⑮青鬼を捕縛したのはカエ
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメっ。
はじまりー。
イラストは後日足せれば足します。
家では陽葵が待ちわびていた。
――ま、けれども、平素の彼女はあまり感情を表に出さない。
ただ、彼女の「オカエリ」の声掛けももどかしくジーッとわたしと惟人の顔色を観察してきたので、どことなくそーゆー気がしただけ。
げんにわたしらの報告を聞くと、「シータンのところに行って来る」と出し抜けに言い出した。
理由を尋ねる。
陽葵曰く。
シータンに連れられたルリさまが彼女の家で匿われていると。
青鬼(もしくはその他の冥界人)の再訪問を警戒しての応急措置やった。
それをいったん再び連れ戻し、今度はルリさま本人を伴って冥界に行きたい。
ルリさまとポーくんの間に子供が出来た以上、ポーくんの転生に賛成するわけにはいかない。
ふたりを離れ離れにしたらアカンと。
ルリさま本人が強く訴えるコトでサラさんらの同情を得て、ポーくんの転生措置を取り消してもらう。てな考えだ。
「あ、いや。わたしが迎えに行くよ。陽葵と惟人は我が家にいてて欲しい。青鬼がまだ逃げ回ってるそうやからさ」
正直に、わたしの魔力が減退しているコトを付け加えると、ふたりは承知してくれた。
「魔力低下って。ココロクルリの影響なんか?」
「分かんない。とにかく設定変更が発動できへんねん」
「気をつけなさいよ?」
この場合の「気をつけろ」は、意図せん発動に注意せいって意味やろな。
「有難う。家の方、お願いするな」
行く先はクローゼット。
そこから異世界、アステリアにつながっている。
これもわたしの個体スキル、設定変更のなせるわざ……のようだ。
つーコトはつまり、いつこれが機能停止するかも知れない。(はたまた暴走するかも知れないが)
とにかくわたしの胸の中だけの話やが、惟人と陽葵が異世界から戻れなくなるリスクだけは避けたかった。
「アンタはすぐに独りで抱え込むから。何かあったらすぐに連絡しいや、ハナヲ姉?」
「うん。アリガト、陽葵」
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「ああ。ちょうど良いところに」
シータンと同居している彼女の専属メイド、カエさんと入口で出くわした。
解けた荒縄をクルクルと巻き束ねているメイド彼女の目つきに、一瞬ゾクリと悪寒が走った……のは口外しない。
「賊です。アレは鬼ですね、なんて命知らずな」
シータンの住まいはアステリア公領、領府レイシャルの中でも職人町に位置し、近所には多くの職人さんが暮らしている。その人たちが彼女を心配して、もしくはただの野次馬根性でか、ぞろぞろと集まりかけていた。
口々に好き勝手をまくし立てる。
「どうした、カエさん。えらい物音がしたが?」
「また発明品が暴走したのかい?」
「いや儂ゃ、世にも恐ろし気な悲鳴を聞いたぞ?」
ペコリと丁寧にアタマを下げたカエさん。
「お騒がせしました、皆さま。いつものようにウチの主人が発明に失敗して。実験台のわたくしがつい、雄叫びを上げてしまったのでございます」
「なんでい、そーか」
「まぁ大ごとで無くていがった、いがった」
納得したご近所さんが散り始めた。
残ったのはわたしと、数人の子供たちだった。
純粋で好奇心あふれる子供たちの目は輝いている。
「新しい発明品が見たーい!」
「ホントウに失敗したの?」
わたしにうなづいたカエさんは、無表情を崩さぬまま、子供たちを含めてわたしを家の中に招き入れた。
入るとすぐの場所に大きな木製のテーブルがあり、その上にガラクタがいっぱい乗っかっていたが、それは以前にも見て知っている。
これらは言わば「釣り」で、子供たちはそのテーブル上の品々に釘付けになった。
カエさんはニコリともせずその品々に触るがままに任せ、わたしだけを奥の部屋に案内した。
そこにシータンとルリさま、そしてそのふたりの魔女っ子らに囲まれ、縄で縛られてイスに固定された青鬼の憐れな姿があった。
つかつかと青鬼に近付いたカエさんは、一本のぶっとい注射を青鬼の右腕に刺した。サルグツワ状態なのでくぐもった呻き声で苦痛を伝えるしかないが、白目を剥いているのがその度合いを的確に表現していた。正視に耐えないとはこのことや。
「さあ、鬼さん。こんな辺鄙な異世界に、あなたはどうして来られたんですか? 恨みですか? それとも悪事を働くためですか?」
「カエさん。サルグツワを取ってあげないと青鬼しゃべれないよ?」
カエさんが打ったのはシータン特製の自白剤。魔力成分配合の利きすぎる薬物だ。ゾッとする。
「あら。そーでした。わたくしとしたことがついウッカリ」
こりゃわざとだ。
――とゆー目をシータンとルリさまがしている。たぶんわたしも。
青鬼はダラダラと大粒の汗を流し出した。異常な量だ。
「あら。分量を間違えましたかしら?」
ゾゾッ。
「カエは、不法侵入した青鬼を返り討ちにしました。相当怒っています」
「挨拶もなくいらして。ココロクルリさまを脅そうとしましたので止む無く――」
カエさん、黙り込む。
手前の部屋に通じるドアを眺める。
「再び侵入者です」
「侵入者? 子供たちやろ?」
「シッ。敵に聞こえます」
カエさんドアに忍び寄り、一気にオープン。
ドア向こうにいた人物を引っ張り倒して締め上げ、まったくの躊躇なく注射を刺した。
その注射器どこから出した? (エプロンのポケットからやったが)などとツッコむほどの早業やったが、わたしらは「ワーッ」と金切り声を合わせた。
捕り物の相手はポーくんやったんである。
【テンプレあいさつ】
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