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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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11話 ハナヲ、目上を叱る


 悲劇はその夜、突然に。

 そしてそれは、起こるべくして起こった。


 いつかはこーなると思ってた。分かってた。それなのに。


 わたしもアホチンだよ。


 ――この日、(かんなぎ)リン試験官が帰ろうとしたところ、ベストなタイミングで惟人(これと)が帰宅した。

 何回も説明してるけども、たぶん忘れてるか、初見の読者ばかりやと思うんでしつこくゆーと、彼はれっきとした勇者。それでもって、(かんなぎ)リン試験官は、魔女っ子。そやからこれまた、れっきとした魔物の類。

 両者犬猿の仲ってか、本来のところ仇敵同士。それが鉢合わせってやつで。


 先に攻撃を仕掛けたのはリン試験官。

 視界に勇者(これと)を捉えたとたん、魔法の杖をひねって暴風魔法を炸裂させた。玄関のシューズボックスもろとも飛ばされた勇者(これと)は、玄関ドアに思いっきり身体を打ち付けた。


 しかしそんなのでは彼はひるまない。往時に比べ劣ったとはゆえ、そこは勇者。

 間髪入れず彼から放たれた火球がうなりを上げて、魔女っ子・リン試験官に直撃。


 そこは廊下の奥。ってーと、場所的には和室。

 リン試験官オキニの手提げと、畳ぜんぶが焼け焦げて消滅した。


 リン試験官、防壁(シールド)を展開しつつ、ふたたび反撃開始。

 玄関に通じる廊下全体が、瞬時に紅蓮に染まった。


「だあぁぁぁーっ!! もーヤメテぇぇ!」


 必死のパッチで叫び、制止を試みるも、先に手を止めた方が死を見ることになりそうな勢いやったもんで、急停止は不可能っぽかった。


「ルリさま! ボケッとしてんとなんとかしてっ!」


 ところがルリさまは課題の事でアタマがいっぱいらしく。まったく戦力外。

 わたしの出番しかないと悟る。


「やっめろぉぉぉ、アホチンどもおぉ!」


 剣と杖、久々の二刀流を現出し、ありったけ魔法を叩きつけた。

 目を丸くしたふたりは防壁ごと滅しかけ、同時かつ瞬時に攻撃を止め、わたしの眼前にヒザを屈す。


「ハナヲちゃん、さすが限定解除(ソルシエール)だね」

「ちゃう! 設定変更(オルディルシル・コンベルション)使って、上限排除を実行したんや。ゆってみりゃ、超限定解除(ディパセ・ソルシエール)や! てーか、そんなんどーでもいーわっ、アホチンがっ! 新築一年経たずしてもう我が家、廃墟ドーゼンになってもたやろっ」


 一か八かの設定変更行使はなんとか成功した、でももう手遅れやのよ。家ん中は目も当てられない惨状ですわ。

 壁はボロボロに剥がれ落ち、床はひん曲がって水浸し。さらに天井は黒焦げの穴あき。


「アンタらなぁ! どないしてくれんねんなあぁぁ!」

「ずびはせんでしたぁ!」


 ふたり、ヒザ打ち揃えて土下座の平謝り。


 そう、「あの」リン試験官も。いーや、試験官かビーカーか、なんか知らんけど、家壊していー道理はないやろ!

 何よりこの家、わたしがそれこそ死にかけながら得たお金で()うたヤツやねんぞっ。


 そこへ、スタバの持ち帰りコーヒーすすりながら階段を下りて来た「ドテラの女子」ひとり。シータンさん。

 

「……あらあら。にぎやかに運動会かと思ったら魔法大会ですか。それより早く晩ゴハンをお願い出来ませんか?」

「これが行事に見えるんやったら、晩ゴハンよりも眼科に行ってコンタクトレンズ頼む方がいいで!」

「あらあら。まぁまぁ。前回の後書きで調子に乗って、上手い事言おうと励んでますか?」


「あっ! これは正五位(しょうごい)さま! お疲れさまでございます!」


 土下座のはずのリン試験官がはじかれたように立ち上がり、緊張を走らせて最敬礼した。


「ん。ご苦労さま。(かんなぎ)従六位(じゅろくい)。新入生」

「従六位? で、新入生?!」

「ええ。今年、魔女入りしました。……何か?」


「つまり、ルリさまよりエラくて。……でも新人であると? しかしながら試験官だと?」

「……そーですけど? ……別にいいじゃないですか?」


「あ、いや文句があるわけじゃないし。でもちょっとそれで安心した」

「どういうことですか?」


 リン試験官に詰め寄ってやる。わたしなりの反撃。


「あいにくわたしは体育会系でなくって文化系出身や。上下関係のノリは分からへんし、分かりたくもない。従六位(じゅろくい)やからってエバっても、悪さは許さへんからなってコト」


「は、はい。べ、弁償しますから」


「子供にそんなんできるわけないやろっ。出来ひんことを『やります』とかカンタンにゆーの、大人の世界じゃ『無責任』ってゆーねんで? それよりも、『悪いと思ったら素直に謝る』、『二度とせんとこって自省する』、『相手への思い遣りを持つ努力をする』、そーゆーコトの方が、子供にとってはもっと大事ちゃうかとわたしは思う」


「説教くさ。立派な元アラフィフです。ズズズ」

「シータン。コーヒーブレイクで茶々入れんとってくれる?」

「コーヒーなのに、茶々なの?」

「ルリさま。どーにも役立たんタイミングで話の輪に入らんとってくれる?」


 わたしはショボンとしてしまったリン試験官に気付き、あわてて、


「ヘコまんといて。年端も行かん子をイジめるつもりは無かってんから。ヨシヨシな?」


 アタマを撫でてその場をごまかした。


「幼女を泣かそうとして、イタズラを企んでますね?」

「逆や、逆! 取りなそうとしてんの!」


 リン試験官がわたしの手を払った。


「ご、ごめんっ。触られてイヤやった?」

「やーいやーい。ロリコン少女」

「いちいち絡むなー、クソー」


 ウザさ五割増しのシータンに閉口する。


「わたし、幼女じゃありませんから」

「え?」

「わたし、暗闇姫ハナヲさんと同じく、『元』中年オヤジです」

「ええっ?」


 ごちゃごちゃモメてる渦中に、娘の陽葵(ひまり)が帰って来た。


「ただいまー」


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