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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
さんきっ 元アラフィフ魔女っ子およびに異世界チート魔女っ子、ことごとく#下流魔女

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04話 思いがけぬ再会


 漢字の小テスト、まずまずやった。ま、元大人やし、ある程度出来て当たり前か。ただ、『溺れる』って漢字がどーしても書けんかったんやけどもなぁ。



 帰りのホームルームで、担任から個人面談の案内が配られた。


 なんやって? へー、『自分の将来を考えてみる』? ってメチャ重っ。


 ああ、そっか。わたしんとこは便宜上リボルトセンセが保護者になってんやった。ややこしい事態にならんきゃいいなぁ。……彼には黙っといて、当日急用で来れへんかったってコトにしようか……。


 ……いやいや! できっこないし! アヤツは学校(ここ)のセンセーやし、即バレやって!


「いいかぁ。いい機会なんだから親とちゃんと会話して書けよー? 親メールしとくからなぁ。誤魔化しは通用せんぞぉ?」


 うひーっ。きょうびはSNSとかって難儀なヤツもあったんやった。昔、子供んときはそんなの無かったのにィ。……って、いまも子供やっ!


「いいかぁ。おまえらの将来だ。まだ中学生だからってノンビリ思ってたら、すぐに大人になっちまうぞー。今からちゃんと考えるクセをつけとけよー、いいなー?」


 けだるげながら、しっかり指導者らしい言葉を掛けてくれる、「いいかぁ」が口グセの、実質年下の担任。お仕事ご苦労さま。


 ……フーン、将来ねぇ。そーやんなぁ。

 けどもさー。いくら何でもまだ中学生だよ? 早すぎない? わたしが中学の頃なんて、アオバナ垂らしてガリガリ君かじりながら昼寝してたよー。……いや、そこまでは無いか。


 ……あ、またさっきと同じ思考してた。

 いまも、中学生なんやって!

 


「ねーねー。《将来の夢》の欄。なんて書くの? 暗闇姫(やみき)さんは?」


 後ろの席の女子。最近よく話しかけて来る子。やけど、名前を覚えきれてない。メガネを掛けてるから、普段は《メガネちゃん》と心中で呼んでいる。


 わたしは《マンガ家》と書きかけてたのを消し、《地方公務員》と修正したのを見せた。絶妙に微妙なカオをした彼女の方は、わたしと違って中学生らしく、素直に《マンガ家》と書いた自分の紙を見せてくれた。


「暗闇姫さんって。前に林間学校のポスター描いたときにすっごく上手かったから、わたしてっきり……」

「そ、そうやったっけ?」

「ゼッタイ同人活動やってるって踏んだんだけどなぁ。……やってないの?」


「うーん、ごめん。今のところは」

「今のところってコトは、今後するかもってコトだよね? また声かけていい?」


 積極的な子やなぁ。それに自分の夢を包み隠さず、しっかりと持って、そっちに進もうってしてる。それに比べてわたし、ダメダメだぁ。二度目の人生ってのに、ちっとも前向きに生きられてない。


 さて。人生とはなんぞや。

 青春は、一瞬のキラメキ。希望や情熱を失った時に、人は青春を終わらせる。確かにそーやんなぁ。ごもっともやんなぁ……どこぞのダレの言葉やったっけ? えーと、えーと。


 ――ああっ!

 重いって! もうちっとラクーにモノゴト考えれんかな?


 帰りがけ、職員室に日直日誌を持って行ったら、階段とこでリボルトセンセに出くわした。

 彼はさすがに外では先生と生徒で通してくれるが、今日は会うなり俊敏に寄って来て、こう言った。


「個人面談、どうするんだ? ハナヲ」


 はいはい、やはりそれですか。


「ちょっとォ、こんなとこで。家で作戦立てようよ」

「何言ってるんだ。オレはハナヲの保護者だって、周りの連中はみんな知ってるだろ? コソコソする必要なんてないんだぞ?」


 うん。保護者な。そーやで? 保護者な! ただのな。


「そーそー、分かってんけど、イヤなんやって。ガッコで話しかけられんのは」


 不服そうな、悲し気な表情を浮かべたリボルトセンセは、「じゃ今夜な」と言い残し階段の方に消えた。ふぅ。……やれやれ。帰ろ。


 こないだの《防人(さきもり)》事件からこのかた、どーも気合が入んないのは何でなんやろ? すっごい身体が気だるいってか、どーもどんより曇ってんねんなあ。


 電車に乗り、数駅を経て乗り換え。地下鉄から地上に出たところの駅あたりでポツポツ……と、車窓の外側に雨粒が当たるのが見えた。

 やられた! 置き傘、持って帰らんかったしぃ。


 最寄りの駅で、いつもなら自転車に乗り換えるところが、ホームから空を眺めると、結構な降水量だこと! とてつもない躊躇を覚える。待合所でリボルトセンセの帰りを待とうか……とも考えた。


 ざんざん降りの西の空の果ては若干雲の切れ間があるので、いよいよ《待つ》という選択に傾きかけた。

 改札を出て、すぐのところに置かれたベンチで待っていれば、来駅者の様子から雨の状況も垣間見れるし、帰路のセンセも捕まえやすい。そうすることにした。


 決心を固めてベンチに腰を下ろしかけたとき、乗降口の雑踏に紛れた中に、思いがけない人を発見した。


「やぁ。ハナヲちゃん。学校の帰り?」


 ドキンと胸を打つ。


 やっぱりキョウちゃんだった。


「な、なんで……こんなトコに?」


 再会なんて期待してない、どころか、過去の想い出と化しつつあった相手が目の前にいる現実にわたし、しばしボーッと情けないカオを晒したやろうが。

 彼の「だいじょうぶ?」との気遣いする声掛けに「わッ」と正気に返り、ひくつく頬を必死にさすりながら笑顔をつくろうと一生懸命に。


「今はもう東京に住んでないんだね、少し慌てたよ」


「キョウちゃん。……ひ、ひょっとして、わたしを探してくれてたん?」

「まぁね。……ハナヲちゃん。時間ある? ちょっと付き合ってくれたら嬉しいんだけど」


「は、は、は、はひ。――べっ、別にいーけど?」



 なんて舞い上がり方してんの。かなーり大丈夫くないな、わたし。



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