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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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07話 リボルトセンセの受難


 学校をクビになったってどーゆーコト?!


 とりあえずリボルトセンセをリビング引っ張って行き、ソファに座らせた。


 落ち込み度合いが甚だしい彼。


 なあ、キミ、騎士称号、得てたでしょ? 明朗快活で華々しかった面影、まるで無しやで?

 天王寺の飲み屋すじでぽったくられて、しょぼくれてるサラリーマンと何ら変わらんよ。


 でもな、わたしだって動揺してんねんぞっ。


 なんでって、アンタのそんな、済まなさそうな、辛そうなカオ、いままで一度たりとも見たコトなんて、無かったんやから! なあっ?


「……事情、聞かしてもらおーか」


「……反抗的な女子がいたんだ、クラスに。授業に身が入ってないカンジで」

「それってただ斜に構えてただけやったんちゃうの。――で、それがどーしたん?」


「ビンタした」


「なっ?!」


「ビンタ、した。そしたらクビになった」

「ちょちょちょちょ、いきなりビンタ?! そこに至る過程があるでしょ? ちゃんと順番追って話してよ!」


 ――彼、リボルトセンセは、わたしの通う私立中学の体育教師。


 授業中、彼の説明をちゃんと聞こうとしない生徒がいた。カンタンに()っちゃえばヤル気が感じられない子。

 放課後、その子を生徒指導室に呼び出して理由を聞きただしたそうだ。


 そしたらその子、「先生キモイから」って答えた。


 リボルトセンセは「キモイって思うのは自由だ。思っててもいーから、授業の説明はしっかり聞いておけ。でないと思わぬケガをするかも知れんぞ」って諭した。


 そしたらその子、こう返したらしい。


「『例えばどんなケガよ?』 って。だからオレは、ねん挫とか、ボールでカオを打つとかって例えを出したんだ。そしたら『そんなの自己責任じゃね?』って」

「うーん。まー自己責任ってたらそりゃそーだけど、でもいざ生徒がケガしたら、親は教師の責任だってキレて学校に怒鳴り込むよね?」


「あーそーだな。でも、そんな問題じゃない。とにかくオレは、生徒たちに痛い思いをしてもらいたくないんだ。だからそう言われて、ちょっと頭に血が上って……!」


「ビンタしたんか?! 短気やな!」

「ちがう! 肩に手を掛けて軽く揺さぶったんだ。すると素直に『分かりました』って」

「……ナットクしてもらえたんや。……ヨカッタやん」


「ちがう!」

「ちがうんかいっ?!」


「話が終わって部屋を出た後、すぐに校長室に呼ばれて。『えー。キミ、生徒に不適切な行為を働いたね?』と。校長、教頭、学年主任に詰め寄られた」


「ふてきせつな、こーい……」

「分かりやすく言うと、婦女暴行だ」


「行き過ぎやーっ、《セクシャル・ハラスメント》な?! いちおう、そこはより正確性を求めて言い直しとこ」


 校長はリボルトの目の前にスマホを置いた。その生徒の物だ。遣り取りを録音されてた。それを流された。以下、リボルトの記憶による再現。


『どうして言うことを聞かないんだ。痛い思いするだろ』

『センセイ、キモイ……』

『キモイって思うのは自由だ』

『分かりました……』


 うっわ。


 思いっきし編集されてるやんっ。

 完ぺきにハメられてるやーんっ!


「その場で当分の間の自宅謹慎を言い渡されて廊下に出たら、その生徒が聞き耳立てて笑ってて。『きょーび生徒とイチイチで部屋に入るとか、セキュリティ甘だね』って。思わず肩をつかんだら、ビンタされた。『センセイにビンタされた』って叫ばれながら」


「センセ、ビンタしてへんやん!」

「してへん、です。はい」


「逆にビンタされてんやん!」

「逆にビンタされてんやんです。はい」


「……いちいち関西弁でオウム返ししんとってくれる? ――リボルトセンセ、濡れぎぬやろがっ! それで、クビやゆわれたんか?」

「……うん」


「うんやないやろっ! もっと自己弁しなアカンやろっ! しっかりしなアカンやろっ!」


 家電(いえでん)に駆け寄ったわたしは、鼻息荒く学校に電話した。


「もしもし! 一年の暗闇姫(やみき)ハナヲです!」

『おー、暗闇姫か。こんな時間にどーした―? 忘れ物かぁ?』


 担任!


「ちゃいます! わたしんトコの……えー……」


『なんだー、ちゃんと要点整理してから掛けて来いよー? 分からん問題でもあったかぁ? 明日ちゃんと聞いてやる。働き方改革でなぁ、先生も戸締りしてさっさと帰らなきゃなんないんだ、だから切るぞー?』


「わっ。こ、こらっ、だから! わたしんとこのダンナがクビになったって、泣いて帰って来たんです! いったいどーゆーコトか、説明して欲しいんです! 一方的に事情聴取したそーやないですかっ、ダンナの言い分もちゃんと聞いてあげてくださいよっ! でないと……!」 


 ツーツーツー……って。


「切れてる――――! アッホちいぃぃぃんんん!」


 もう一度掛け直してやる。


 ……るすでーん!


「く……」


 あのクサレ担任ヤローめっ。


 しくしくと、男のすすり泣きが聞こえて来た。


「リボルトセンセ! なにオトコが泣いてんねん! しっかりしろっ!」

「ハナヲが……オレのために一生懸命怒鳴ってくれて……それがとても嬉しくて……」


「……あ、ま……それは……!」


「それにオレの事を《ダンナ》って……」


 あ。聞き逃して、それは。頼む。


「もう、そう落ち込まんとき。アンタは何ひとつ悪いコトしてへんねんから、堂々と自己弁護主張したらえーねんし」

「ハナヲぉ」


「人生こーゆーときもあんねんって。とにかく今夜はおいしいモンでも食べてさ、明日、わたしも職員室に乗り込んだるから、な?」

「済まない。ハナヲ」


「謝らんでいい。ゆってるやろ、リボルトセンセはちっとも悪くない」

「ハナヲ。オレ、この世界が怖いよ。元の世界に戻りたいよ」

「落ち込むなっ。後ろ向きになんなっ」



 それまで背景に沈んでいるかのようやったルリさまが、ボソッと。



「ハナヲー。出掛ける時間、ダイジョーブなの?」



 わあああっ!


 そうなんや、駅に行くんやった!

 約束まであと十分!


 なんてことなんやあっ。





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