⑤姉妹ゲンカ
ムリヤリ絵をつけました。
毎回ギリギリの作業で情けないです。
ルリさまとの【縁を切れ】とゆう。
冗談か?
冗談でゆーとんのか?
まじまじと、妹の漆黒姫のカオを眺め倒す。
真顔や。
これは冗談ではなさそう。
「リラ。いま何つった?」
リラとは漆黒姫の真名である。
そう呼ぶのは姉のわたし、それと、わたしらのお父さんのポルタヴィオンくらいか。
「んで。黒姫も? 縁切りに同意してるって?」
アホウかーッ!
決して狭くはない部屋の壁がビリビリと鳴った。
それほどの音声で怒鳴ってやった。
リラは動じない。
眉一つ動かさず、低いトーンで静かに。こう。
「……フ。みたび制裁部屋に入りたいか? ハナヲ姉」
「グリーンルーム? アンタは何かあったらスグそれや。脅したら簡単に相手が平伏すって思ってんな? わたしにとって幾ら主筋(=上司)でも、わたしらの庇護者でも、ゆーていい冗談とゆーたらアカン冗談がある。そのへん、トップ張ってんやったら、しっかりわきまえろや!」
ブン!
空気がうなった。
大鎌だ。
大鎌が頭上スグの空気を薙いだ。
いつの間に出現させたのか、漆黒姫が抱えている武器だ。
もし当たってたら、首と胴が切り離されていたのは確実。
威嚇……にしては度が過ぎてる。
「わあッ! こんのオ、暴君オンナッ!」
「……黙れや、無礼者。わたしはな、礼儀をわきまえんヤツは容赦せん主義や。例え姉でもな」
「フン。よーゆーたわ、そのセリフ。そっちこそ、いっつも姉を姉とも思わん態度をとっとるな。この際やから、きっちり躾といたろか」
カーッと血が逆流してる。
売り言葉に買い言葉とゆったところか。
「そっちがその気やったら、コッチも本気モードや」
魔剣双妖精の登場さした。
「双妖精! やったれ!」
再度振るわれた大鎌をそのまま押し返し、その勢いで漆黒姫の顔面を衝いた。
彼女の頬がヒクついたが、どうにかそれを避けたようだ。
のけぞりながら、上半身をグルリと半回転させ大鎌をブン回してきた。
なんて器用なヤツ!
とっさに双妖精で受け、堪えた。
ビリビリっと、両腕全体に電気が走ったみたいになった。
「うげ!」
間髪入れず脳天に衝撃!
カカト落としを仕掛けてきたんやって理解するのに1秒足らずかかった。
彼女、ぶつけた大鎌をいったん手放し、真上にジャンプしてわたしのアタマを狙ったんだ。
そんな動き、全く予想つかんで。
結果オデコにカカト攻撃がかすってしまった。
痛かーないけど、ジンと熱い。
「……よくかわしたな。マトモに喰らってくれたら、アンタの汚いもん床にぶちまけるところが見れたんやけどなぁ」
「なッ、ヒドッ!」
そのゆい方、むしょーにハラ立つ。
なので、ニヤッと余裕の笑みを見せてやった。精一杯のイヤミのつもりで。
でも認めざるを得ない。
……やっぱ強すぎ。この妹は。
「何やハナヲ姉。震えとんで?」
「武者震いや。そろそろ真剣に行くで?」
正直、最初から真剣や。でもここは強がる。
語尾の発声と同時に漆黒姫の懐に飛び込んだ。
無謀の一言。
がむしゃらに双妖精を突き出し、彼女が逃げた方向に雷撃を撃った。
ただし目で追えるスピードやない。
あらかじめ予測した方向だ。無論、賭けである。
それにわたしは詠唱無しで魔法発動するコトができる。
それすなわち自在のタイミングでの攻撃が可能とゆーコト。
予想通り漆黒姫は右に逸れた。
そこに雷が飛んだ。
――が、当たらず。
彼女はさらに一歩、右への素早いステップで痛打を避け、そればかりか、カウンター攻撃を仕掛けてきた。
「なっ?!」
肩と首のあたりに強い衝撃を感じ、ぐらつく。
硬い粒のようなものをぶつけられたのは判った。
どうにか踏み止まって第二波を避けた。
それが氷槍とゆー、基本魔法やと勘付いたのはようやくそのとき。
一回転して第三波をかわした目の前に、漆黒姫が迫っていた。
「実に鈍い。カメさんや、ハナヲ姉」
ニッ! と歯を剥きだして笑われた。ムカッとしたのは一瞬。
次の瞬間、大鎌の切っ先が真上にあると気付いて青ざめ、やけっぱちで再度体当たりを敢行した。
これはさすがに予想外やったらしく、漆黒姫は何歩か後退した。
「……オヤオヤ、何や? ハナヲ姉、悔し泣きしとんのか?」
「ウルサイッ!」
両眉を寄せた漆黒姫。
単純に驚いたのか、それとも人を小バカにする余裕をふりまいて気が緩んだのか。
なんにせよ、油断したところを捕まえた。
狙ったんやなくって偶然。
まさにがむしゃらやった。つーか、やけっぱちな気分で掴みかかった。
掴んだんは彼女の髪の毛。ムリに引っ張り、横倒しした。
そのまま馬乗りに。
「あだだだッ! コンノォォォ!」
そこからは魔法使い同士の戦いやなくなった。
ただの、姉妹ゲンカになった。
カオのつねり合い、引っ掻き合い、髪の毛や服の引っ張り合い。
上下の入れ替わりが繰り返され、ふたりして薄汚れの汚らしいザマをさらした。
そのあたりで【かんなぎリン】が紅茶とケーキを運んで入室してきた。
後で聞くと、わたしら姉妹の遣り取りを少しでも和やかにしてあげたいとの思惑があったようで。
「やっ、ヤメテえ! やめてクダサイーッ!」
その時のわたしらからしたら、かんなぎリンのコトはまーったく目にも入って無く。
止めようとした彼女をガン無視する状態やった。
泣き出したのも気付かず、わたしらは取っ組み合いを演じ続けた。
「いーかげんにせい!」
クッキリ耳に届いた一喝とともに、オナカに鋭く想い一撃を受けた。
「ぐえッ?!」
のけぞって呻いた。
真横で漆黒姫も同じ状態をさらしてる。
「こんのォ……黒姫……」
ヒーヒーと息絶え絶えに漆黒姫が唸る。
涙目で見上げると、黒姫ひまりの呆れた怒り顔とぶつかった。
漆黒姫「無礼者、死するべし」
(追加)20231002ハナヲ御礼ブクマ159件目




