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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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06話 魔女試験官、来たる


「ハナヲ、約束したよね? 今日はゼッタイに早く帰って来るって?」

「そんな、約束……って。けどな、雨降ってたし、傘が無かったし……ってか、魔女登録とか、なんで勝手に決めちゃったんって?」


 するとルリさま、わたしの肩に両手をのせ、ジッと見つめ。


「あのね、ハナヲはね、優柔不断すぎるの。自分で物事を考えられなさすぎるの。だから、わたしが正しい道にしっかり導いてあげなくちゃならないの」


 アレ? わたし、お説教されてる?

 もしくは言葉通り、心配かけてる?


「そ、そんなコトゆわれたって……」


「じゃ聞くけど、魔女登録のコト、ちゃんと考えてくれてた? 明日は用事あるって、いったいどんな用事なの? 自分の将来、ちゃんと考えてるの? いったい自分がナニしたいのか、何になりたいのか、真剣に考えてるの? 毎日ただボンヤリ過ごしてるだけじゃないの? わたしはあなたを見ていると不安で仕方ないわ」


 お、お母さんっ?

 ルリさま、お母さんになってるー!


「い、いや。……わ、分かったよぉ。その試験官の人って何時に来るの?」

「夕方の五時きっかりに。(ここ)に。学校は大丈夫?」


 学校? は、問題ないよ。


 それより。


 キョウちゃんとの待ち合わせは夜の九時。


 うーん。……間に合うよね?


「う、うん。いーよ、だいじょうぶ」


 ルリさま、ヒマワリが咲いたような笑顔してる。

 思わずドキドキした。


「一緒に合格しようね!」

「……ウン」


 ……優柔不断、か。

 わたし、神域レベルなのかも。




  ・・・    ・・・    ・・・




 インターホンが鳴ったのでモニターを覗くとと、小学校低学年と思しき女の子が立っていた。

 もうすぐ試験官が訪ねてくるってのに宗教の勧誘か。どーせ後ろで親が隠れてるんやろ?


 応答せずにいたら、ソファで寝ていたルリさまが突然飛び起き、わたしの横をすり抜け、ダッシュで玄関を開けた。


「お待ちしてました。登録番号二〇二二のココロクルリです。それともうひとり、中に今回新規登録を目指し、わたしと受審する暗闇姫(やみき)ハナヲと言う者がおります」


「はい。エントリーシートで伺っています。ココロクルリさんと……暗闇姫ハナヲさんですね。わたくし、魔法管理局、登録審査室の(かんなぎ)リンと申します」


 丁寧な挨拶とともに差し出された名刺を押し頂く。


「あ、あいにく今名刺は切らしておりまして……」


 ……しまった。つか、作って無かった。

 昔、サラリーマン時代にはしょっちゅう名刺交換(こんなコト)したなぁ。

 ふたりで顔を寄せ、名刺を覗き込む。


「かんなぎ……」

「リン、で結構です」


 黒が基調のヴィンテージ風ワンピースに、大きめのトートバッグを肩掛けしていて、まるで《エエとこ》の学校に通う家庭教師(カテキョ)の女子大生みたいで、いかにも有能な魔女然としていた。けども、どう見ても、小学生の女の子。


 いや、でも。


 ナメてたらどんなしっぺ返しを受けるかも知れない。なんせ、《あの》ルリさまが、一生懸命愛想笑いをつくりながら居間に案内しようとしてんねんもんな! これは空恐ろしいコトだよ?


「もうすぐリボルト先生たち帰ってくるやん? わたしの部屋、行く?」

「そ、それもそうね。あの、どうぞ。むさくるしいウサギ小屋の汚い部屋ですが」


 ウサギ小屋!

 昭和ぶりに聞いたわっ。てか、人様の部屋をなんて言いようや。


「――では、まず最初に適性検査をしますね?」


「キミ、ノドとか乾いてない? 麦茶やったら冷蔵庫に冷えてるよ? それか、お茶苦手かなぁ、アレルギーとか? あ、スカートしわくちゃになるから地べたやなくって、ベットに座って良ーからね? いーよいーよ、遠慮せんといてな。うん、そう。えらいな」


「……は。どーぞお構いなく」


「コラァ、ハナヲっ! この人は小学生じゃないのよっ、立派な試験官さんなのよっ。子ども扱いなんてしたら失礼でしょ! ……あ、ごめ……失礼しました!」


 リン試験官は「いいんですよ」と言いながら、わたしに相対してイミフな呪文を唱え始めた。


『メイ、マノナ、ヒトリトヨ、イテソーンイ、ソロミトミト……』


 いきなりかー。メッチャ事務的だー。


 ――何されるんだろ。聞きなれない文語だし。

 そー思ってたら胸のあたりがムズムズして来だして。


「……え、ナニ? なんやの? ――げっぷ!?」


 胸で発生した《つかえ》が徐々にこみ上げて、ノドに到達し。


「う……うはっ!」


 ポポンッ!

 口から異物が飛び出した。とっさに手の平で受け止める。


「ナニコレ?! に、人形?!」


 それは、人の形をした《ミニチュア模型》。


 ……って、おっさん?! てかこれ、わたしかっ?!


 ――ねんでろな《アラフィフ・わたし》! やの!


 ※ねんでろ:某メーカー作製のデフォルメ・フィギュアのもじり



 ほぼ二頭身フォルムで可愛らしくデフォされてるけど、イケてないのはイケてないしっ! わたしなら千円もらっても要らないって即答するわ。



「え?」



 今の疑問符を発したのはわたしじゃなくって、リン試験官。

 《ねんでろアラフィフ》とわたしを交互に見比べて、目を丸くしてる。


「……な、なにか?」


 恐る恐る、聞く。あまりの変態ぶりに引いてる? とか?


「……い、いえ。なんでもありません。えーと、その人形は、暗闇姫ハナヲさん、あなたです」

「それは、分かってマス」

「あなたの分身ですが……」

「だから、分かりマス」


 試験官が人形にカオを近づけて話し掛けた。


「あなたは何歳ですか?」

「かつては四十六歳」


「性別と住所、職業を教えてください」

「性別は元男。今の住所は東大阪。職業は学生」


 うわわっ、ねんでろオジサン(わたし)がしゃべった!


「元というのは? 今は違うということ?」

「一部について、今は違うということ」


「では、現在のあなたは?」


 しばらくモゾモゾ蠢いたおっさんが、女の子に変身した。

 あ、わたしや!


 今度は今日のわたし。暗闇姫ハナヲ。


「暗闇姫さん、あらためて質問します。あなたの年齢は?」

「じゅうさん」

「性別は?」

「女」


「男ではないの?」

「女。正真正銘の女やで」


 リン試験官は《ねんでろハナヲ》と会話を続けている。それをボーゼンと眺めるわたし。


「使える魔法は?」

「設定変更」


「どうやって使うの?」

「こうやったらいいなぁって願うねん。強く思えれば発動するねん。でも失敗も多いねんけど」

「なぜ、失敗するの?」

「発動先の対象物が強固やったり、拒否ってたら、上手くいかへんねん」


「他に使える魔法は?」

「火球。でも恐いから使わない」


 質問にテキパキと答えるわたし。自覚してない事柄も饒舌に話してる。あらためて「そーやったんか」と得心できた部分もある。


 でも。


「試験官! ハズイ! もーヤメテぇ!」

「概ね理解分かりました。後はあなたをCTスキャンしてお終いです」


「まだ、なんかするん?!」

「いえ。もう終わりました。スキャンはわたしの得意魔法ですから」

「……あ、そ、そーなん」


 ちょっと早口になってる? キモい相手との会話を終えたがってるんかな、この子も?


「まず、あなたは魔女としての資質があります。幼少期からその兆候があったことでしょう。そして、以前に交流もしくは接触などをした魔力保持者(マージ)の影響を受け、現在、少なくない魔力を内在させています」

「はぁ、はい」


「適性検査の結果、あなたは魔女(ラマージ)申請が可能と判断されます。課題については明日また訪問したときに決定します」


 そう言うと、もうあなたには用事がないとばかりに、今度はルリさまに向き直った。

 明日? また、明日も来るん?


「あ、あの……」

「はいっ! なんですかっ? 暗闇姫さん! どーかしましたかっ? ご質問ですか?」


「……あ、いえ。べ、別に」


 めちゃ反応はやっ。


「そうそう。あなたは、もうオジサンなんかじゃありません。完全に女子化してます。魔女(ラマージ)になる条件は整っています。その点もご安心ください」


「は、はい」


「……ところで、暗闇姫ハナヲさん。あなた以前は東京に住んでいましたか?」

「はい?」


「住んでいましたね? 東京に」

「は、はぁ。杉並に」


 だから、何やの?


「以前勤めていた会社は楽しかったですか?」

「は? はあ……。どーやったかなぁ」


「《楽しかった》ですか?」


 な、なんか、コワイ。


「……ええ。まぁ。お世話になったし……。そ、それが、何か?」


「……あ。ごめんなさい。もう結構ですよ」


「は、はぁ。(かんなぎ)さん、今日はアリガトウございました」


 頭を下げたあたりで、玄関で開錠音がした。

 誰かが帰って来たんだ。


「もう帰って来ちゃった? 惟人(これと)くんとかだったらメンドくさいなぁ。試験官、済みませんが早回しでお願いします」


 巫さんはそうお願いするルリさまを無視し、わたしに熱い視線を送っている。


「あの? 巫さん?」


「暗闇姫ハナヲさん。さっそくわたしの名前、覚えて頂き光栄です」


「へ? いえ、そんな。じゃ次回に」

「はい。次回に」


 ニコニコしだした(かんなぎ)試験官。

 愛想いいなぁ。……わたしには。


 逆にルリさまは、ブスッとして、


「試験官! 今の相手はわたしですっ」


 返事なし。


「試験官!」


 やはり、反応なし。わたしとにらめっこ状態のまま。


「巫リン試験官!」


「黙れ! ツインテ!」


「……え?」


「――あ、いえ失礼。余計な話をしました」



 いまの「黙れ、ツインテ」って、……巫さん……だよね?

 しかし何事もなかったようにルリさまにニコリとしたので、こわばりかけたルリさまのホッペも、元通り和らいだ。……カン違いやったかな?



 見送りに玄関ドアを開けると、リボルトセンセが恐ろし気なカオして突っ立っていた。



「わっこわっ! さっき帰って来てたの、センセイ?」

「ああ」


「元気ないけど? どーかした?」

 

 試験官と入れ違いに、彼を家の中に招き入れた。

 しゃーなしに腕を引っ張った手に、手を重ねられた。


「ちょ……。ホント、どーかした?」



「オレ。先生、クビになった。……ごめん」




「……え?」



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