㉑最終回―10年後―
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメ!
最終回のはじまりー。
2023年11月13日追記:ブクマ161件目感謝イラスト追加しました。(文末)
2024年5月3日追記:ブクマ剥がれてました。ハズイので削除しときます。
最終回、感謝!
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アステリア公領はここのところの豊作と、王都ヘルムゲルトとの協約で仇敵パヤジャッタの野望が封じ込められているおかげで、安寧の日々が続いている。
現在わたしが暮らしてる家、首府レイシャルの一角、職人街にあるシータンの家も、そんな天下太平の恩沢に浴し、平々凡々な毎日。
「オヤ? 今日は講義が無いんですか?」
作業場で、シータン家専属メイド(※位置付け不明)のカエさんと工作していると、昼近くまで寝てたシータンがボサボサ髪で現れた。ふたつみっつ連発のあくびで隅の氷冷庫を開けて閉め。
「ヒマなんだったら実家の冷蔵庫あさりに行ってください」
このわたし。
暗闇姫ハナヲは日本の義務教育をどーにか卒業した後、異世界アステリアの魔法学校にギリ合格。
5年の修練を積み、ついについに2年前、憧れの教員(の端くれ)になれた。
「ヒマなワケないでしょ。午後の授業で使う模型を造ってんやって! 見てワカランかなぁ」
「ワカランですね。何ですか? このワッカは」
「車輪や! 4輪車! ホントは飛行する物を作りたいやけど」
「ああ。コレひょっとしてラジコンカー……のつもり、だったんですか。ケタ違いにブキッチョな先生です。お手伝いするにも限度があります。行き詰ってアタマを抱えておりました」
カエさんまで、んなコトゆう?
しゃーないやろ。
手先の器用さは、持って生まれたセンスと、たゆまぬ精進が積み重なったもので。しのごの。
「言い訳無用。シンクハーフさま、手伝ってあげてくださいな」
「フーム。日本にあったラジコンカー。あんなイメージの物が作りたいんですか?」
「そう、それ! ドローンみたいなのとか。要はな、生徒たちにチョコマカ動く的を提供してさ。魔法光を当てる練習をさせたいねん」
「それならそうと、先に相談して欲しかったです。この超天才・超美少女科学者のわたしがもろ肌脱いでお手伝いしましたのに。――チョコモナコジャンボいっこで」
チョコモナコジャンボ、ねえ。
食い意地張ってるなあ。有難い申し出デスガ。
「アリガト。――あーでも、やから実家行きにくいねんて」
「新婚さんの家にはオジャマしにくいと?」
「う、……うん。まぁそう」
「確かにわたしもそーですが」
――実家ってか、かつてわたしが住んでた東大阪の暗闇姫家ね。
実は3年ほど前から、惟人が世帯主になってて。
陽葵とふたりで新婚生活してるんだよね。
チョー絶うらやましいよね。
って。ナニわたしが照れ解説しなきゃなんないんや?
「――で? ココロクルリはもう出掛けちゃったんですか?」
「うん。今日は一日休みやからってコハルちゃんを連れていつものところに」
「そうですか……。あの子も毎日熱心ですね」
などとバカなやり取りの後、それから所要1時間の急ごしらえで球体のラジコン飛行物を組み立ててくれたシータンは、わたしの握ったシャケ入り巨大オニギリを嬉しそうに受け取った。
ギブ・アンド・テイクここに成立。わたしも目標達成でゴキゲンだぜ。生徒たちの喜ぶカオが目に浮かぶ。
「シンクハーフさま。見送ってる場合ではありませんよ? シンクハーフさまも本日授業がございます」
「はてな、そうでしたっけ? ハナヲ、わたしも出掛けます。見捨てないでください」
ここからだと魔法学校は案外近いねん。
最短ルートなら10分もかからんし。別段急ぐ必要ない。
「せっかくやし寄り道しよ? ルリさまの様子を見て行こう」
最近カエさんが縫ってくれたハンテンがシータンとおそろで、近所で【ゲキメダチ姉妹】ってウワサがあるらしい。何で美少女姉妹とか美人姉妹やないのか。それかもしかして変人姉妹って意味ならサイアクやな。
そのオソロ着のシータンに手を引かれて路地に出た。
いったん大通りに出て、一つ目の細い辻を曲がったところ。
徒歩1分のとこに噴水広場があって、取り巻くように彩鮮やかな露天商が軒を連ねてひしめいている。
人の行き来とザワザワした喧騒音が半端ない。
ジャガバターっぽい匂いにつられそうになるのをグッと我慢して走り抜ける。
そこを過ぎると今度は一転、閑静な住宅エリアに差し掛かる。
このあたりは、アステリア公領首府レイシャルに出仕する貴族の家々が建ち並んでいる。
ちなみに以前、リボルトセンセと暮らした豪邸もある。
高級住宅街のメイン通り、その入口あたりにひっそりと小さな花園公園があって、ルリさまがいっつもいる。彼女は日課でそこに通っている。
で、今日は一人娘も連れて来てるとゆーワケだ。
彼女の目的はただ一つ。
転生したポーくんを見つけるコトだ。
子々孫々、アステリア創成期から有力魔力保持者を輩出しているご家庭を探索し、彼と思しき人物を発見しようとしているのである。
だけどこれが想像以上に困難で。
何せ相手は貴族やし、まず、なかなかお近づきにもなれんし、警戒もされる。
公務警察の職員に職質受けたりとか、住宅街の私設警備士と揉めたコトもしばしば。
不良貴族にかどわかされそうになったコトもあった。
いまはリボルトセンセや漆黒姫、それに領主スピアさまにも助力してもらってこの花園での張り込み自体、公認を頂いた。だけれども特に何の手掛かりが得られたわけでなく、徒に年月が経過している。
その間何度も冥界に問い合わせたり、懇願書の類、要するには【ヒント】をくれや! って手紙を書いたり、ときには惟人を通じて直接嘆願したものの、【個人情報保護】の観点から一切の受付を拒み続けられているとゆった状況。
後に残された手はこうして地道に、こまめに張り込み場に通い詰め、生まれ変わったであろうポーくんを待ち伏せして見つけ出すしか無い。
「コハルちゃーん。お弁当持ってきたよー」
「はぁ。わたし、コハルじゃなくってココロクルリだから。……あの子はあっちよ」
ルリさまの指す先で談笑する一組のアベック有り。
「うわ。小学生アベック発見」
「アベック言うな。あなた昭和生まれなの? コハルさっきからわたしのコトほっぽって、見ず知らずのヤローとイチャコライチャコラ。よろしくやってるわよ!」
「あらあら。ココロクルリ、ゴキゲンナナメですね。なんなら、あなたもたまには若人たちの会話に混じれば良くないですか?」
それはわたしもそー思う。
なんせ正直、ルリさまと、ルリさまの一人娘、コハルちゃんはホンットに瓜二つ。
魔女っ子って、見た目の年齢メッチャ幼いから、数歳差の姉妹にしか見えんし。
「ハナヲもわたしも容姿がお子ちゃまですからね。大人の恋愛をたしなむにはだいぶと道のりキビシイですね」
「ほっとけ」
シータンとルリさまを捨て置き、詮索大好き世話焼きオバサンのようにコハルちゃんに大接近。
ふむふむ。実に楽しそうですな。
オバ……おねーさんにも話を聞かせなさい。
「やあやあ、コハルちゃん。今日もいい天気やね」
「あ、ハナヲ! この子、先週から魔法学校に通い始めたエドガーくんだよ。エドガーくん、この人は日本国出身の魔女、暗闇姫ハナヲさん! 魔法学校の新任センセー」
エドガーくんとやら、大きく両手を広げて歓迎のポーズであいさつしてきた。
「おおう、これは素敵なお姉さん! コハルちゃんのお友達で、さらには僕らのセンセーですか! とってもキュートな女の人ですね! 僕も友達になりたいです!」
はあ?
コイツ相当なナンパ師やで?
「コハルちゃん。おかーさんが呼んでるよ。お弁当一緒に食べよう」
「わーお! 僕もご相伴したいなぁ。コハルちゃん、いいかな?」
キレろ、コハルちゃん。
こんな軽ーいオトコはきっと、大人になったらトンデモナイ浮気ヤローになるで?
「いいよー。一緒に食べよう」
な、なんですと……?!
ジトジト、改めてオトコを眺める。
いやさ、オトコっちってもまだ10歳くらい? 将来有望、かなりのイケメン素質有りやがまだまだガキんちょやし、眼中無いしどーでもえーんやが、このまま見過ごせば、いくない事件が起こるよきっと?
だって。向こうでルリさまが不快さ全開でガン飛ばしてるしさ。
「ハナヲ。時間だいじょうぶですかね?」
時間? なんの?
「あっ! うわあああ?!」
わたしはノンビリモードのシータンの背中を押し、魔法学校に急いだ。
【黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~】
これにておしまい。
これからも仲良し
追加(移設)
新作の1話に掲載したもの
レギュラーキャラ(花園ラグビー場にて)
2019年2月3日。曜日不明。
「黒姫ちゃん」第1話の投稿日です。
その数年前に投稿していた幾つかの作品は、色々あってすべて削除してしまって。
自分なりに模索して考えて。リベンジのつもりで再開した、その第1作目でした。
だけど出だしの20話くらい訪問者もほとんどなく、ブクマも評価も皆無に近かったです。
そしてある日、活動報告にこう書きました。
「まず読んでもらうには、どーすりゃいいですか?」
すると、書き手側の方々が優しい言葉を、アドバイスを、してくださいました。
そのとき、どれだけ当時のわたしが救われたことか。
もしそんな優しさに、親切に、出会えてなかったら、こんなにも長くこのお話を書いていなかったし、創作活動自体、ひょっとして辞めちゃってたかもしれません。
本当に、本当に、その節はお世話になりました。有難うございました。
「黒姫ちゃん」ですがこのお話に登場するキャラたちは長年やってるんで、何となく自分の分身のようになってしまっています。
なのでこのお話そのものはスピンオフみたいなのは作るかも知れませんが、続きはたぶん、きっと、おそらく、もう書かないと思いますが!
だけれども、キャラを使った別の物語はダラダラとこれからも書きたいと思います。
てか書きます。
どうも読み手の方々のほとんどに飽きられてる感、正直感じております。が、これは作者のエゴというか、ワガママというか、趣味の世界のさらけ出しなので諦めて大目に見てやってください。
そんでいつか紙の媒体で、どっかの会場で「香坂くら」と「黒姫ちゃん」を見つけてくださったら、これほどの喜びは無いなぁと思っています。
これからもご縁があればどうか「黒姫ちゃんシリーズ」を応援してください。
最後までとりとめのないコメントにお付き合いくださり、ありがとうございました。




