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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
結(むすび)の章

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①不意の衝撃

今回以降、最終回に向けてお話を進めていきます。

月水金の投稿を目指しますので、どうか最後までお付き合いくださいませ。


 4月の終わり、ゴールデンウイークに入る少し前。


 わたしの心は、つかみどころを失くしていた。

 ボンヤリと空にただよう雲のように。




 ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒  ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒




 ――その日。


 毎年恒例の春の遠足から帰ると、リビングでシータンが待ち構えてたんである。


 どーせ食べ残したオヤツか、それともお土産か。

 どちらか狙いやろ。


 でも。


 今日はその向かいに、同じく帰宅を果たしたばかりの陽葵と惟人が並んで正座してた。

 せっまいリビングは、外の陽気をそのまんま持ち込んだように暑苦しくなっていた。


 しかも陽葵(ひまり)惟人(これと)


 ふたりが、強いて例えるなら、まるで降伏を迫る敵将を前に返答に窮する敗軍の将の様な顔つきでシータンに相対してた。


 ……何かあったんか?


「どーしたん。3人ガン首そろえてさ? まーたアステリアで何かあったん?」


 例えばスピア姫が拉致されたとか、隣国が攻めてきたとか。

 それともお父さんがトチ狂って暴れてるとか、とにかく色んな事件が想像されるんやが。


 近頃じゃ、少々のコトやと動じなくなってる自分がいるわけで。


 かるーい気持ちで割って入った。


「あ、いや……な」


 ――めずらしく陽葵(ひまり)の歯切れが悪い。

 いっつも、ゆいたいコトがあったらハッキリ物申す、あの陽葵が?


「……でもオレ思うけど、これは普通に考えたらとてもオメデタイ事じゃないだろうか?」


 発言した惟人をムッと睨む。だけど、すぐに膝元に視線をもどす陽葵。

 惟人は、彼女の不興気な反応に口をつぐむ。


 何やの。

 これってただ事やない?


「ね、本当にどーしたん。何なのさ?」


 空いてるシータンの横にムリヤリ身を滑り込ませて話の輪に入る。

 わたしとシータンはローソファ、対面の陽葵と惟人は冬用のラグマットにペタンと座り込んでる。


 狭い部屋なのでお互いのカオ同士、息が触れ合うくらい近い。

 陽葵と惟人はうっすらと汗を滲ませている。


 シータンですら、上気した両頬の鼻の頭に湿りを見せている。


 気圧されたのか、わたしも、作った握りこぶしの内がジットリしだした。

 ……本当にただ事やないんか?


 やがてシータンが重い口を開いた。


「勘の悪いハナヲのために、単刀直入に言いましょう。ココロクルリが結婚するそうです」


「……は?」




 ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒  ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒




 お相手はポーくん。


 今年の初めごろから本格的に付き合い始めたとゆう。


「昨日、『結婚する』って打ち明けられました」

「今晩、ウチに挨拶に来るそうや」


「そ、そう」


 そうゆわれても、アタマが追いつかん。

 全身が痺れたように膠着し身動きできない。どうにか相づちだけうった。



 まさか。


 あの、ツンデレツインテのルリさまが。

 まだまだわたしと同じく、お子ちゃま感覚の恋愛観の持ち主やと思ってたのに。


 一足も二足も早く、大人の世界に行っちゃうって?


「結婚ってそんな。急に……」


 半笑いになった。

 ……そんなんわたし、何も聞いてなかったよ。


 フツーはわたしらくらいの年ならまず最初に「付き合いだしたんだー」とかデレ報告があったりして……。


 そんでから、「彼の誕生日プレゼント買いに行くから付き合って」とかゆわれたり、「どーしよー海に誘われちゃったー」なんてノロケ聞かされたりも。


 そりゃ多少はあったと思うけど、基本的にはほとんど相談されんかったし……。

 親友やと思ってたのに。


「ルリさまのバカ」


 不満の口が洩れた。


「ダレがバカだって?」


 悪口をゆった当の本人、ルリさまがわたしの横で仁王立ちしていた。

 来てたの、ゼンゼン気付かんかった。


「う、うわあああ」


 のけぞりひっくり返りそうになるのを、シータンが支えてくれた。


「ルリさま?!」


「こんにちは。ちょっと間が開いちゃったわね、みんな元気そうで良かったあ」


 リビングを見渡すルリさまは、いつもと変わらない……わけじゃなかった。


 今日はトレードマークだったツインテが無い。まっすぐ髪の毛を下ろしている。

 カジュアル着は変わらんものの、原色系がベージュ系に、大人しめの色の物になっている。


 そーゆー目で見てるせいもあるやろが、結構な大人っぽさが感じられた。


「ポーのヤツは?」

「あーアイツは急病の相方の代わりに出勤。今日は来れなくなったの。ゴメンね」


 それを聞いたわたし、実は内心ホッとした。

 ふたりが並んでる姿、まともな精神状態で見れない気がしたから。


「今晩は? どーするん?」

「良かったら晩御飯、食べて帰りなよ」


 陽葵と惟人の平静を装う誘いにルリさまは「そーするよ、ありがとう」と嬉しそうに答えて、わたしの膝の上に腰掛けてきた。

 実に屈託のない、遠慮のない、普段通りのルリさまやった。


「ねえ、ハナヲ」

「な、何?」


「わたしさ、結婚することにしたんだ。ポーと」

「う、うん。さっき聞いた、3人から」


 膝に乗るルリさまは、軽妙に体を浮かせ、まるで子供のような笑顔でこう聞いた。


「祝福してくれる?」



挿絵(By みてみん)

ある日の暗闇姫家リビング

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