表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
結(むすび)の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

313/326

⑧サラさんとケンカ


 我が家のすぐ近くに最近できたコンビニがある。

 田舎なもんで、待望の出店にわたしら家族の歓喜は甚だしかった。


 それはともかく。


 そのコンビニの駐車場のはじっこ、よく若者たちがたむろするあたりに、見慣れたハンテン着姿の女の子が立っていた。

 そりゃもー朱色の生地なんで目立つ目立つ。気付いてくれと言わんばかり。


 紛れもなくシータンその人である。


 どんどん日が長くなる時季とはゆえボチボチ日も傾く時間やし、ルリさまとふたりして声をかけようとした。


 近付くと、別の人間が立っている。

 とても珍しい人物だ。


「サラさん! どーしたん? ウチに用事?」


 わたしと目が合ったサラさんはなぜか、妙な狼狽を見せた。


「急に話し掛けないでよ、焦ったじゃない……」


 セリフの途中で彼女の目線がわたしから逸れて、ひとりの人物に移った。そうしてカオを強張らせる。

 そちらの方角にいるのはルリさま。


「わたしに何か用事ですか?」


 問うたルリさまの声音が心なしか尖っていた。

 ()()を察した素振りやった。そのカオも硬くなっていた。更には尋常なく青かった。


 今まで会話していただろうシータンがモノも言わずにコンビニ店内に消えた。

 何やろ? と唖然としてる間に缶コーヒーを4つ、抱えて戻ってきた。


 配られたホットの缶肌が不思議に心地よかった。

 シータンのオゴリが天地の逆転くらい稀、やからでは無い。

 ぎごちない4つの女子らの心持ちがわずかに緩んだからに違いなかった。


 そして彼女が率先して口火を切った。


「サラさん。わたしからはココロクルリに何も申し上げられません。どうかお引き取りください」


 粛々と述べたかと思うと、丁寧にお辞儀までするシータン。

 それまでどんな会話が交わされていたのか、だいたい想像のつく物言いと態度やった。


「サラさん。わたしにも説明してください」

「立ち話もなんだから、この近くのボロくて小さくて、おまけに汚い家にでも行きますか」


 シータン。

 それウチのコトやんね? 間違いなくね? アンタはもー黙っとれ。


「えーと、ごめん。その家には勇者くんと魔王魔女さんがいるわよね? 流石にわたしもこれ以上のアウェーには耐えられないから、ここで手短に説明してお願いをするわ。要はココロクルリさんとポーくんの結婚は、冥界側としては認められないって話なの」

「……え?」


「だってね、ポーくんは冥界の人でしょ? 現世を生きるアステリアの人とは本来交われないのよ」

「んー?」


 足りないアタマで考えるわたし。


「それオカシイよ。だってサラさんもさ、元はアステリアの人やん?」


 うっとなるサラさん。

 急所を衝いてやったぞ。サラさんの言い分はあっさり論破や。


 けれどもルリさまが余計な発言をした。

 しかも辛そうに。苦しそうに。


「わたしが。魔女だから。ダメってんでしょ」


 へ?

 魔女だから、ダメ?


「ココロクルリ。そんな身もふたもない事実を言ってはいけません。それを言うと負けます」


 シータンまで?

 負けるって、何が?


 ずれたメガネを直すこともないサラさんの額がヒクヒクしだした。

 怒ったように見えるのは、図星を指しているからに相違なく。

 口元を震わせているのは、申し訳なさに堪えているからに違いなく。


「べ、別に。……付き合う程度なら構わないんだけど。……つがいになって子を為すのはちょっと……。その、冥界の秩序が保てなくなるというか、えーと、調和が乱れると言うか……」


 わたしら魔女に遠慮して言葉を選んでいるのか、それとも説き伏せるための言い訳を探ってるのか、途切れ途切れに釈明の弁を綴るサラさん。


「サラさん。要はナニ? 魔女とのケッコンは認められないと?」

「それは……その……」


「その意思はキョウちゃんの意思?」

「ま、まぁ。……そうなるわね」


「それやったらさ。帰ってキョウちゃんに伝えて? ルリさまとポーくんは、誰が何とゆおーとケッコンしたがってる。人の恋路をジャマするヤツは馬に蹴られて飛んでいけってね」

「ハナヲ。それを言うなら馬に腹蹴りされて、道端で死にさらせ、です」


 シータン。幾ら自由小説でもちょっとくらい表現に配慮しよ?


「……分かりました。今日のところは冥府庁に戻って言われたことを報告します。でも、なし崩し的にふたりの結婚を認めるって話にはならないと思う。心苦しいけれどね」


 そんなんゆわれても知らん。


 わたしは今日のルリさまとの散歩を機に、これまでのモヤモヤを一新して彼女の恋に協力するって決めたんや。

 わたし自身の片想いの相手がどーゆおーと別に構わん。


「ハナヲ。何を忍び泣いてるですか? 実はキョウちゃんさんとケンカするのが嬉しいからですか?」

「シータン。アータはだーっとれ」


 こーなったら今日はルリさまを付き合わせてノンアル梅酒パーティすっぞ、コルァ!


「でもさハナヲ。冥界でのバイト、大丈夫なの? 雇い主にあんな啖呵きって?」

「……あ」


 そっか……バイト……。

 ひょっとしてクビになるかな?


 うう。そんなんちっとも考えてなかった。



挿絵(By みてみん)

コンビニ前にて

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ