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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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05話 冥界バイトのお誘い


 駅前にはほとんどお店が無いんやけども、唯一気を張っているドーナツ屋さんが、町の《オサレ》スポットを一手に引き受けてくれていて、そこに連れ立って入った。


 ――彼、キョウちゃんこと、ヒラ・ノリツネくんとカウンター席で隣り合うと、彼の右肩がちょいちょい当たってくるので情けないことに、つい夢心地になった。


 ……いやいや。

 アンタらから見たら異常なんはイタイくらい承知してるよ? ……けどな、どーしようも無いんやって。心臓バクバク、ほっぺはカッカして、足元だってフワフワのフラフラなんやから仕方ない。元オジサンって言われても関係ないし。なんでって、わたし、すっかり女子化してんねんからな。


「ハナヲちゃんのそれ。オールドファッションとポンデリング、だったっけ。おいしい?」

「あ、ウン。おいしーよ?」


 ……うひー。けどさ、ちっとも味しーひんねんけど。悪いけど、食を楽しむどころやないんやって。


 わたしはキョウちゃんのチラ見が止められなかった。あっちの世界じゃ、彼はだいたい鎧のような服を着ていたか、寝間着姿かやったんで、普段着ってか、街中で着るような服装はほとんどお目に掛かれずやったモンで、よそ行き姿の彼に、カンゼンにくぎ付け状態になってもーた。


「いまさらだけど。……あのときはゴメン。君を置いて部屋から居なくなってしまった事、本当に申し訳なく思ってる」

「何回も謝らんといて。だってあんときはカノジョ……、あ、いや、キョウちゃん気が動転してたんやから」


 今の時間、店内には学校帰りの生徒らがチラホラいるが、皆テキストやらノートを開いている。このあたりの公立は来週から中間テストなんかな? うちは先週終わった。意外と好成績が取れたんで良かった。


「テストか。どうだったの? ハナヲちゃんは?」

「え、中間? へへ、なんとか全教科平均点上回れたよ? 国語はクラスで一番取れたし」

「すごいんだね、ハナヲちゃん」

「てへへ」


 他愛のない会話やのに、この楽しさったらなんなん? 外を走る車が水しぶきを飛ばしてる風景が、まるで別世界の出来事のよう。

 それから学校行事の事、担任の事、教室で流行ってる話題とかなんかを時間を忘れてキョウちゃんに語って聞かせた。いつの間にか雨が上がり、強めの日光が店内に差し込んでいるのも、店員さんがブラインドを閉めてくれるまで気が付かんかった。


「そろそろ戻らなくちゃ。また次、いいかなぁ?」

「ごめん。一方的にしゃべりまくってもーて。……なんか用件があったんとちゃうの?」

「まあそうだったんだけど。……でも別に次でもいいかなって。そしたらまた会える口実が残せるでしょ?」


 ぐっは。キョウちゃん、その言い方は強烈やで! それはダイレクトにハートを打ち抜くって! けども、その用事ってゆーのが急に気になり始めた。なんでかってったらさー、次に会えるのがいつなのか、それを知りたかったから。……そう、期待値の具体的把握、な?

 気になるし、教えて欲しいと懇願すると、彼はわたしの耳にカオを寄せ、囁いた。


「冥界で働く気ない? ハナヲちゃん」

「へっ? 働く? 冥界で?」


 冥界での仕事と聞いてすぐにアタマに浮かんだのは防人(さきもり)稼業。《蜘蛛の糸》を伝って押し寄せた亡者らを、力づくで排除する、命がけの仕事だ。


「いや。もうその仕事はないよ。イヤなこと思い出させちゃったね」


 無くなったのは知ってる。……でも、じゃあ何なの?


「サラさんの事務補佐をして欲しいんだ。彼女ちかごろ過重労働気味でさ。冥界にも《働き方改革》の波が押し寄せてるんだ。……どーかな?」

「なんだかメチャリアルな話やね」


 ……うーん、でもわたしまだ中一やし、この歳で就職かぁ。それってどーなんやろか?


「あ、もちろんいきなり難しい仕事は頼まないよ。まずはアルバイトから。職業体験のつもりでさ。どう?」

「職業体験かぁ。うちの学校も来週から順次、それするってゆってた。……分かった、キョウちゃんの頼みだもん、わたし、すごくやってみたい! ぜひやらせて!」

「ありがと、ハナヲちゃん。それじゃあ来週からでも……」

「なんなら明日からでもいーで?」

「わ、分かった。じゃあ、明日の夜九時、ここの駅前でまた会おう」

「りょーかいっ」


 二つ返事で約束してもた。でもま、いっか! いったん決めたら、なんかすごくワクワクしてきた。こぐ自転車の軽いこと、軽いこと!


 ああ、有頂天ってこのことやー。






「……アレ? ルリさま? どーしたん? 家の前でボケっと?」

「ハナヲー! あなた早く帰るって約束してくれてたじゃない! 遅いよぉ」

「あ。ごめんごめん」


 忘れてた。そんな約束してたっけなぁ? なんて思ったんだけど、「雨でね」と言い訳した。腕を引っ張る彼女に急かされ、家の中へ。そのまま部屋になだれ込んだ。


「ハナヲ! わたし手続きしといたからね」


「ん? 手続き? なんの?」


「あのねぇ! ハナヲの新規登録手続きに決まってるじゃない!」

「新規、登録……?」


「そうよ。魔女登録するのよ! わたしの更新手続きと一緒にしよっ」


 へっ?

 そんな唐突な。


「明日の夕方に審査員が来て課題決めするの。さっそく作戦会議よ!」

「ち、ちょっと待って! そんなの勝手だよ! 明日はわたしむり、ムリだからっ!」


 えっ? と、ルリさまがフシギそうなカオをした。



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