセにな。相当反省してんのやな。でも、わたしは許さへん。この際しっかり反省なさい。


 かたやリボルトセンセの顔色は、惟人の言葉によって変わっていた。きっと今日も就活がうまくいかんかったからやろな。


「リボルト。心配せんでいいから。あの、例の女生徒な、明日ちゃんと事情を学校に話してくれるそうや。『ウソついてました』ってゆってくれるそうや。やから、安心して!」

「ハナヲちゃん、それってホントウかい? よかったぁ。センセイ、良かったな」


 けれども彼は冴えない表情のまま。


「……学校か」

「どーしたん? ……喜ばへんの?」

「いや。……良かったよ」


 なら、いーけど。

 なんか引っ掛かるなぁ。


「もおっ。グズグズせんとっ。いつもの明るいセンセに戻ってや! さ、帰るで!」


 手を握ってやる。心なしかヒンヤリしてた。

 こうなったら大盤振る舞いや。両手で包み込むようにして、彼の両手を握ってあげた。


「ハナヲぉ……」


 ちょっとだけ元気なカオにもどった。




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