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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
結(むすび)の章

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④縁切り命令

何とか金曜日中に間に合いました。


 思い通りに行かない?

 幸せが壊れそうで辛い?


 我ながらナニ勝手なコトゆってんだ?


 さらけだされた自己チュー発言を怒鳴りたい。

 自分で自分の背中を蹴っ飛ばしたくなった。


 ……実際そんなん出来んけど。


「そんなキモチが、不調の原因だと?」

『ウン、そう。自分の身勝手にハラ立って、イラついて。まわりに当たり散らしてんねん』


「そ、そうなんですか……」


 自分でも気づかなかったキモチ。

 暗闇姫ハナヲの本心。


 打ち明けられたかんなぎリンのこめかみがヒクついた。

 ソロソロとわたしを見る。


 明らかに狼狽してる。向ける目は赦しを乞うまなざしだ。

 リンは尋問を打ち切り、人形を拾い上げて胸に抱き、わたしに無言で一礼してから背を向けた。


 再びこっちに向き直ったときには人形は消失していた。


『ナニをゴチャついてる』


 間髪を入れず、姿無き声が届いた。


 わたしとリンとの間あたりで黒い霧状のカタマリが湧き、浮遊している。

 そこがスピーカー現象の発生源と知れた。


 声の主は、聞き馴染みがある。

 漆黒(ノワルディジェ)姫。わたしの妹だ。


『直接弁解を訊く。出頭せい』


 即答のわたし。


「承知しました」


 妹とはゆえ、彼女は魔女界を束ねる長。

 わたしにとって上司と言い換えてもいい。逆らう理由はなかった。


 聞こえるか聞こえないかの小声で「ごめんなさい。センパイ」とリンが詫びた。

 しょぼくれている。


 たぶんわたしに気遣って、即時円満解決してやろうと意気込んでこの場に乗り込んだんやろ。

 結果、大ごとになってしまって責任を感じているらしい。


 彼女のアタマをヨシヨシ撫で、気にしてないコトを行動で示すと、わたしは今晩出頭する旨を霧の声に告げて、異世界に帰還するリンを見送った。


 リンの居なくなった家庭科実習室を見渡す。


 水無月マナとギャル子たちはまだ、大人しく静止している。

 後5分も経てば時間停止は解除され、修羅場が戻る。


 さて。

 とりあえずは、その場しのぎのごまかしをどう演じるか。


 彼女たちを眺めて「うーん」と腕組みした。




 ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒  ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒




 その日の夜。


 わたしは異世界アステリア領、魔法学校に隣接された新・(テネヴ)館に出向いた。


 白塗りの邸館は漆黒(ノワルディジェ)姫の執務所兼住居になっている。


 思えば異空間に存在した()(テネヴ)館は、苔生す古めかしい洋館やった。いかにも魔女の住まいとゆわれそうな。


 けれども新設されたこの建物は、明治時代の豪邸を再現したような、西洋風木造日本建築のこじゃれた外観に様変わりしている。


 一天四海魔能魔力勢力調整局。


 やたら長ったらしく墨字で大書された看板が、見たくもないのに眼についた。

 今日ほどそれがウザく思えたコトはない。


 執務室のソファでだれていた漆黒姫(いもうと)は、ノックと同時に入室したわたしと目が合うなり、待ちくたびれていたように堰切って質問を始めた。


「――で? ハナヲ姉はいったいどーするつもりなんかな?」

「3人にはかたく口留めしとこうと思います」


 フーンと立ち上がり、わたしを矯めつ眇めつした彼女。


「魔女力が弱まってんな。どーして?」

「……そんなん知らん」


「知らん? 他人事な言い方やなぁ」


 真正面に対した漆黒(ノワルディジェ)姫の正視を受け、そのまぶたがヒクつくのを見て、心ならず震えた。


 ――メッチャ怒ってんな。


 そう感じた途端に、背中から両腕・両脚にかけて、電気が走ったみたいに総毛が立った。


「……あ、いや。ごめんなさい。訂正します。『わたしの自覚が足りなかった』です」

「……足らなすぎや。わたしらの仲間であるはずの魔物(ミニュイ)を殺害したんは事実やな?」


「は……?! 魔物(ミニュイ)……」


 そ、そうや……。

 アタマに血が上ってて、今の今までそのコトに思い当たらんかった。


「あの魔物(ミニュイ)は、ハナヲ姉の作った結界を通って日本に迷い込んだ。つまり、ハナヲ姉のせいで死ぬ羽目になった」

「……!」


「知能レベルの低い魔物(ミニュイ)は習性に従い行動する。目の前に人間という獲物が現れれば食すために襲う」

「……」


「あの魔物は悪か? それとも敵か? 問答無用で殺していい者か?」

「……そ、それは」


 言い淀むと漆黒姫(いもうと)の頬が再度ヒクついた。

 背筋にひんやりとした電気が走り、息苦しくなった。


「ふ、不意のコトとはゆえ、いきなり命を奪ってしまいました。完全にわたしの失態です」


 この子、わたしよりもアタマ半分ほど小っちゃいのに。

 とてつもなく大きく感がる。


 これが本来の魔女界の女帝、正冠(せいかん)位・漆黒(ノワルディジェ)姫なんか?


 メチャクチャ今更ながらにこの子に対して、慄きを覚えた。

 


「心配すな。ハナヲ姉の罪は問わん。何故ならアイツは人間どもからすれば指名手配犯やった。目をつけられていた。ちょっと人を襲い過ぎた。結局そのうちに人間どもに返り討ちにされる運命にあった」


 気付かれないようにわたしは、深い安堵の息をついた。

 罪に問わんとはつまり、正当防衛が認められてお咎めなしとゆうことか。


 でもアイツを殺した事実は変わらん。


「無罪放免や。――やがな。今のハナヲ姉には迷いとアセリしかあれへん。そんなんじゃまた失敗を犯す。原因は明らかにあの娘や。あんな小娘魔女の行く末なんぞ、取るに足らん話や無いか?」

「小娘魔女って……ルリさまのコト?」


「そや。あの魔法レベル程度の魔女なら、魔女界には他にも()()()()(=たくさん)同志がおる。やのに、なんでハナヲ姉はあの娘にいたく執着してんのや? どの部分に才能を見出しとんのや?」


「才能……とか魔法レベルを見込んでルリさまと親しくしてるんとちゃうよ! あの子はトモダチなんや。昔からの親友なんや」


「ハナヲ姉と友だちネタで盛り上がる気は無い。悪いコト言わん。ソイツと今日限りで縁を切れ」

「はあ?」


「『はぁ』や無い。これには(ノワル)姫も同意してる」

「な、何やて?!」


挿絵(By みてみん)

漆黒姫「縁切れ」


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